2007年8月発行
1.調査概要
1.1 調査の目的
国土交通省によると、不動産証券化の市場規模は2004年度で約7.5兆円、1997年度からの累計で約20兆円と推計されている(不動産の証券化実態調査,国土交通省土地・水資源局土地情報課,2005年6月10日)。
不動産証券化協会によると、不動産証券化は、個人金融資産等を不動産市場に呼び込み、不動産の流動化を図ることで不動産を保有する事業者に前向きな投資を促す等、経済の活性化に資するものとして期待が寄せられている。しかしながら、不動産証券化はこれまで大都市部に集中し、地方都市部での実績は僅かなものに留まっていることから、地方都市部にも地域活性化施策としての不動産証券化を啓発・普及していくことが課題となっている。
また、国土交通省2007年度事業で「地方における不動産証券化市場活性化事業」が実施されるなど、地方の不動産証券化市場の活性化にも加速の兆しが見え始めている。
このような情勢の下、不動産証券化に関する高度な専門知識と高い職業倫理を有する人材の育成、特に都市部に比べ教育機会の乏しい地方の人材を育成する手段として2006年より不動産証券化専門家養成講座のeラーニングが始まっている。
このような状況を踏まえ、本調査では、不動産証券化協会が提供している、「社団法人不動産証券化協会認定マスター養成講座」について調査を行うとともに、本年8月までの利用実態について調査を実施したものである。
1.2 調査概要
本調査の調査対象、調査期間、調査方法は以下のとおりである。
(1) 調査対象 : 不動産証券化協会認定マスター養成事業 ARES CAMPUS
(2) 調査期間 : 2007年8月1日~2007年8月31日
(3) 調査方法 : ヒアリング、データ分析
1.3 調査項目
以下の項目について調査を実施した。
(1) 企業情報
(2) 事業概要
(3) 教職員体制
(4) 受講者規模
(5) 受講者の継続性
(6) 講座運営
(7) 受講料
(8) 受講促進プログラム
(9) コンテンツ制作と著作権
(10) システム
(11) 他社との優位点
(12) 今後の展望
(13) 課題
2.調査結果
2.1 企業情報
今回、調査を実施したeラーニング事業を運営する組織は次のとおりである。
- 名称
- 社団法人不動産証券化協会
- 設立
- 1998年12月
- 住所
- 東京都港区赤坂1-9-20 第16興和ビル北館1階
- 事業概要
-
1)不動産証券化および不動産証券化商品に関する調査研究
2)調査研究を踏まえた関係機関への各種提言および意見の具申
3)会員に対する法令遵守および商品販売の適正化その他投資家保護に関する指導、勧告等
4)会員の営む不動産証券化業務に関する投資家からの苦情の解決支援
5)一般投資家等に対する不動産証券化に関する情報の提供、知識の普及ならびに広報活動
2.2 事業概要
ARES CAMPUSは、社団法人不動産証券化協会認定マスター(ARES Certified Master(および社団法人不動産証券化協会認定アソシエイト(ARES Certified Associate(の養成事業である。
eラーニングによる講義を受講した後、筆記試験やレポート課題等が実施され、合格者へはマスターおよびアソシエイト資格が認定される。
- サービス名
- ARES CAMPUS
- サービス開始日
- 2006年6月1日
- 科目数
-
8科目
Course1知識編(5科目):不動産証券化とファイナンスの基礎、不動産の投資分析、不動産証券化商品の組成と運用、不動産証券化商品の投資分析、不動産投資運用と倫理行動
Course2演習編(3科目):不動産投資分析、不動産ファイナンス、不動産証券化商品分析
- 受講対象者
- 「以下のような事業・業務を目指す方を対象としている。
- 不動産投資顧問業、不動産運用業、ファンドビジネス、不動産証券化業務、アレンジメント業務、ストラクチャードファイナンス業務、投資用不動産の仲介や管理、デューデリジェンス、アナリスト
