2007年4月発行
1.調査概要
1.1 調査の目的
高等教育機関での活用や企業研修における定着など、eラーニングは様々な教育活動に活用されている。初中等教育機関においては、文部科学省やメディア教育開発センターなどが中心となり「学力の向上を図るICT活用」として、学校現場でのICT活用授業の普及・促進を図っている。
また、民間の教育事業者による初中等教育段階でのeラーニング活用事例は?なく、今後の発展が期待される分野とされている。
一方、eラーニングサービスで先行する韓国では、高等教育機関や企業研修はもちろんのこと、幼児から初中等教育段階でのeラーニング活用も盛んで、特に民間の教育事業者によるeラーニングビジネスへの参入が相次いでいる。
このような状況を踏まえ、本調査では、韓国のeラーニングビジネス、特に中学生向けサービスの現状について調査分析を行うとともに、日本のeラーニングとの相違点などについて調査を実施したものである。
1.2 調査概要
本調査の調査対象、調査期間、調査方法は以下のとおりである。
- 調査対象 : eラーニングサービス事業を営む企業(韓国ソウル特別市)
- 調査期間 : 2007年3月28日~2007年3月31日
- 調査方法 : 現地訪問、対面調査
1.3 調査項目
本調査の調査対象、調査期間、調査方法は以下のとおりである。
- 企業概要
- eラーニングサービスの概要
- 教員体制
- 受講者規模
- サービス価格
- 授業運営
- 講義収録
- 生徒とのコミュニケーション
- 授業評価
- 著作権
- システム
- 講師の採用
- モバイルサービス
- 新規入会者へのPR
- 他社との優位点
- 今後の展望
- 課題
2.調査結果
2.1 企業概要
今回、調査した企業は次のとおりである。主に、中学生向けeラーニングサービス事業者を対象に調査を実施した。
名称 | 株式会社Purun1318(サービス名:1318class) |
設立 | 2000年3月 |
住所 | ソウル市永登浦区シンギル2洞101-7 大河ビル |
事業概要 | 小・中・高生向けオンライン教育サービス |
名称 | メガスタディ株式会社(サービス名:Mbest) |
設立 | 2000年7月 |
住所 | ソウル市江南区道谷洞943 代わり証券ビル2階 |
事業概要 | 中・高生向けオンライン教育サービス |
名称 | 株式会社YBMsisa.com(サービス名:YBMsisa.com) |
設立 | 2000年6月 |
住所 | ソウル市江南区ヨクサム洞649-1 |
事業概要 | B2C・企業・大学向け外国語オンライン教育サービス |
2.2 eラーニングサービスの概要
中学生向け「内申点アップ教育」や「科学・外国語専門特殊高校進学教育」、「成績上位3%を目指す生徒向け教育」など、様々なサービスを展開している。特に、「内申点アップ教育」の人気が高く、1318classやMbestではこの講座(900講座~1,000講座を保有)を、毎年リニューアルしている。1講座とは、20講義のセットであり、1講義は30分から40分のオンデマンド映像で構成されている。
また、YBMsisa.comでは、幼児向け英語教育サービスも展開している。これは、韓国では小学校2年生からの英語教育が必修で、小学校入学前からの英語教育が盛んなためである。
2.3 教員体制
1318classは200人、Mbestは100人と、オンライン講師を100人規模で抱えている。特にMbestではオンライン講師のうちの60%が女性講師であり、初中等教育段階での女性講師の人気が表れた結果である。
2.4 受講者規模
1318classは67万人、YBMsisa.comは350万人と、非常に多くの会員が登録されている。これらの会員には無料登録会員や保護者会員も含まれるが、相当な規模で運営されていることがわかる。
会員中学生の学力レベルは概ね中位以上である。中には学力上位3%を対象としたサービスもあり、韓国のeラーニングサービスを利用する中学生は、学習の自己管理のできる成績中位以上の生徒であることがわかる。
2.5 サービス価格
