「患者の命を預かる500床の急性期病院として、刻々と変化する社会情勢、医療ニーズに対応すべく人材育成にも力を入れられている大阪府済生会吹田病院様。一昨年、eラーニングシステムを一新された後に実施したアンケートで意外な結果に驚かれたそうです。インタビューではそうした経緯を振り返ると共に、背景にある「職員の自発的な学習支援」と「受講管理の一元化」に対する取り組みについてお聞きしました。
- 大阪府済生会吹田病院
- 人材開発課 課長 高橋舞巳様
- 人材開発課 礒川咲里様
お客様のニーズ
- 職員が自発的に学べる環境を整えたい。
- 研修受講管理の一元化を図りたい。
導入前の課題
- 雇用形態・職種が多様化するなか、集合研修への全員参加が難しくなっていた。
- 従来のeラーニングシステムが古く、効果的に運用できていなかった。
- 中途入職者向け研修体制が不十分だった(年に1度の集合研修のみ)。
- 各研修の受講管理が部門単位のため、人事考課やタレントマネジメント上、課題があった。
導入後の成果
- クラウド型eラーニングシステム(KnowledgeDeliver)の導入により、自学自習環境を整備。
- 集合研修に参加することが難しかった職員でも時間・場所を限定せずeラーニングを受講できるようになった。
- 中途入職者研修のeラーニング化により、月1の細やかなフォローアップが可能に。
- 集合研修を含むあらゆる研修受講の統合管理を次年度から実施予定。ペーパー管理の廃止による紙のコスト削減や業務効率化が見込まれる。今後は人事考課・タレントマネジメントへの活用も目指す。
今後の展開
- 動画視聴による受動的な知識習得だけでなく、研修前の事前テストや受講者間での提出課題の共有・コメント機能など、より自発的な学習環境整備に向けたeラーニングの更なる活用を目指す。
そこでeラーニングシステムのリプレイスを検討されたわけですね。弊社のシステム(KnowledgeDeliver、以下KD)をどこでお知りになったのでしょうか。
高橋様:済生会熊本病院が先にこのシステムを導入されていて、話をお聞きしたのが最初でした。実は熊本病院がお持ちだった課題が当院と同じだったんです。
どんな課題ですか?
高橋様:時間・場所を限定しない学習環境を整え、自学自習が可能な仕組みを構築したいというのが当院の一番の課題でした。もう一つの課題は「研修受講履歴の一元管理」でした。熊本病院ではまさにこの一元化を、KDを使って実践されていたんです。
それまでは研修の受講管理はどうされていたのでしょうか。
高橋様:看護師の研修は看護部、出張関係は人事課、我々が企画する集合研修は人材開発課と、それぞれの部署が縦割りで管理しているものが多く、形式もまちまちでした。そのため、職員一人ひとりが何に取り組んできたのか、今後どうなりたいのかを統括的に把握できていませんでした。
研修の受講管理を一元化することで目指されたのは何だったのでしょうか。
高橋様:院内外の研修受講や学会出張、可能であれば部署異動履歴なども含めて集約し、これまでの評価基準にプラスして新しい人事考課に活かしたいと考えていました。熊本病院で実際の使い方を見せていただき、これならやりたいことができると導入を決めました(最終的には一般競争入札に公募・落札)。院内にサーバーを置くことは考えていなかったので、クラウド型だったのもポイントでした。
第一に自学自習環境の整備、第二に受講履歴の一元管理化、この2つの狙いがあったというわけですね。それでは、実際にKDを導入されて1年半近くになりますが、まず1つめの課題についてどのような変化がありましたか?