- 資格種別
- 国家資格ではない。
社団法人不動産証券化協会が不動産証券化に関する実務知識と能力を認定するものである。
- 氏名の公表
- マスターおよびアソシエイト資格保有者は、その氏名をWebサイト等で公表することが義務付けられている。(認定の申請時に「氏名公表に関する承諾書」の提出が必要。)氏名の公表を拒否することはできない。
- 資格の更新
- マスターは、認定後5年ごとに審査を受け、資格の更新をしなければならない。更新の審査では、継続教育の受講状況とピアレビューなどを通じた倫理行動が審査される。更新時に負担しなければならない費用は特にない。
- 継続教育
- マスターは、認定後も継続教育が義務付けられている。継続教育によるポイントを毎年30ポイント以上取得する必要がある。
次ページにポイント取得一覧表を示す。
ポイント評価の種類 | ポイント数 | |
---|---|---|
1.継続教育の受講 | ①会報による確認テスト(6回/年を予定) (マスター専用のホームページにて実施) |
5/1回 |
②実務研修会の聴講と確認テスト (マスター専用のホームページにて実施) |
5/1回 | |
③当協会が指定するシンポジウムやカンファレンス への参加 (一部実費負担あり) |
10/1回 | |
④マスター研修講座の受講 (希望者のみ、実費負担あり) |
10~30/1講座 | |
2.当協会の活動 | ⑤会報への執筆(1テーマ) | 10~50/1テーマ |
⑥実務研修会、マスター研修講座の講師 | 30~100/1講座 | |
⑦シンポジウムやカンファレンスの講演 | 30~100/1講演 | |
⑧当協会の専門委員会の委員としての活動 | ~30/1年度 | |
3.当協会外の活動 | ⑨専門誌への寄稿、著作の発行、講演活動など | ~30/1件 |
2.3 教職員体制
不動産証券化に関する実務領域は、不動産に関することはもちろん、法律、会計、税務、ファイナンスなど多岐にわたる。これらの実務領域の知識・スキルを習得するためには、各領域のベースとなっている学問的領域における理論を理解していることが必要となる。
このためARES CAMPUSでは、実務や理論など、それぞれの分野の最前線で活躍している専門家が講義している。また、テキストの総監修には早稲田大学大学院ファイナンス研究科川口有一郎教授を迎えている。
また、eラーニングによる運営が主体のため本事業を担当する職員は極めて?人数である。
講師数: 28名
担当職員数: 4名
2.4 受講者規模
2007年8月1日現在、延べ3,189名が受講している。受講者の平均年齢や男女比など、受講者像は次のとおりである。
また、2007年度の受講者データから都道府県別の受講者比率をみると、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県(の受講者が85%と、ほとんどを占めている。)
- 受講者数
- 2006年度: 1,317名
- 2007年度: 1,872名
- 平均年齢
- 37.5歳
- 男女比
- 男性90% : 女性10%
- 受講地
- 国内での受講がほとんどである(海外での受講者は若干名)
- 国籍比
- 日本人の受講者がほとんどである(外国人の受講者は若干名)
- 認定人数
- マスター認定1,469名/アソシエイト認定25名
- 都道府県別受講者の比率
- 東京都 53%
- 神奈川県15%
- 千葉県 10%
- 埼玉県 7%
- 大阪府 5%
- 兵庫県 3%
- 福岡県 1%
- 京都府 1%
- 愛知県 1%
- その他 4%
2.5 受講者の継続性
ラーニングの受講修了を資格認定の要件とはしていないにもかかわらず、各科目ともに比較的高い修了率を示している。これは、講義と併用している印刷テキスト内容のポイントの解説やレポート課題作成のヒントなどが講義され、受講することで適切な知識が得られるためである。また、学習の進まない受講者に対しては特にフォローはしていない。
