「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」など、多数のブランドを展開し外食産業を牽引する株式会社すかいらーくホールディングス様。この度、デジタル・ナレッジが提供するeラーニング統合プラットフォーム(KnowledgeDeliver)を活用した新たな教育プログラムをスタートされました。すでに主要ブランドにおける新人教育やマネジャー育成に利用されており、今後は全ブランド約10万人にも及ぶ従業員を対象とした、一気通貫の育成体系の確立を目指されています。その目的や現在の運用状況、今後の展望についてお聞きしました。
- 株式会社すかいらーくホールディングス
- 人財本部 教育・研修チーム 芝山英也様(左)
- コーポレートサポート 情報システム 店舗オペレーションシステム リーダー 山本敦史様(右)
お客様のニーズ
- 新人教育からマネジャー育成まで、一気通貫の育成体系を構築したい。
- 働きやすい環境を整備することで従業員のレベルアップや定着率向上を図り、CS向上につなげたい。
導入前の課題
- アルバイトスタッフの働き方の変化によりトレーニングの機会・時間が減少している。
- 最近増加傾向にある外国人スタッフのための教育体制が整っていない。
- 効果的かつ計画的なマネジャー育成ができていない。
導入後の成果
- スマホ、タブレット端末から受講可能な、自学自習の教育プログラム(eラーニング)を全ブランドで導入。
- 店舗でのトレーニング進捗やどのトレーナーが確認・承認したかを可視化する機能をeラーニング上に搭載。
- 日にちが開いたトレーニングやトレーナーが変わる際もスムーズな引継ぎが可能となり、教わる側も次に習得すべき内容がわかりやすく意欲向上にもつながっている。
- マニュアルを電子化し動画を活用したコンテンツを導入。さらに一部コンテンツの4ヶ国語対応を行うなど、外国人スタッフの働きやすい環境整備を実現。
- マネジャー昇進までのすべての段階と進捗をeラーニング上で可視化。自主的にマネジャーを目指せる仕組み作りに成功。
- 店舗アンケートの結果、7割が「新人育成に効果がある」と回答するなど効果を上げている。
eラーニングを使ったプログラムですが、最大の特徴は?
山本様:普通eラーニングといえば、受講者本人が自己学習して修了という形が多いかと思います。ですが、本プログラムは、トレーナーや店長がチェックをすることではじめて修了となり、次のステップに進める「トレーニング機能」を組み込みました。
いわゆるOJT的な仕組み、考えをeラーニングに搭載したということでしょうか?
山本様:はい、OJTをした上でトレーナーが確認・承認をするという一連の流れを、Web上に構築しました。通常のeラーニングシステムではこうした仕組みはありませんでしたので、デジタル・ナレッジさんに特別にカスタマイズをして頂きました。
通常のeラーニングと比べていかがですか?
山本様:このシステムの優れた点は、どこまでトレーニングが進んでいるのか、誰が教えて承認したのかが明確になった点です。新人教育は基本的に同一トレーナーが担当しますが、シフトによってトレーナーが変わる場合もあります。そんなときでもスムーズな引継ぎができますし、新しく入ったスタッフも次に習得すべき内容がひと目でわかり、目標の明確化や意欲向上にもつながっています。
トレーニング画面。修了したトレーニングはグレーアウトするなど進捗・教育記録が一目瞭然。
教わる側も自分のトレーニング状況がわかりやすく、次のシフトまで間があく場合も安心だ。
こうしたプログラムを開発された目的はどこにあったのでしょうか。
山本様:一つはアルバイトスタッフの定着率向上です。昔と比べて学生アルバイトのシフト日数は減り、勤務時間も年々短くなってきています。それはトレーニングの機会・時間の減少を意味します。そこでeラーニングを整備し、業務中の隙間時間に自学自習を可能にすると同時に、先ほどお話ししたトレーニング機能を付加することで、アルバイトスタッフの定着率向上に寄与するのではと考えました。
もう一つは、外国人スタッフのための労働環境整備です。昨今、外国人のアルバイトスタッフも増えてきていますが、文字が主体の紙のマニュアルではニュアンスが伝わりにくいという問題がありました。そこで、マニュアルを電子化し動画を活用したコンテンツを導入するとともに、一部のコンテンツの4ヶ国語対応(英語、中国語、韓国語、ベトナム語)を実施しました。
主要なコンテンツは英語、中国語、韓国語、ベトナム語の4ヶ国語に翻訳。
とくに最近はベトナム語の需要が増えているとか。
MSP(マネジャーステップアッププログラム)についてはいかがでしょう? こちらも以前は紙ベースで実施されていたということですが。
新しいプログラムが始まってからの手応えは?
