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情報化社会の基盤として、今やあらゆる分野で活用されている「ICT」。今後も技術の進化に伴い、ますます活用が広がるものと予想されます。
このページでは、ICTの言葉の意味や関連用語との違い、導入のメリット、具体的な活用事例をご紹介していきます。現代社会において必要不可欠なICTについて、ぜひ理解を深めていきましょう。
ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、「情報通信技術」を意味します。
ただし、情報処理や通信技術そのものだけでなく、 通信機器やソフトウェア、それを活用した多様なサービスの総称としても使われます。ラジオやテレビ、携帯電話、パソコンのほか、インターネット、電子メール、SNS(ソーシャルメディア)、テレビ会議システム、電子商取引もICTの一部です。
ICTの普及により、私たちの生活は格段に便利になりました。インターネットを使えば、世界中の情報をリアルタイムで簡単に手に入れることができますし、スマホを片手に家族や友達と手軽に連絡し合い、音楽や映画、オンラインショッピングを楽しむことができます。このようにICTは、私たちの暮らしに溶け込み、より快適に、楽しく過ごすために欠かせないツールとなっています。
ICTとITは、コンピュータを活用する「情報技術」という意味では同じです。ただし、ICTは、ITに「Communication」という言葉が入っているように、コミュニケーションに関する部分をより強調しています。つまり、ITが技術そのものを指すのに対し、ICTはその技術の使い方やサービスなども含めた包括的な意味合いで使われます。
日本では、2000年11月に制定されたIT基本法がITの広がりのきっかけでした。当初は技術やインフラ整備に重きが置かれていましたが、次第に「ITを使って何をするか」が重視されるようになりました。そこで、技術そのものを指すITではなく、ICTという言葉が生まれ、使い分けられるようになったのです。ちなみに国際的にはICTという言葉が一般的であり、日本でもITに代わってICTが広まりつつあります。
DX(Digital Transformation)という言葉も、近年よく目にするようになりました。DXとは、デジタル技術を活用してビジネスや社会のあり方を変革することです。例えば、スマホアプリを使ってお店の商品を注文できるようにしたり、自動化されたロボットが工場で製品を作ったりといったことが挙げられます。
ICTが情報通信技術全般を意味するのに対し、DXはICTを基盤として、よりよい変革を目指す概念です。DXは行政や企業、医療機関などさまざまな領域で推進されており、ICTとは切っても切れない関係にあります。
IoT(Internet of Things)は、インターネットに接続されたさまざまな物(モノ)が情報をやり取りする技術のことです。インターネットを通じてスマホから操作できるスマート家電や、交通情報をインターネットからリアルタイムに受信して最適なルートを案内してくれる自動車のナビゲーションシステムなどが挙げられます。モノのインターネットと呼ばれることもあります。
ICTが情報通信技術全般を意味するのに対し、ICTはIoTを含む広い範囲の技術を指すため、IoTもICTの一部と言えます。
非常に幅広い分野をカバーするICTの導入は、組織にとって多くのメリットをもたらします。代表的なメリットは次の通りです。
ICTを活用することで業務プロセスの効率化を図ることができます。例えば、自動化された業務処理システムを導入することで、ルーティン作業に費やす時間や手間が大幅に削減されます。これにより、従業員はより高度な業務に集中することができ、生産性の向上を実現できます。これまでは社内にいなければできなかった作業も、ICTを導入することでいつでもどこでも可能となり、業務効率化と生産性の向上につながります。
ICTの導入は、組織内の情報伝達やナレッジ共有にも変革をもたらします。従来は紙で行っていた情報共有も、クラウドベースの社内情報システムなら、いつでもどこでも、必要な情報に迅速にアクセスすることができます。また、チームメンバーがオンライン共有ドキュメントを介してプロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握し、迅速な対応を行うといったことも可能になります。こうした変革は、意思決定の迅速化や商品開発のリードタイム短縮などさまざまな効果を生み出し、競争力や組織力の強化にもつながります。
ICTを活用した顧客対応により、顧客サービスの質を向上させることができます。
これまでは営業時間にしか対応できなかった問い合わせや受注が、オンライン上でのやり取りにより24時間365日、受付可能になりました。顧客は電話、メール、チャット、SNSなど、さまざまなチャンネルを通じて同じ質のサービスを受けられるようになります。さらに、顧客データの分析により、顧客のニーズを把握し、パーソナライズされたサービスを提供することも可能です。こういった取り組みは、顧客満足度の向上やリピーターの増加にも効果的です。
ICTは、利用できる環境を整備するだけではなく、いかに利活用するかが重要です。ここでは、ICTが活用されている身近な例を、分野別にご紹介します。
ICTの活用が強化されている分野のひとつが「教育」です。 文部科学省の「GIGAスクール構想」により、令和4年度末には、全国の児童・生徒に1人1台のコンピュータと高速インターネットの整備が、ほぼ完了しました。タブレットやパソコン、デジタル教科書を使った授業を行う学校も増え、動画や音声を使ったインタラクティブな教材は、紙の教科書には不可能だった、よりわかりやすい教育を実現しています。 入院や不登校などの事情で学校に来られない子供も、それぞれの場所で遠隔教育を受けられるようになり、また、遠隔地にいる専門家を招いたオンライン特別授業なども容易に実現ができ、教育の幅が広がっています。