- 修了率
- 2%~70%程度(科目による)
2.6 講座運営
毎年1回、受講申込みから受講、修了試験等が開催される。修了試験やスクーリング日程が限られているため、このような運営となっている。
講義は30分程度のオンデマンドコンテンツを閲覧する形式である。修了試験(Course1)については、東京会場でのオフライン試験が実施され、演習授業(Course2)についても、東京会場での半日×3回のスクーリングが実施される。
また、全ての科目について印刷テキストが使用されるため、動画の視聴だけでなく対面講義同様にメモを取るなど効果的な受講方法が促進されている。
システムの利用状況から分析すると、時間帯別には、22時台に次いで23時台の利用が多いことが、曜日別には日曜日に次いで月曜日の利用が多いことが分かる。日曜日および月曜日の利用が多い理由として、受講者の多くは不動産関連事業者で休暇を日曜日と月曜日に分散しているためと考えられる。9 時台から21 時台の間は平均的に利用されていることから、平日は社内のパソコンでの受講が行われていることが分かる。
- 受講時間のピーク
- 22 時~24 時の間
- 受講曜日
- 日曜日および月曜日の受講が多い
- Web講義総時間
- Course1:45時間
- Course2:9 時間
- スクーリング
- 演習授業(Course2)に半日×3 回のスクーリングあり。
- 修了試験
- オフライン会場で実施。
- 2006 年度(第1 回(修了試験結果
- 受験者数・・・1,317 名
- 合格者数・・・657 名(合格率49.9%)
- 合格基準・・・修了試験100 問中、正解が66 問以上の者
- 印刷テキスト
- 各科目ともテキストを使用している。
- Course 1:5 科目6 冊
- Course 2:3 科目3 冊
日程 | 内容 |
---|---|
3月~10月 | Course1知識編:Web講義の受講、テキスト学習 |
10月 | Course1知識編:修了試験(筆記、東京会場) |
11月~翌2月 | Course2演習編:Web講義の受講、テキスト学習、レポート課題提出 スクーリング(半日×3回、東京会場) |
3月 | 資格認定申請 |
5月 | 資格認定 |
2.7 受講料
次のような料金体系となっている。
一般 | 学生 | 正会員 | 賛助会員 | |
---|---|---|---|---|
受講料 | 102,000 | 62,000 | 72,000 | 102,000 |
一般 | 学生 | 正会員 | 賛助会員 | |
---|---|---|---|---|
受講料 | 60,000 | 30,000 | 60,000 |
2.8 受講促進プログラム
受講者の所属する企業では講座受講や資格取得促進のため、受講者(社員)に対する様ざまな支援を行っている。受講者支援が充実していることも、多くの受講者に支持されている要因の一つと考えられる。
不動産証券化協会の調査によると、受講企業の人事、教育、研修担当者からは、次のような取り組みが報告されている。当社では、社員の証券化マスター資格取得を全面的にバックアップ、原則として受講費用及び資格取得後の登録料は全額会社負担(A不動産株式会社)。受講料等は原則、会社負担として受講を促進、中途社員の採用時には、受験者がマスター資格を取得していた場合、プラス評価として考慮(B不動産株式会社)。受講料全額会社負担にて受講させている、自己啓発として個人で資格取得した場合にも受講料援助の対象(C信託銀行)。受講料・登録料は全額会社負担とし今後も積極的に取得を推進していく予定(D不動産株式会社)。資格を取得した場合には受講費用や資格取得後の登録料を会社負担とするなどのサポート体制も整備(E不動産株式会社)。費用は受講料・年間登録料を会社負担(F不動産株式会社)。今年度より基本的には、受講を必須事項と位置付け、当社にて受講費用を負担(G不動産株式会社)。社員がマスターの認定を取得した際には受講費用、試験費用等が全額会社から援助される(H不動産株式会社)。全社員向けに自己啓発を支援する枠組みで、当該資格取得時に必要となる受講料等の全額を会社負担(I不動産運用投資会社)。マスター(アソシエイト)資格取得者に対しては、受講・受験費用の一部を援助、また、不動産業務に従事する有資格者へは、登録料を全額会社負担(J信託銀行)。マスター試験合格、登録を条件に受講費用・初年度登録料を全額会社にて負担(K不動産株式会社)。