サービス内容によって価格差はあるが、1講座(30分講義×20セット)あたり月額5万ウォンというサービスから、すべての講座を受講できる76万ウォン/6ヶ月や128万ウォン/12ヶ月などのサービスがある。
2.6 授業運営
今回調査対象のeラーニングサービスは、すべて「オンデマンド講義」+「オンラインコミュニティ(講義後の掲示板等によるディスカッション)」形式である。
オンラインコミュニティでは、生徒からの質問についての回答を24時間以内に実施することを義務付けている事業者が多く、生徒へのレスポンスの早さも特長である。
また、新規入会会員は、学習の進め方やノウハウなどについて先輩会員からオンラインコミュニティ上でアドバイスをもらうなど、生徒間のコミュニケーションも活発であることがわかる。
オンライン講義のポイントとして、①カメラの前でオーバーアクションしない、②板書は文字を大きく書く、③活舌よく話す、④図形などは板書しない(印刷教材を貼り付ける)、⑤授業準備の徹底(講義の取り直しを避けるため)、⑥自身のオンライン講義や掲示板の発言をチェックし、生徒の満足度アップを図るといった基準が規定されている。
2.7 講義収録
ライブ感を重視したオンデマンド講義を収録するため、授業の進度に合わせて各回を順次収録している。1 講義(30 分の講義)は、開始から終了まで一度に収録するため、長時間映像の編集作業などが発生しないのが一般的である。
また、一般の講師は一日に2 講義~3 講義を収録するのに比べ、人気講師は5 講義~6 講義を収録するなど、過密スケジュールの改善が課題である。
2.8 生徒とのコミュニケーション
生徒とのコミュニケーションの多くは、オンラインコミュニケーションである。講師毎にコミュニティ(掲示板)が運営されており、講師は毎日、生徒とコミュニケーションを取っている。
また、講師とは別に担任や学習促進担当者が配置され、生徒ごとの進捗状況を管理している。これらの担当者は週に1 回程度の電話で生徒のモチベーション維持や悩み相談などに対応している。彼らは、教科を担当することはなく1 担当者あたり200 人程度の生徒を管理している。
2.9 授業評価
生徒や保護者からの授業評価にも掲示板を活用している。講師が早口で聞き取りづらい、例示
が多く本題が短すぎるなど、具体的なクレームもこの掲示板に書き込まれている。
生徒からの授業評価については、書き込みに対するポイント積算サービスなどの利用で書き込みを促進している。
2.10 著作権
1318class では1318 社が、YBMsisa.com では親会社のYBMsisa 社が講義コンテンツの著作権
を保有している。どちらの場合も講師が著作権を保有することはない。
2.11 システム
本調査対象のシステムは、各社が独自に開発したシステムを使用している。各社ともにシステム担当者を社内に雇用しサービスの安定運用(サーバダウンの回避、常時モニタリングなど)や講座企画部門へのシステム面でのアドバイスなどを行っている。
2.12 講師の採用
オフライン(塾)で人気のある講師の採用や自社オンライン講師からの紹介、新規募集などの手段で採用している。採用のポイントは①特技を持っている、②学習内容を効率的に生徒に伝えられる、③生徒にわかりやすく教える工夫をよく実施できる、などがあげられる。また、オンライン講師のためカメラテストも実施し、オフラインで人気のある講師でもカメラ前の講義の良し悪しをチェックしている。
講師の報酬はレベニューシェアが一般的で、事業者70%対講師30%が業界の標準的な水準である。特に、人気講師の報酬は高く、2,000 万ウォン/月~3,000 万ウォン/月といった高額報酬を得ている講師もいる。また、超人気講師については5 億ウォン~10 億ウォンの契約金が支払われるケースもあるほど講師採用が過熱している。
2.13 モバイルサービス
各社ともPMP(Portable Multimedia Player)サービスを提供している。利用者規模は1,000 人以下と?ないが、PC 向けオンデマンド講義と同一の講義が通学途中や外出先でも視聴できる点が評価されている。
2.14 新規入会者へのPR
