この度、通信教育課程における単位認定試験のオンライン化にあたり、どうしても外せない“2つの要件”があったそうです。同大学が目指される試験のDX化をどのように形にしていったのか、その経緯や導入後の成果について、早速お話を伺いました。
兼 IR室 副主幹/キャリアコンサルタント市山 綾乃様
お客様のニーズ
- 600科目の単位認定試験を一斉にオンライン化したい。
- 会場で提供していた試験の仕組みをそのままオンライン上でも実現したい。
導入サービス
導入後の成果
- 導入から5ヶ月で600科目の単位認定試験をオンライン化。
- 「学生が自由に科目を選択し、1,000人規模の学生が決められた日に一斉受験ができる」という従来の仕組みをオンライン上で実現。
- 問題用紙の印刷の手間・コストカットにつながった。
- 試験時間制限・本人認証機能により、懸念していた教育の質を担保できた。
【目次】
会場での対面試験・郵送対応を経て、オンライン化を目指すことに
今回オンライン化されたのはどのような試験ですか?
通信教育課程における単位認定試験(科目終了試験)です。学生のみなさんには、最初にレポートを提出していただきますが、合格した方は単位認定のための最終試験を受ける必要があります。その最終試験を今回、オンライン化しました。
これは、以前は対面で実施されていたものですか?
そうです。全国の会場に学生のみなさんが来られて、用紙を配って回収するという試験を行なっていました。ところが、コロナ禍になってそれができなくなってしまったため、急遽郵送対応に切り替えたんです。ご自宅に問題用紙などをすべて郵送し、期限を決めて回収するという方法です。
ですが、学生1人1人のご自宅にきちんと届くよう郵送するとなると作業負担も増えますし、問題紛失や流出のリスクもありました。また、コロナが終結したとしても、そもそも会場に来ていただく負担を軽減できれば学生の方により幅広く学んでいただけるのではと考え、以前から構想していたオンライン化へ完全シフトすることになりました。
試験をオンライン化するという構想は、以前からあったのでしょうか?
私の記憶では10年程前からあったのではないかと思います。ただ、それができない理由として、1つは教育の質をどう担保するか、もう1つはちゃんと学生ご自身が受けていらっしゃるかという本人認証の問題ですね。その2つの問題があったため、「やはり試験は会場で受けるのが当然でしょう」というような雰囲気があったのも事実です。それはおそらく本学だけではなかったと思います。
システムが見つからず苦戦
コロナ禍を経て、実際にオンライン化の検討を始められたのはいつ頃でしたか?
コロナ禍1年目くらいからは検討に入っていたと思います。ですが、いろいろな理由があり、導入まですごく時間がかかってしまったんです。
何が問題だったのでしょうか?
まず本学の特徴として、科目数が非常に多いということがありました。また、「なるべく会場で実施していたころと同じ仕組み・流れで試験をやりたい」という希望が強かったのですが、それを受けてくださるようなシステムがなかなか見つからなかったんです。
ちなみに科目数はどれくらいですか?
約600です。600科目の試験をすべてオンライン化して、とにかく一斉スタートしたいという思いが強くありました。
また、コロナ前は「学生が自分の受けたい科目を自由に選択し、決められた日に一斉受験をして午前中には試験が完了する」というやり方を会場で実施してきました(*)。この試験は午前、この試験は午後といった制限がないことが本学の特徴であり、学生にとってのメリットだと考えていましたので、それをそのままオンラインでも実現したいというのがありました。
(*)単位認定試験日は5・6・7・8・9・10・12・1・2・3月の年10回、日曜日の午前中に実施。実際に試験を受けるためにはあらかじめレポートに合格しておく必要がある。
つまり、600科目の試験がオンライン上に揃っていて、「Aさんは1と2の試験を、Bさんは1と100と600の試験を受ける」というふうに1人1人が自由に科目を組み合わせることができ、且つ決められた時間に一斉にオンラインで試験を受けられるようにしたい、と。
そういうことです。それを会場ではずっとやっていましたので、オンラインでも同じ流れで試験を実現したいという思いが強くありました。ところが、それを実現してくださるパートナーの会社さんがなかなか見つからず困っていました。
どうしても外せなかった“2つの要件”と採用の決め手
デジタル・ナレッジをお知りになったきっかけは何でしたか?
私立大学通信教育協会に加盟しているのですが、同じ加盟校である通信制大学様が、コロナ禍にデジタル・ナレッジさんのシステムを使って本人認証付きオンライン試験を導入された、という話をお聞きしたのが最初でした。そこで担当の方をご紹介いただき、繋げていただきました。
導入にあたって重視されたポイント、採用の決め手は何でしたか。
今、1,000人ぐらいが受験対象者になっていますので、私どものリクエストとしては「決められた時間に1,000人規模の学生が一度にオンライン試験を受けられるか」「スタート時に600科目の試験を揃えていただけるか」。本人認証も必要でしたが、まずはこの2点でしたね。
デジタル・ナレッジさんには初めてお話をさせていただいたときから、前向きにご検討いただけそうだという感触はありましたし、実現に向け、本当に細やかな対応をしていただきました。私たち事務局スタッフがどうすればスムーズに進められるか、常に配慮してくださり、こちらの要望をよく聞いてご提案いただき、形にしていただきました。
導入から5ヶ月で初のオンライン試験を実施
採用が決まってからオンライン化はどう進んでいきましたか?