2.9 コンテンツ制作と著作権
講義コンテンツは、動画+スライドという一般的な形式である。講義動画を録画しながら講師がスライド操作を行い、コンテンツのオーサリングをリアルタイムに実施する方式を採用している。
収録は制作会社の撮影スタジオのほか、講師の所属する企業の会議室や不動産証券化協会の会議室など、講師の都合により複数の場所で実施されている。制作会社のスタジオ以外の場所での収録の場合は、カメラマン等のスタッフが現地へ派遣される。
また、コンテンツの著作権は、全て不動産証券化協会が保有している。
- 講義コンテンツ形式
- 動画+スライド
- オーサリング方式
- リアルタイム
- 撮影スタジオ
- 講師の都合により次の3パターンを使い分けている
- 1)制作会社のスタジオ
- 2)講師の所属する企業の会議室
- 3)不動産証券化協会の会議室
- 制作スタッフ数
- 3名(ディレクタ、カメラマン、音声・PC)
- 著作権保有者
- 全て不動産証券化協会が保有
2.10 システム
システムの開発、保守、運営はすべて協力会社へ外部委託している。導入実績が豊富な市販のeラーニングパッケージシステムを本サービス専用に画面、機能等をカスタマイズしている。
機能面の特長は、継続教育の取得ポイント管理が可能な点である。継続教育ポイントはeラーニング以外の手段、例えば、カンファレンスへの参加や会報の執筆などによっても加算されるため、これらのポイントを管理できる機能を有している。
- システム開発
- 市販のeラーニングパッケージシステムをカスタマイズ
- 開発要員
- 協力会社へ外部委託
- 保守・運営
- 協力会社へ外部委託
- システムの特長
- eラーニング以外の手段で取得したポイントの管理機能
2.11 他社との優位点
ARES CAMPUSは、学習分野が多岐にわたっている点が他社と比較して優位である。不動産に関することはもちろん、法律、会計、税務、ファイナンスなどを幅広くカバーしている。このため、実務や理論など、それぞれの分野の最前線で活躍している専門家が講義している。
また、不動産特定共同事業法(国土交通省)に定められる業務管理者としての「能力の審査・証明事業」として、「社団法人不動産証券化協会認定マスター」が登録(2007年7月31日告示)されていることも優位な点である。これは、不動産投資顧問業登録規程(国土交通省)に定められる「一般不動産投資顧問業の登録審査基準」の要件の一つにもなっている。
所属名 | |
---|---|
1 | UBS証券会社 |
2 | 株式会社アークブレイン |
3 | 株式会社イー・アール・エス |
4 | オリックス株式会社 |
5 | ケネディクスリートマネジメント株式会社 |
6 | さくら綜合事務所 |
7 | 株式会社スペース・ジー・ネット・コンサルティング |
8 | 株式会社スペースデザイン |
9 | ドイツ証券株式会社 |
10 | 株式会社ニッセイ基礎研究所 |
11 | 株式会社ニューシティコーポレーション |
12 | 株式会社ヒロ&リーエスネットワーク |
13 | みずほ証券株式会社 |
14 | モルガン・スタンレー証券株式会社 |
15 | 牛島総合法律事務所 |
16 | 株式会社三井住友銀行 |
17 | 三井不動産株式会社 |
18 | 三井不動産投資顧問株式会社 |
19 | 三菱UFJ信託銀行株式会社 |
20 | 早稲田大学 |
21 | 東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント株式会社 |
