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2022年11月に発表されて以来、世界中で話題となっているChatGPT。
既存のビジネスのあり方を大きく変える革新的なサービスとして、大きな注目を集めています。
とりわけ、教育現場でChatGPTを活用することについては、さまざまな議論がなされています。
実際のところ、ChatGPTは教育にどのように活用できるのでしょうか?
また、教育現場でChatGPTを活用する場合、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?
ここでは、教育現場におけるChatGPTの活用事例とメリット、課題、活用のポイントなどについて解説していきます。
ChatGPT(チャットジーピーティー)、まるで人間のように自然なやり取りができるAIチャットサービスです。
米OpenAI社によって2022年11月に発表されるとたちまち話題となり、わずか2ヶ月でアクティブユーザ数1億人を突破しました。ChatGPTの凄いところは、なんといっても高い言語処理能力にあります。
質問応答、要約、翻訳、アイデア提案、ブレインストーミングなどにおいて、人間が自然と感じる会話、回答の生成ができます。
自然言語を話すために作られた生成AIとして、驚くほど精度の高い出力が可能です。
ChatGPTの元となっているのは、OpenAI社が開発した大規模な自然言語処理モデルです。
大量のデータを学習しているため、従来のチャットボットとは違い、話の流れ、文脈、質問の意図まで読み取って受け答えをしてくれる点が特徴です。
2022年11月にリリースされた無料で使える従来型モデル「GPT-3」「GPT3.5」に続き、2023年3月にはさらに性能が向上した「GPT-4」(有料版:月額20ドル)が、2023年8月には企業向けの「ChatGPT Enterprise」が提供開始され、注目度はますます高まっています。
話題となっているChatGPTですが、その活用先の1つとして注目されているのが「教育」です。
ChatGPTを活用することで、これまでの教育では実現できなかった新しい学びが可能になり、多くのメリットや効果を生み出すことが期待されています。
すでに先行する教育機関において授業に試験的に導入されたり、校務のサポートに使用されたりしています。
また、世界中の企業においてChatGPTを活用した教育サービスの開発も進められている状況です。
ここで、実際にChatGPTを活用した教育事例をいくつかご紹介します。
ChatGPTは非常に多数の言語をカバーしているため、新しい言語を学ぶ際の学習支援ツールとして使うことができます。
意味がわからない単語や文法につまずいても、ChatGPTがすぐに答えを表示し、的確な解説をしてくれます。
また、ChatGPTは文章生成だけでなく、文章評価や音声評価をすることもできるため、学習者が作った英作文を正しい英文かどうか自動採点してくれたり、
発音練習のサポートもしてくれます。
ChatGPTによる自然な会話練習により、学習者は自分のペースでコミュニケーションスキルを向上させることができます。
プログラミング学習にもChatGPTは効果的です。エラーが発生した場合、ChatGPTが原因を分析し、解決策を提示してくれます。
コードの例も提供してくれるほか、プログラミングの実行自体をChatGPTの画面上で可能なので、効率的にプログラム作成ができます。
質問にも24時間答えてくれるので、教員やTAの負担軽減にもつながりますし、挫折しがちなプログラミング学習でも、
ChatGPTがあれば一人でプログラムを書くことができます。
このように、ChatGPTは初学者や文系の学生、プログラミングに苦手意識を持つ人の学習のサポートツールやメンターとしても活用できます。
ChatGPTを活用することで、単元や学習者のレベルに合わせたテスト問題を簡単に作成することができます。
類題を多数作問したり、〇×形式、選択問題、穴あき問題などに作り変えるのもChatGPTが得意とするところです。
また、海外向けの多言語教材も自動翻訳機能ですばやく作成できます。
テスト問題だけでなく、授業内容のより分かりやすい解説や、個別指導に使うための教材を作成することもできます。
企業における社員研修の教材やカリキュラム作成にもChatGPTは使えます。
社内にPowerPointなどの資料がすでにある場合、それを元にテスト問題を作成したり、資料に適切な内容を肉付けしてカリキュラムに落とし込み、コース設計をするところまでChatGPTで半自動化できます。
教育にChatGPTを活用するメリットはたくさんありますが、注目すべき視点は次の2つです。