2022年9月頃に正式契約をして、11月には学生向けのプレテストを実施、年明けに300人規模の負荷試験を経て、2023年2月には本番となる初のWeb試験を実施することができました。
順調に進んだ印象ですが、問題登録などの準備は大変だったのではないですか?
実は、ほとんどデジタル・ナレッジさんにやっていただきました。
システムだけでなく、運営支援もご依頼いただいたんですね。
はい、お願いしました。正直、短期間で作業を学んでも学内での対応は無理だろうと思ったんです。科目数も多いですし、一度登録されたものを修正していくことは私たちにもできると思いますが、最初のゼロから1にする部分は助けて頂きました。
懸念された教育の質も「試験時間制限」「本人認証機能」がサポート
実際に試験をオンラインされてみて良かった点は何ですか?
まず、書道などの一部科目を除き、問題用紙を印刷する必要がほとんど無くなりました。作業の手間やコストが無くなったのは本当に大きいですし、学生のご自宅に郵送していた頃の問題流出・紛失のリスクという危機管理的なところもクリアできました。
それから、会場で実施していた時と同じように、時間制限を設けて厳格に試験ができるようになった点も良かったですね。郵送してご自宅で受けてもらっていたときと比べると、懸念されていた教育の質についても担保できたのではないかと思います。
オンライン試験での時間制限はどのように運用されていますか?
1科目60分という制限をシステム的にかけていただきました。終了時間の5分前には画面に「5分前です」と表示され、時間になれば学生に回答を送信してもらいます。自宅でのペーパー試験ではできないことですし、学生にも緊張感を保ったまま集中して受けてもらえるので良いですね。
本人認証も導入されたということですが、これはどういった仕組みですか?
事前に本学の方で、学生証の写真を登録しておきます。試験当日は、登録写真と受験する学生がカメラによる本人画像の認証を行い、一致していれば試験を受けることができます。仕組みは簡単かも知れませんが、これを全学生必須で運用・実施することはなかなか難しいことです。
試験のオンライン化に対して学内、とくに先生方からはどういった反応がありましたか?
他の大学さんから「Web試験導入にあたって、一体先生たちをどういうふうに説得されたんですか?」と聞かれたことがありましたが、本学の場合は、幸いなことに本当に協力的な先生方が多く、学生のためになるならと非常に前向きに取り組んでくださいました。
オンラインなら自動採点も可能ですので、そういった部分で先生方のご負担軽減に貢献できればと思います。
それは本当に、先生方の大変だった部分をサポートできる部分だと思います。
単位認定試験は年10回ですが、なかには10回すべて違う試験問題を使うという先生もいらっしゃいます。ですので、添削の負担を減らし、問題作成の方にお時間を使っていただけるなら本当に良いことですし、ぜひ自動採点機能を今後大いに活用していければと思っています。
より多くの方に聖徳の学びを届けるために
2023年度に入りましたが、改めて目標をお聞かせください。
2023年2月・3月とまだ2回しかオンライン試験を行なっていませんので、まずは今年度、全10回の試験をオンラインできちんと実施するというのが第一となります。また、自動採点についてはすでに始めていますが、先生方がWeb上で採点するのは今年度からになりますので、論述や最終評価を入力するというような部分に関しても、完全Web化ができるよう進めていきます。
今後新しく取り組んでいきたい方向性などがございましたら、ぜひお聞かせください。
システムを統一していけたらと思っています。本学ではまずレポートを、次にスクーリングをWeb化し、今回は試験をオンライン化しましたが、使っているシステムがバラバラなんです。使いづらさもありますし、学生にとっても入り口は1つの方が分かりやすいですから、このKnowledgeDeliverに一本化していければと思っています。今のところは試験だけですけれども、まずはレポートを統合し、できればスクーリングや授業動画配信、ゆくゆくは成績確認なども含めて統合していければと、思いが広がっています。
有難いことに学生数も順調に増えておりますので、これを機にもっと多くの皆様に本学の教育を届けることができるよう、しっかりと取り組みたいと思います。
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名称 | 聖徳大学大学院通信教育課程 聖徳大学通信教育部 聖徳大学短期大学部 通信教育部 |
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創立 | 1933年 |
大学設置 | 1990年 |
所在地 | 千葉県松戸市岩瀬550 聖徳大学5号館2階 |