口コミによる新規入会が活発である。一般的なWeb でのPR も実施しているが、新規入会者に占める口コミでの入会は30%~40%、naver 等検索サイト経由での入会は60%~70%である。
2.15 他社との優位点
有名講師を抱えている点や一般講師を積極的にPR することで人気講師を育成するなど、講師の人気度を他社との差別化要因としている事業者が多い。
また、オンラインコミュニケーションを活性化し、オンデマンド講義でありながらライブ感のある講義を配信するなど生徒と講師の双方向性を重視した授業運営でも差別化を図っている。
特にMbest では、成績上位3%向けカリキュラムや高い講師採用基準の徹底で質の高い講義を配信するなど成績上位層向けサービスに特化している例もある。
2.16 今後の展望
韓国国内でのシェア拡大を目指している。その後、各社とも日本でのビジネス展開を視野に入れており、日本国内在住の韓国人中学生向け教育サービスにとどまらず、日本人中学生向け教育サービスも検討している。日本の企業との協業で2007 年4 月より日本国内でのサービスを開始する事業者も出始めるなど、今後は日本進出が本格化するだろう。
2.17 課題
受験競争の過熱や?子化による教育投資の高額化、中高生の高いPC 利用率など、国内情勢の追い風により今後も市場の拡大は予測される。
しかし、今回の調査で明らかになった課題として人気講師への依存度の高さと市販教材利用の有償化が上げられる。
生徒の新規獲得、契約継続は人気講師に依存しており、事業拡大には更なる人気講師の確保や既存講師の人気の維持などに対する投資が必要である。また、市販教材を使用している事業者は出版社との間で有償化契約が進むなど新たなコスト増加要因を抱えている点が課題である。
3.日本との違い
3.1 ライブ感のあるオンデマンド講義
韓国では、ライブ感のあるオンデマンド講義が盛んである。講師は、オンデマンド講義であっても目の前に生徒がいるかのように講義し、講義後は電子掲示板などのオンラインコミュニティで生徒とコミュニケーションを取っている。このように講義とオンラインコミュニティの繰り返しによって講座が構成されているのである。
一方、日本ではデジタルハリウッドや八洲学園大学、情報処理推進機構(IPA)、ベネッセコーポレーションなど多くの教育事業者が授業のライブ配信(同期双方向授業)を実施している。これらの事業者はオンデマンド講義だけでは受講者の満足を得られないなどの理由によりライブ配信を実施しているが、受講者は同一時刻にPC 前に集合しなければならず、また、同時受講者数に制限のある点などの弱点がある。
今後は、韓国のようなライブ感のあるオンデマンド講義のニーズが高まってくると思われる。
3.2 オンデマンド講義を毎年リニューアル
前項のようなライブ感のあるオンデマンド講義を実現するため、基本的にすべての講座を毎年
リニューアルしている。各e ラーニングサービス事業者とも900 講座~1,00 講座(1 講座は20 講義、1 講義は30 分~40 分)を開講しているが、これらすべてをリニューアルしているのである。
日本の一般的なeラーニングでは、同一の講義を毎年使いまわすことを前提としている例が多く、3 年ほど経過すると情報の古さが目立ち始め、講義に適さなくなった講義のみを取り直すなど継ぎ接ぎの講座が提供されているケースも見られる。
3.3 講義の順次収録
毎年の講座リニューアルのため、各回の講義は授業の進度に合わせて順次収録している。これにより集中的な講義収録は行うことはなく、オンラインコミュニティと連携したライブ感のあるオンデマンド講義も実現している。
また、30 分~40 分の講義を一度に収録するため、講義時間の数倍を記録した映像を編集するといった作業を要しないことも毎年のリニューアルを可能にしている要因である。
3.4 PMP の普及
韓国では、PMP(Portable Multimedia Player)が普及している。中学生向けe ラーニングサービスでのPMP 利用率はまだ高くはないが、大学生段階では多くの学生が保有していることなどから今後の拡大が見込まれている。PC と同一の講義が視聴できることから、通学途中の電車の中などでの勉強に利用されている。
