デジタル・ナレッジ教育テクノロジ研究所 所長
吉田自由児
よしだ・じゆうじ/1973 年生まれ。早稲田大学理工学部卒。大学でCAI を研究しデジタル・ナレッジ創業時より参加。昨今はLearning Analytics の興味が強く、Analytics+ のベースを1 人で開発した。
巷のニュースでビッグデータやデータマイニング、 AI などの新技術が注目されはじめたのは2013 年頃のことでしょうか。以来、多くの企業がこれら新技術に着目し、様々な研究開発が行なわれ、実際の商品として矢継ぎ早にリリースされています。IBM のWatson によりコールセンター業務支援を実サービスとして提供したり、 Google の開発したAlphaGo が囲碁で人間に勝利したり、新興メーカー含む各自動車会社が自動運転技術を実用化したりと、様々な先進的かつ有益な事例も生まれています。これらニュースに触れ、テクノロジの進化や来る次世代に思いを馳せることもあるでしょう。
教育の世界もこの動きに合わせ日本では2014 年頃より「教育ビッグデータ」や「ラーニング・アナリティクス」というキーワードの下、様々な試みが行われております。教育ビッグデータとラーニング・アナリティクスを活用すると、受講者に有益な情報や指導を適切に提示したり、教材製作者に教材ブラッシュアップのための気づきを与えたり、教育担当者や教員に受講者の学習活動を示したり学習効率の高い指導法の気づきを与えることができるようになるでしょう。
弊社は2014 年に教育ビッグデータ収納サービス「Mananda」をリリースしました。まだ LRS サービスが世の中にさほど認知されていない中でのスタートでしたが、2015 年10 月にラーニング・アナリティクスのサービス「Analytics+」をリリースしたことで、学習履歴の収集・蓄積から活用までの一連の流れを実現しました。さらに早稲田大学人間科学学術院の松居辰則教授と共同研究を行い、通信制大学の過去十数年の学習履歴/ 行動履歴をもとに退学者予兆検出を行うアルゴリズムを研究・開発しました。この教育ビッグデータの取り組みは今なお加速的に進み、現在は複数の教育ビッグデータ関連プロジェクトを進めております。
教育ビッグデータ関連のセミナーを開催すると、多くの方にご参加いただき、様々なご期待やご質問をいただきます。この領域に対する教育関係者の関心の高さを感じております。
一方で、まだまだ教育ビッグデータの活用例やその効果が十分に認知されていないとも感じております。名前だけは知っているが、内容や効果、ましてや導入方法についてはよくわからない・・・そういう方が多いのも確かです。
より多くの方に教育ビッグデータの価値や活用例を知っていただきたい・・・当冊子は、教育ビッグデータにいち早く取り組んできた弊社が、教育ビッグデータやその活用技法であるラーニング・アナリティクスとはどういうものなのか、それによってどのようなメリットがもたらされるかを説明したものです。
今後、教育ビッグデータは教材コンテンツや e ラーニングシステムと並ぶ第三の価値、教育資産になると思っております。それも、ただ教育ビッグデータを所有するだけではなく、それを活用するためのラーニング・アナリティクスを適用することで初めて真価を発揮します。
当冊子を通して、教育ビッグデータやラーニング・アナリティクスの価値や活用法をお伝えすることで、より良い教育サービス提供のためのご検討の一助となれば幸いです。