今まで不可能だった個別指導が可能に 教員の負担軽減・働き方改革へ
前述したように、ChatGPTを使えば次のようなことが可能です。
つまり、従来は難しかった、「学習者1人1人の理解を深めるための個別教育」が実現できます。
従来から、個別教育は学習者1人1人の理解を深めるために最適な手法とされてきましたが、実際には費用面の問題もありなかなか実現には至りませんでした。
それがここにきてAIの進化、ChatGPTのサービス化により、実現可能となってきています。
もう1つのポイントは、教員の負担軽減や働き方改革につながるという視点です。
学校の先生には授業だけでなく、膨大な業務が存在します。授業用プリントやテストの作成、通知表や調査書の作成、生活指導、進路指導、行事運営、保護者対応など、数え上げればきりがありません。
ChatGPTを活用すれば、各種プリントや定型文書の作成、行事の企画・進行表のドラフト作成などを任せることができます。
実際に、個人面談や家庭訪問の日程調整をChatGPTに任せているという事例も報告されています。
各家庭から提出された訪問希望日と、家庭の住所などを条件指定しChatGPTに入力すると、効率の良い家庭訪問スケジュールをChatGPTが作成してくれるというものです。サンプルデータの作成のような、それ自体にはあまり意味がない作業をChatGPTに代替させることも、業務の効率化につながります。
先生の働き方改革が問題となる中、ChatGPTを効果的に活用できればメリットは大きいと考えられます。
一方で、教育現場にChatGPTを導入するにあたっては、さまざまな課題が指摘されています。
それぞれ解説していきます。
ChatGPTの教育利用でとくに問題になっているのは、学習者がレポートや課題などの文章作成をChatGPTに任せてしまうという懸念です。
ChatGPTは、学習者が自分で考えなくてもアイデアを出してくれたり、文章を生成してくれます。
「学生が課題をChatGPTに書かせて提出した」といったことも起こり得るため、結果として学習者が自ら調べたり考えたりする機会が失われ、創造力、問題解決力、批判的思考力の育成が妨げられる可能性があります。
すでに国内の大学では、ChatGPTを含む生成AIが作成した文章などを、学生がそのまま課題などとして提出することを禁じるケースが増えています。
しかしながら、実際には人が作ったものとChatGPTが生成したものを判別するのは難しく、学生による不正利用の可能性、従来の教育方法が機能しなくなる恐れが指摘されています。
教育現場でChatGPTを使用する場合、学習者の個人情報や学習データ、学校の機密情報を取り扱うことになりますが、適切な保護策が講じられない場合、情報が漏洩し、プライバシーの問題が生じる可能性があります。
実際に、オプトアウトを申請しない限り、ChatGPTに入力した内容はOpenAIによってその内容を利用するケースがあると、OpenAI社が公表しています。このため、ChatGPTの利用に際して個人情報と機密情報の入力には十分に注意する必要があります。
ChatGPTが誤った回答や不適切な回答をしたとき、学習者がそれに気付かず受け入れてしまう恐れがあります。
ChatGPTの精度は飛躍的に高まっていますが、それでもまだ完全ではありません。
ChatGPTが生成する文章には、時には事実ではない内容が含まれていたり、不自然な文章が生成されることがあります。
このため、ChatGPTの情報をすべて鵜呑みにせず、あくまでの1つの案として、しっかりと人間がチェックし、情報を精査して使う必要があります。
上記で解説したように、ChatGPTが出力する文章には、間違った情報や著作権法に反する内容などが含まれる可能性があります。
また、ChatGPTは原則として犯罪に利用されるような回答を生成しないと謳ってはいますが、
回避ワードを入力すると、犯罪に利用できる回答が生成されてしまうという欠点が指摘されています。
そのため、ChatGPTを誤って利用すると法令違反、事件、倫理的問題に巻き込まれる可能性があることもしっかりと認識しておく必要があります。
ChatGPT を教育現場に導入するためには、各教育機関が学生や教職員に対して十分な情報提供を行い、
学校としての指針、運用計画を明確に示すことが求められます。
文部科学省は2023年7月13日に「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて」という通知を出し、ChatGPTなどの生成AIに関する留意点等をまとめました。すでに主要な大学では生成AIの利用に関する方針やガイドラインを発表していますが、文部科学省は、そうした方針が未制定の大学・高専に対して「学生や教職員に向けて適切に指針等を示すなどの対応を行うことが望ましい」としています