さらに、ICTは授業だけでなく、成績管理や出欠管理、資料の作成などにも活用でき、教務の効率化や教員の働き方改革にもつながっています。ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、教育の公平性や提供性を確保するための取り組みの一環として、ICTを教育に導入することを掲げており、教育へのICT導入は世界中で進められています。
ICTの活用は介護分野でも進められており、介護ロボットやセンサー技術の導入により、高齢者などの自立支援が進められています。例えば、見守りセンサーをベッドに取り付けることで、ベッドからの転落や歩行中の転倒を防ぐなど安全確保に効果を上げています。センサーで収集したデータを分析し、利用者の生活リズムを把握することで、介護の質を向上させる取り組みも進められており、職員の負担軽減にも貢献しています。
さらに、これまで紙でやり取りしていた介護記録をデジタル化することにより、ケアマネージャーや看護師が現場に出向かなくても、利用者の状態やケアプランの内容を確認することができるようになりました。現場のスタッフとのコミュニケーションも取りやすくなり、仕事の効率化に効果を上げている例もあります。今後は、AIやIoTセンサーなどの最先端技術を活用して、より利用者に寄り添った介護実現のための研究も進められていて、介護業界におけるさまざまな問題を改善できるのではないかと期待されています。
地方は都市部に比べて家賃や物価が安いというメリットがある反面、雇用や教育機会が少ないという課題がありました。ICTの導入によって雇用や教育の問題がクリアになれば、地方の活性化が期待できます。実際に、いち早く高速インターネット回線やコワーキングスペースを整備したことで、IT企業の誘致に成功した地方自治体の例もあります。また、総務省は、テレワークにより都市部以外でも仕事をできるようにすることで、地方の人口を増やす「ふるさとテレワーク」という取り組みを進めています。このように、政府も地方活性化のためのICT推進を積極的に支援しています。
また、地域ポータルサイトの開発や地域観光情報のデジタル化など、ICTは地方の魅力発信や観光振興にもひと役買っています。少ない人的資源やリソースでも、ICTをうまく活用することで地方のさまざまな課題の解決が期待されています。
医療におけるICT活用も重要な分野のひとつです。
近年では、電子カルテや診療支援システムの導入が急速に進み、医療情報の共有と効率的な診療が可能となってきました。これまで、紙のカルテへの記入が必要だった患者の情報も、ICT化により電子カルテにすることで、記入時間の短縮や迅速で正確な情報共有など、業務効率の改善につながっています。
さらに、オンライン診療をはじめとする遠隔医療は医療の地域格差をなくし、医療画像診断システムによる診断精度向上など、ICTはより高品質な医療サービスの実現に寄与しています。超高齢社会において医療現場の人手不足が問題となるなか、医療の質を向上させるICT活用に大きな期待が寄せられています。
防災分野でもICTは有効なツールとして活用されています。
よく知られているものとしては、Jアラート(全国瞬時警報システム)があります。Jアラートは弾道ミサイルや緊急地震速報、大津波警報など、緊急を要する情報を携帯メールや市町村防災行政無線等により、国から住民まで瞬時に伝達するシステムです。また、市町村が発信した災害時の避難指示などを地域住民に提供するLアラート(災害情報共有システム)も、2019年より全都道府県で運用されています。これらは、いざというときに国民を守る仕組みとして、ICTを活用しながら整備が進められています。
さらに、ICTを活用した災害予測システムや避難所管理システムの導入により、災害リスクを低減し、被害を最小限に抑える取り組みも始まっています。防災拠点など人の集まる場所での無料Wi-Fi環境の整備によって、被災者が情報を入手しやすくしたり、素早く安否確認できるようといった取り組みも進められています。
日本政府は2018年、「世界最先端デジタル国家」の創造に向け、政府自らが先頭に立ってICT化に取り組む計画を示しました。この計画では、行政サービスの100%デジタル化、地方公共団体におけるクラウド導入の促進、民間の働き方改革、データ駆動型のスマート農水産業の推進等が目指されています。
こうしたデジタル化の推進にはICT人材が必要不可欠ですが、国内におけるICT人材は慢性的に不足していて、今後も人材不足は加速するとの試算もあります。そこで政府は、教育機関や産業界と連携して、ICT人材の育成やキャリア支援プログラムを展開しています。
また、政府は、ICTの推進に向けた取り組みに補助金を支援する事業を多数実施しています。例えば、介護業界におけるICT導入支援事業や、保育所等におけるICT化推進等事業(ICT補助金)など、種類はさまざまです。このように、政府はICT化を促進し、国家競争力の強化や国民生活の向上を図るためにさまざまな政策を推進しています。
今回はICTの概要と、日本における活用事例などをご紹介しました。ICTの導入には多くのメリットがあり、教育や医療など多様な領域で活用が進んでいます。一方で、我が国はICTインフラ整備においては国際的に見ても進んでいるものの、ICT人材の不足や地域・世代間における情報活用格差など、依然として多くの課題を抱えているのが現状です。国際競争力を高め、豊かさを実感できる社会の実現に向け、私たち1人1人がICTについて理解を深め、活用していくことが求められています。
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