4.eラーニングサービス事業者の取り組み
4.1 株式会社Purun1318
2000年設立の小・中・高生向けオンライン教育サービス事業者で、inamu(小学生向け)、1318class(中学生向け)、1318hi(高校生向け)などのサービスを展開している。親会社は大韓教科書である。本調査では、1318class について調査を実施した。
1)サービス概要
- サービス名
- 1318class
- サービス概要
- 中学生向け「内申点UP」教育、「科学・外国語専門特殊高校進学」教育等のオンライン教育サービス
※内申点UP 教育コースがもっとも人気がある
- サービス開始
- 2000年3月より1318class サービスを開始
- 事業概要
- 1,000 講座(20講義/講座、30分/講義)
※毎年コンテンツを作り変えている
- 受講対象者
- 中学生
2)教職員体制
- 教員数
- 200人
- 職員数
- 96人
3)受講者規模
- 受講者数
- 67万人(無料登録会員、保護者会員を含む)
- 受け持ち生徒数
- 人気講師の場合、数千人の生徒を受け持つ
- 学力レベル
- 中位以上
※学習の自己管理ができる生徒がほとんどである
4)サービス価格
- 月額費用
- 5万ウォン/講座
5)授業運営
- 注意点
- 掲示板への回答は24時間以内を厳守する
- 目の前に生徒がいるかのように講義する
- 必要に応じ、生徒の名前を呼ぶ(掲示板で毎日コミュニケーションがあるのでできる)
- メモを取る時間
- 講義中は生徒のメモ取り時間は考慮しない(生徒が自身で一時停止するため)
- 学習の進め方
- 新規会員は先輩会員から学習の進め方のアドバイスをもらっている
- 講義のポイント
- ①カメラの前でオーバーアクションしない
- ②板書は文字を大きく書く
- ③活舌よく話す
- ④図形などは板書しない(印刷教材を貼り付ける)
- ⑤授業準備の徹底(30分講義の取り直しを避けるため)
- ⑥自身のオンライン講義や掲示板の発言をチェックし、生徒の満足度UPを図る
- 親近感
- 1318社では生徒が講師に親近感を持てるよう、スーツでの講義を禁止している
※人気講師は講師キャラクタプリントポロシャツなどを着用
6)講義収録
- 進行方法
- 学習進度に合わせて各回を撮影する
- 平均講義数
- 一般講師:2~3講義/日、人気講師:5~6講義/日
- 1講義の収録
- 1講義(30分)は開始から終了まで取り続ける(長時間の撮影を編集することはない)
7)生徒とのコミュニケーション
- 電子掲示板
- 講師毎のコミュニティ(掲示板)が運営されている
- 講師は毎日コミュニティに参加している
- 進捗管理
- 1週間に1回、生徒へ一斉にSMSを送信し学習を促している
- 生徒への対応
- 学習促進担当者から生徒へ電話で学習を促している
※学習促進担当者1人で生徒を200人管理
- 質問対応
- 講師は生徒からの掲示板への書き込みに対し、24時間以内に回答することを義務付けている(1日1生徒5質問まで)
8)授業評価
- 生徒による評価
- 講座ごとに生徒が評価を入力するとマイルがたまるサービスがある
9)講座の質の統一
- 質の統一方法
- 学習目標、学習量、科目の特長を明文化し、教師と共有する
10)スキル移転
- 人気講師の移転
- 科目別の講師勉強会を開催
- 一般講師は人気講師のオンライン講義を視聴し自己学習
※講師同士が協力し合って、授業の質向上を図っている
11)著作権
- 著作権の保有
- 1318社が保有する
12)システム
- システム開発
- 自社独自開発
- 開発要員
- 社内雇用
- VOD品質
- ビットレート:800kbps(PC用)、400kbps(PMP用)
- 部門の役割
- サービスの安定運用(サーバダウンの回避、常時モニタリング)
- コンテンツ企画部門の企画をシステム的にチェック
13)講師の採用
- 採用方法
- オフライン(塾)で人気の講師と契約または新規採用
- 選抜方法
- カメラテスト(オフラインで人気の講師もカメラ前の講義は不得意な講師もいるため)