出典:文部科学省「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」
https://www.mext.go.jp/content/20230714-mxt_senmon01-000030762_1.pdf
(2023年8月28日参照)
このようにChatGPTの教育活用には現状、さまざまな課題があります。
しかしながら、ChatGPTを含むAI全般は、今後加速度的に社会へ浸透していくものと考えられます。そのため、教育においても、ChatGPTの利用を禁止するより、どう使いこなすかという視点が重要となってくるのではないでしょうか。
ここでは、教育においてChatGPTを利用する際の3つのポイントをご紹介します。
ひと口にChatGPTを利用すると言っても、初等中等教育なのか、高等教育なのか、社会人教育なのか、対象者やサービスによって使い方は異なってきます。
学習活動(プロセス)に使うのか、はたまた成果(アウトプット、パフォーマンス、課題解決)のために使用したいのか、目的も重要です。
そのため、まずはChatGPTを使って「何をしたいのか?」「させたくないのか?」を明確にする必要があります。
文部科学省は2023年7月4日に発表した「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」の中で、生成AIの不適切な使い方、適切な使い方として、次のような例を挙げています。
こちらは、学校関係者が生成AIの活用の適否を判断する際の参考資料として、2023年6月末日時点の知見をもとに暫定的にまとめたものになります。
ガイドラインでは学校で生成AIを利用する際のチェックリストも公開しているので、ぜひ参考にしてみてください。
出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」
https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf
(2023年8月28日参照)
ChatGPTを教育現場で活用するためには、先生自身がChatGPTの特性やメリット・デメリットを熟知していなければなりませんし、ChatGPTが生成した内容を批判的に評価し、自らの意見や解決策を形成できるよう学生を指導しなければなりません。AI活用に対する倫理教育も重要になってくるでしょう。
そのため、教員も学びながらChatGPTを効果的に使いこなすためのスキルを身につけていく必要がありますし、教育現場全体のデジタルリテラシーの向上もポイントとなります。
ChatGPTのようなAIツールを用いた学習が一般化することで、従来の試験や評価方法も変化する可能性があります。
最終成果物以外の思考プロセスも評価対象にしたり、プレゼンや質疑応答により学生の理解度を評価することも、これからの教育では必要になります。
今の子供たちが社会に出るときはAIの時代を迎えています。そこではChatGPTのような生成AIを駆使して生産性を上げる人材が重用され、そうでない人たちとの間に格差が生じるとみる専門家もいます。
少なくとも、ビジネスの課題を解決する「AI活用人材」は今後あらゆる分野で必要となることから、そういった人材を育成する教育現場では、従来の評価指標とは異なる、新しい評価方法を取り入れることが求められるでしょう。
デジタル・ナレッジでは、ChatGPTを活用した教育サービスをすでに開発・提供しております。 ここでは2つの取り組みをご紹介します。
トレパJは、ChatGPTと連動し、自然会話まで実現した最新の日本語学習用ソリューションです。
ChatGPTとの自然な会話により、日本語を効果的に学習できるツールとして、すでに海外や国内の外国人向け教育に活用されています。2023年3月には、トレパJを活用した海外の学生が現地の日本語弁論大会でTOP3を独占するなど、高い効果を上げています。
画像のように、条件(対象者・問題の文字数・空欄数)に合致した穴あき問題を簡単に自動生成することが可能です。
今後は、PowerPoint内のテキストや映像内のセリフを抽出して自動的にテスト問題を作成したり、LMSへの問題登録まで、すべてChatGPTが半自動的に実施できるよう開発をすすめています。
ChatGPTを使った教材作成は、現在、非常にお問い合わせが増えている分野です。
教育現場でChatGPTの活用を検討されている方、具体的な事例・使い方を知りたい方、自社にあったより効果的な導入をお考えの方は、
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