山本様:導入2~3ヶ月後に店舗アンケートを実施したところ、7割が「育成PGMは新人育成に効果がある」と回答するなど、一定の成果を上げています。
芝山様:これまでは、どちらかというとマネジャーから促されて試験を受ける人が多かったのですが、新しいMSPではアシスタントマネジャーの方から試験の申請をするよう変更し、自主的にマネジャーを目指せる仕組みを作りました。受け身ではなく、マネジャー候補者自らが計画を立て、自主的に学びステップアップしていけるツールに育てていけたらと期待しています。
両プログラムの導入はどれくらい進んでいますか?
山本様:育成PGMについては一部コンテンツのみではありますが、すでに全ブランドで導入済みです。MSPも主要ブランドで導入済みです。今後もコンテンツを拡充しながら、順次拡大していく予定です。
eラーニングでは受講者の学習意欲を上げる工夫や楽しく受講できる仕組みが重要とされますが、なにか取り組まれていることはありますか?
山本様:クイズでしょうか。動画を視聴した後に「正解はどれでしょう?」といったミニクイズを入れ、興味を惹きながら知識定着を図っています。クイズに正解したり規定のステップを修了したらコインがもらえ、コインを50枚集めたらステージクリアとか、そういった見せ方もしています。
一方的ではなく考えさせる仕組みやゲーミフィケーションまで、しっかりと組み込んでいらっしゃるんですね。
山本様:弊社にはアニメーションを作る専門部署があり、eラーニング用にオリジナルキャラクターを作ってもらってコンテンツに登場させています。コンテンツのデザインについても、動画作成会社に見やすいものを作ってもらいました。
教材をパワーポイントで作る場合、往々にして発表資料のようになってしまいがち。すかいらーくホールディングス様では、さまざまな工夫により親しみやすくわかりやすいコンテンツデザインが実現されている。
働き方改革に積極的に取り組まれている御社において、今回の新しい教育プログラムの果たす役割、意義とはどのようなものだとお考えですか。
山本様:育成PGMは必要なマニュアルがすべて格納されており、“誰もが教えられる仕組み”という観点で作られています。トレーニングに関してはこれまでマネジャーの労力が非常に大きかったのですが、自己学習や振り返りができるようになった結果、マネジャーの負担軽減につながっています。
芝山様:MSP電子版では、Web上でアシスタントマネジャーとマネジャー双方が進捗確認できるため、効率よい面談や速やかな承認作業が可能となったことが働き方改革につながると考えています。
御社においてITはどんな役割を果たしていますか? 今後の活用の方向性についてもお聞かせください。
山本様:一例ですが、以前実験的にセルフレジを導入したとき、「人手不足解消ですか?」と聞かれることがありました。もしレジが一箇所しかなかったらお客様に並んでいただくことになりますが、セルフレジがあればクレジットカードをご利用のお客様は並ばずにすぐにお会計をしていただけます。つまり、この事例の目的は、お客様の利便性向上でした。IT活用によって店舗の運用効率を高める一方、来店されるお客様の利便性向上にも取り組んでいく――そういった観点でIT活用は今後も継続していく必要があると考えております。
テクノロジーやeラーニングというと、どうしても効率化、効率化といわれがちですが、それ以上に利便性向上による効果が大きいというわけですね。
山本様:今回の教育プログラムも同様です。従業員の利便性を向上し、より働きやすい環境を実現できたなら、従業員のさらなるレベルアップにもつながり、定着率も上がり、それがひいてはお客様満足度の向上にもつながります。ITをうまく活用することですべてを良い方向に持っていくことができるのではないか、そして最終的には、お客様によりよい体験をご提供できればと、そのような思いで取り組んでいます。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
山本様:現在は育成PGMとMSPの2つに分かれていますが、新人からマネジャーまで、一気通貫できればと、そのような思いで取り組んでいます。つながった育成体系を構築すること、これが導入当初からの目的です。そのためには、新人やマネジャー候補者というくくりではなく、約10万人にも及ぶ全クルーを対象としたコンテンツを作り、運用をしていく必要があります。まだまだ道のりは長いですが、店舗の声を拾いながらコンテンツを充実させ、より使いやすくより良いものへとアップデートさせていく予定です。
ご利用いただいた製品・サービス
お客様のサイト
お客様情報
会社名 | 株式会社すかいらーくホールディングス |
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設立 | 1962年(昭和37年)4月4日 |
所在地 | 東京都武蔵野市西久保 1-25-8(三鷹 第3オフィス) |