高橋様:eラーニング環境は以前とは比べようがないほど快適になりました。実は、導入1年後にeラーニングの利用状況調査を実施したところ、意外なことに勤務時間内に学習している人がほとんどだったんです。看護師なら夜勤の落ち着いている時間帯というように、それぞれがすきま時間にうまく受講していることが分かりました。忙しくて集合研修には参加できないという人も多く、開始時間の設定ひとつでも調整が大変な状況でしたから、eラーニングなら勤務時間内に受講できるのかと驚きでしたね。
集合研修には来られなくてもeラーニングなら、というのは大きな変化であり成果ですね。
高橋様:中途入職者向けの研修についても、以前は集合研修を年に1度しか実施できていなかったものが、eラーニング化することで入職後ひと月以内にeラーニングで研修を受けてもらえる体制ができました。年1だったものが、毎月フォローアップできるようになった意義は大きいです。
コンテンツは内製されているそうですが、どのようなものをお使いですか?
第二の課題であった、受講履歴管理の一元化についてはいかがでしょうか。
高橋様:必須研修や階層別研修、学会やセミナーなども含めたあらゆる受講データをKDと連携(一元化)させる取り組みを今進めています。看護部のペーパー管理も年内に廃止の予定で、紙のコスト削減や業務効率化にもつながりそうです。職員にとっても、自分がどんなことに取り組んできたか振り返る機会はなかなかありませんから、それができるツールに育てていければと期待しています。
弊社の関わり方はいかがでしたか?
高橋様:実は導入前、デジタル・ナレッジさんの事例集に載っていた順天堂大学医学部附属浦安病院さんと豊中病院さんを訪問させていただき、KDが院内で実際にどう使われているかを見せて頂いたんです。まったく違う系列の、大学病院や市民病院での実際のところを教えて頂けたこと、両院とも嫌な顔ひとつせずウェルカムだったこと、本当にありがたかったです。こうしたご縁は御社の営業さんにつなげていただいたもの。導入前からとても細やかに情報提供していただきました。
1年半お使いになって新たなご要望なども出てきているのではないでしょうか。
高橋様:ええ、今営業さんにもお話していたところなんですが、当院では一部の研修で事前課題・事後課題を課しています。それを受講者同士で共有できるクラスや掲示板のようなものを作り、受講者同士がコメントをし合える環境が作れないかと。
eラーニング上で受講者同士が課題等を共有することで学びを深めるイメージでしょうか。
高橋様:そうですそうです。外部研修に参加したときにそういった使い方をしているものがありまして、既存のテスト機能に加え、そちらもぜひKDにとリクエストさせて頂いています。たとえば2日間で実施している階層別研修。1日分をeラーニングに置き換え、知識習得や課題共有、事前テストで自己学習を深めます。そして研修を1日間、対面ワークを中心に取り組みます。eラーニングと対面学習を組み合わせ、より効果的、効率的な研修方法を想定しています。ただ動画を見てもらうだけで終わりたくないですし、より自発的な学習環境を整えていくために、もっと多様な使い方ができると思っています。
ありがとうございます。もう一つお聞きしたかったのが、医療分野の人材育成における直近の課題です。
高橋様:専門職が多いなか、その技術や能力評価をもっと適切に行っていく必要性を感じています。といいますのも、人事考課の中に技術評価ツールがなく、目標(成果)管理に留まってしまっている現状があります。直属の上長による評価に加えて、多面的に担うべき役割をどれだけ果たせたか。これはどの病院でも似たような状況で、課題だと認識しています。当院でも人事考課の見直しが求められるなか、受講履歴の統合管理を役立てていければと考えています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
高橋様:これはまだ担当者間での話ですが、済生会熊本病院と例えばポートフォリオなどの共同開発ができればいいなという話をしています。カスタマイズしたくても自院だけではコストもかさむため、同じKDを使っているなら済生会のスケールメリットを生かし、このeラーニングツールをさらに活用していきたいと思っています。
ご利用いただいた製品・サービス
お客様情報
院名 | 社会福祉法人 恩賜財団 大阪府済生会吹田医療福祉センター 大阪府済生会吹田病院 |
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開設 | 昭和20年10月21日 |
所在地 | 大阪府吹田市川園町1-2 |