- 採用費用
- 超人気講師の場合、5億~10億ウォン
- 講師費用
- 中学生向けサービスの講師は固定給
- (高校生向けサービスの講師とはレベニューシェア契約、1318社70%:講師30%、業界の一般水準である)
14)モバイルサービス
- モバイルサービス
- 2003年からPDAサービス、2005年からPMPサービス
- サービス概要
- PC向け動画と同一のコンテンツをPDA、PMPで視聴する
※利用者は1,000人程度
15)新規入会者へのPR
- 媒体
- コミュニティ(掲示板)での口コミが多い
16)他社との優位点
・1318社が講師をPRすることで講師の人気上昇⇒新規会員増加を図っている点が優位である
・生徒とのコミュニケーションが活発でオンデマンド講義でありながらライブ感のある講義を実現している
・生徒が講師に親近感を持てるよう、講師はスーツを着用しない、頻繁にイベントを開催するなどの施策がある
17)今後の展望
-
韓国国内でのシェア拡大を目指す。
その後、海外展開を検討、日本向けには日本在住の韓国人中学生向け教育サービスを検討中。
4.2 メガスタディ株式会社
2000年設立の中・高生向けオンライン教育サービス事業者で、Mbest(中学生向け)、megastudy(高校生向け)などのサービスを展開している。本調査では、Mbestについて調査を実施した。
1)サービス概要
- サービス名
- Mbest
- サービス概要
-
成績上位3%を目指す中学生向けオンライン教育、中学生向け「内申点UP」教育等のオンライン教育サービス
※有名講師のeラーニングで注目を得た
- サービス開始
- 2003年5月よりMbestサービスを開始
- 講座数
-
900講座(20講義/講座、40分/講義)
毎年コンテンツを作り変えている(1318社も同様である)
- 受講対象者
- 中学生
2)教職員体制
- 教員数
-
100人(男性4:女性6)
※女性比率が高い
3)受講者像
- 学力レベル
- 成績上位3%を目指す生徒
4)サービス価格
- 代表商品
- 76万ウォン/6ヶ月、128万ウォン/12ヶ月
5)授業運営
- 生徒の参加
- テストのノウハウやMbestでの学習ノウハウなど、生徒のノウハウを登録し、他の生徒が参考になったかどうかを投票、ランキングするサービスがある
- 教材
- 授業には市販教材を利用している
- 学習の進め方
- 新規会員は先輩会員から学習の進め方のアドバイスをもらっている
※Mbestオリジナル教材ではない
- 市販教材の権利
- 出版社と無償利用契約を締結、今後は有償化の方向である
6)生徒とのコミュニケーション
- 電子掲示板
- 講師毎のコミュニティ(掲示板)が運営されている
- 担任制
- 1:1の担任制
- 週に1~2回、担任と生徒は電話で対話、その他のコミュニケーションはシステムを利用
- 対応生徒数
- 担任1人で生徒を200人管理
※担任は教科を持たない
- 質問対応
- 講師は生徒からの掲示板への書き込みに対し、24時間以内に回答することを義務付けている(質問数の制限なし)
※人気講師は、受け持ち生徒数が多いので質問回答はTAが担当している
7)授業評価
- 生徒による評価
- 学習支援センター(掲示板)へ生徒、保護者からの意見を書き込む
- クレーム
- 講師が早口で聞きづらい、例示が長く本題が短いなど
8)講師の採用
- 採用方法
- 既存のオンライン講師からの紹介や業界内からの紹介が多い
- 人気講師の見分方
- ①特技を持っている
- ②学習内容を効率的に生徒に伝えられる
- ③生徒にわかりやすく教える工夫をよく実施している
- 講師への指導
- 学習支援センターへのクレームなども考慮して講師へ人気向上のためのコンサルをする
- 講師費用
- 人気講師の報酬は2,000万ウォン/月~3,000万ウォン/月
- (レベニューシェア契約、Mbest80%:講師20%)
9)モバイルサービス
- モバイルサービス
- 2007年からPMPサービス
- サービス概要
- PC向け動画と同一のコンテンツをPMPで視聴する
※現在のところ、中学生がPMPを使用する率は低い