22 | 日本ビルファンドマネジメント株式会社 |
23 | 社団法人不動産証券化協会 |
24 | 社団法人不動産流通経営協会 |
25 | 野村證券株式会社 |
26 | 麗澤大学 |
テキストの総監修: 早稲田大学大学院ファイナンス研究科 川口有一郎教授
2.12 今後の展望
今後は、資格取得者に義務付けられている継続教育プログラムを充実し、特にeラーニングによるプログラム提供を拡大する。これにより、資格取得者を継続的に教育できるだけでなく、eラーニングへのアクセス時に、協会からの情報提供あるいは資格取得者からのフィードバックが行われるなど、協会と資格取得者間の密接な情報交換の場としても機能させていく。
また、資格取得者の拡大に伴い、資格取得者コミュニティの開設を検討している。このコミュニティでは、資格取得者同士の情報交換が行われるだけでなく、地方ごとのコミュニティが形成され、各地方にリーダー的役割の人材を育成することを狙っている。
2.13 課題
年間受講者数に制限のある点が課題である。
現在の制度では、オフライン試験やスクーリング(いずれも東京の会場で実施)が必要なため、日程や会場の都合により受講者数を制限しなければならない。教育の機会を広く提供し、距離的・時間的制約はなくなったが、人数的制約が残されていることは早期に解決しなければならない課題である。
また、受講者同士あるいは受講者と講師・協会とのコミュニケーションの場がない点も課題である。現在は、講義配信やQ&Aなど、協会側からの一方的な情報発信が主体でありeラーニングの利点である双方向性が活かされていない。疑問や不安など受講者の問題を協会側が把握するだけでなく、受講者同士のコミュニケーションにより仲間意識を醸成し、資格取得後のコミュニティ形成へとつなげることが必要である。
3.各講座の概要
3.1 不動産証券化とファイナンスの基礎(Course1:知識編)
- 第I部 不動産証券化の概要
- 株式会社ニッセイ基礎研究所
- 第II部 不動産市場の実際
- 麗澤大学
- 第III部 金融機関と金融業務に関する基礎知識
- 株式会社ニューシティコーポレーション
- 株式会社三井住友銀行
- 第IV部 投資とファイナンス理論の基礎知識
- 早稲田大学
- 第V部 アセット・ファイナンスの実際
- みずほ証券株式会社
3.2 不動産の投資分析(Course1:知識編)
- 第I部 不動産(土地建物)の基礎知識
- 社団法人不動産流通経営協会
- 第II部 投資用不動産のデューデリジェンスⅠ
- 株式会社イー・アール・エス
- 第III部 投資用不動産のデューデリジェンスⅡ
- 株式会社ヒロ&リーエスネットワーク
- 第IV部 不動産の賃貸管理
- 株式会社スペース・ジー・ネット・コンサルティング
- 第V部 不動産の運営管理とリノベーション
- 株式会社スペース・ジー・ネット・コンサルティング
- 第VI部 不動産開発業務の実際
- 株式会社アークブレイン
- 第VII部 投資用不動産の評価手法
- 株式会社ヒロ&リーエスネットワーク
3.3 不動産証券化商品の組成と運用(Course1:知識編)
- 第I部 不不動産証券化実務の基礎
- オリックス株式会社
- 第II部 証券化関連法制 I (スキームを支える契約関係)
- 牛島総合法律事務所
- 第III部 証券化関連法制 II(特別法)
- 牛島総合法律事務所
- 第IV部 不動産証券化の組成と販売に関する留意点
- 野村證券株式会社
- 第V部 J-REIT運用実務の実際
- 日本ビルファンドマネジメント株式会社
- 第VI部 不動産証券化と会計
- さくら綜合事務所
- 第VII部 不動産証券化の税務
- さくら綜合事務所
3.4 不動産証券化商品の投資分析(Course1:知識編)
- 第I部 標準偏差リスクとポートフォリオ理論
- 三井不動産株式会社
- 第II部 資本市場の価格決定モデル(CAPM)とベータ・リスク
- 早稲田大学
- 第III部 信用リスクと不動産証券化
- 三井不動産株式会社
- IV部 デットファイナンスとエクイティファイナンス
- みずほ証券株式会社
- 第V部 不動産証券化商品の投資分析 I
- UBS証券会社
- 第VI部 不動産証券化商品の投資分析 II
- モルガン・スタンレー証券株式会社
- 第VII部 機関投資家の投資方針と特徴
- 三井不動産投資顧問株式会社
- 第VIII部 年金基金の不動産投資の実際
- 三菱UFJ信託銀行株式会社
3.5 不動産投資運用と倫理行動(Course1:知識編)
- 第Ⅰ部 不動産投資運用における受託意識
- 東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント株式会社
- 第Ⅱ部 投資法人資産運用業における利益相反取引の適正性確保の重要性
- ケネディクスリートマネジメント株式会社
3.6 不動産投資分析(Course2:演習編)
- 第Ⅰ部 知識編(前半)
- ドイツ証券株式会社
- 第Ⅰ部 知識編(後半)
- ドイツ証券株式会社
3.7 不動産ファイナンス(Course2:演習編)
- 第1章:不動産の調査
- 株式会社スペースデザイン
- 第2章:不動産の評価
- 株式会社スペースデザイン
- 第3章:信託に関する業務
- 株式会社スペースデザイン
3.8 不動産証券化商品分析(Course2:演習編)
- 第1章 J-REIT銘柄とその市場
- 早稲田大学
- 第2章 不動産市場分析
- 早稲田大学
- 第3章 企業としてみたファンドの分析
- 早稲田大学
- 第4章 ファンドの投資口の分析
- 早稲田大学
4.地方における不動産証券化市場活性化事業
国土交通省2007 年度事業の概念図を以下に示す。
5.まとめ
eラーニングによる不動産証券化専門家養成講座の展開によって、不動産証券化に関する高度な専門知識と高い職業倫理を有する人材が数多く育成され始めている。
受講者の多くは、不動産関連事業者や金融機関の第一線で活躍している人たちである。彼らが、働きながら学び、資格を取得するためには業務と学習のバランスが大切であり、夜間や週末など自分の好きな時間に学習できるという点でeラーニングの利点をよく活かしているといえる。また、不動産証券化協会の調査によると、「自宅では集中して学習できないのでネットカフェでやっている。」という受講者もいるなど、自由な場所で学習できる点でもeラーニングの利点を活かしているよい事例ではないだろうか。
しかし、現在のサービスにはオンラインコミュニティがないため、資格取得後に有資格者が実ビジネスの役に立つような情報交換の機会や人のつながりを得るといった「場」が提供されていない。不動産証券化の専門家を育成し市場の活性化を図るためには、資格取得や継続教育だけに留まらず、有資格者コミュニティの創出が望まれるところである。
特に、都市部では第一線で活躍する実務家も多く、セミナーやカンファレンスを通じても情報交換の機会を得ることができるが、地方へ目を向けてみるとこのような機会も乏しく、eラーニングやオンラインコミュニティを活用したコミュニケーション機会の拡大は急務であるといえる。
ここで、ARES CAMPUSが今後更に発展するための条件をまとめる。
まず、何度も指摘しているように早期にオンラインコミュニティを創出することである。
次に、継続教育におけるeラーニング講座の拡充である。これは、資格取得対策のための学習時にも活かされたように、第一線で活躍している有資格者の学習の利便性を高めるためである。
そして、現在のような受講人数の制限をなくし、より多くの人材を育成することも必要である。
最後に、地方のリーダー育成も進めなければならない。今後、地方における不動産証券化市場の活性化が図られてゆくと思われるが、人材不足、情報不足の現状ではこの流れに対応することができないためである。
eラーニングの戦略的な活用事例として、今後の不動産証券化協会認定マスター養成事業 ARES CAMPUSに期待したい。