10)新規入会者へのPR
- 媒体
- 会員拡大PRは特にしていない。質の良いコンテンツを提供しているので利用率の高い会員が継続している。
※口コミでの新規入会は30%~40%、naver等検索サイト経由での新規入会は60%~70%
11)他社との優位点
・有名講師を抱えている
・成績上位者(3%)向けカリキュラム
・担任制
・SNSで生徒と活発にコミュニケーション
・中学卒業後は高校生向けオンライン教育大手のmegastudyへ継続できる
・すべての講師で生徒は高い満足を得られる(他社は講師にばらつきあり)
・講師採用基準が高く質が高い
12)今後の展望
日本向けビジネスに関心あり、日本での本格的なサービスを検討中
4.2 株式会社YBMsisa.com
2000年設立の幼児から社会人までを対象とした外国語オンライン教育サービス事業者で、e4u(社会人向け)、YBMTMK(小中学生向け)、YBMkids(幼児向け)、CATTOEIC(TOEICテスティングサービス、韓国の大学の50%が採用、07年4月より日本の20大学が採用)などのサービスを展開している。親会社は語学教材出版社のYBMsisaである。
1)サービス概要
- サービス開始
- 2000年6月よりサービスを開始
- 受講対象者
- 幼児から社会人まで
※韓国では小学校2年生から英語が必修のため
2)受講者規模
- 受講者数
- 350万人(無料登録会員を含む)
- 利用者数
- 12,000人/月(有料で利用している会員数)
3)授業運営
- 講義のポイント
- 優れたオンライン講師は、オンデマンド講義であってもライブ感のあるトークができる
- (例:今のことは大事なのでメモして、アンダーラインを引いてなど)
4)生徒とのコミュニケーション
- 生徒への対応
- 進捗チェック専門部門がチェックし、携帯電話へのメールで学習を促進している
5)著作権
- 著作権の保有
- 親会社のYBMsisa社(出版社)が保有する
6)講師の採用
- 講師の育成
- 見た目をよくするなどのアドバイスを行っている
※オンライン講師のカリスマを育成している
7)モバイルサービス
- モバイルサービス
- PMPサービス
- サービス概要
- PC向け動画と同一のコンテンツをPMPで視聴する
※オンライン講座費用+α(オンライン講義費用の6~7割)の追加費用が必要
8)他社との優位点
- 親会社の教育コンテンツが大量にあるため、豊富なオンライン教材を提供できる
- 特にTOEICに強い
- グループ会社が多く、出版やオフライン教室、外国語講師も充実している
9)今後の展望
日本の中学生への英語教育展開を狙っている(日本の教育企業との協業を希望)
※紙ベースの英語試験を提供し全国ランキングを算出するビジネス
5.まとめ
韓国のeラーニングは、オンデマンド講義が主流である。録画映像を数多くの生徒へ配信することでビジネスが成立している。しかし、一方的に講義を配信しているだけではない。オンラインコミュニティ等のWebサービスを利用したコミュニティで、オンデマンドの弱点である一方通行感を補っているのである。また、オンデマンド講義もオンラインコミュニティとの連携を前提としているため、ライブ感のある進行を実現している。
このようなことから、韓国のeラーニングは「運営方針」が成功のポイントであるということがわかる。ライブ感のあるオンデマンド講義を配信し、講義と連携したオンラインコミュニティ等でのコミュニケーションが活発に行われているのが韓国eラーニングの成功要因である。
韓国eラーニング 成功する運営方針のポイント
- ◆ライブ感
- オンデマンド講義であってもライブ感を重視している
- (講義中に、オンラインコミュニティでのディスカッションを促す、オンラインコミュニティでの話題を話すなど)
- ◆コミュニティ
- 講師毎のオンラインコミュニティで生徒と講師は毎日コミュニケーションしている
- (オンデマンド講義とオンラインコミュニティを一体で運営している)
- ◆人気講師
- 塾等のオフラインで人気の講師をオンラインで拡販している
- (契約金10億ウォン、レベニューシェア7:3)