研修認定薬剤師制度インターネット研修調査報告書

2007年12月発行


1.調査概要

1.1 調査の目的

厚生労働省によると、薬剤師の人数は2004 年現在で241,369 名との調査結果が公表されてい
る。(厚生労働省大臣官房統計情報部「平成16 年医師・歯科医師・薬剤師調査」)
一方、財団法人日本薬剤師研修センターによると、研修認定薬剤師の人数は2007 年9 月30
日現在で18,528 名が認定されている。(日本薬剤師研修センター

研修認定薬剤師とは、「研修認定薬剤師制度」に基づき1 認定期間(新規認定の場合4 年以内、更新認定の場合3 年毎)に所定の単位を取得したと認定された薬剤師のことであり、薬剤師総数の8%程度が認定されている。

このような情勢の下、これまで集合研修に参加できないために研修認定薬剤師として認定され
ることのなかった薬剤師へ単位取得の機会を提供するため、e ラーニングによる研修実施機関が
2002 年に開設された。

このような状況を踏まえ、本調査では株式会社テイク・グッド・ケアが提供している、インターネッ
ト薬剤師生涯教育講座「ファーマストリーム」について調査を行うとともに、本年12 月までの運営
実態について調査を実施したものである。


1.2 調査概要

本調査の調査対象、調査期間、調査方法は以下のとおりである。

(1) 調査対象 : インターネット薬剤師生涯教育講座「ファーマストリーム」
(2) 調査期間 : 2007年11月1日~2007年12月25日
(3) 調査方法 : ヒアリング、データ分析


1.3 調査項目

以下の項目について調査を実施した。

(1) 企業情報
(2) 事業概要
(3) 講師陣
(4) 受講者規模
(5) 受講者の利用状況
(6) 受講料
(7) コンテンツ制作と著作権
(8) システム
(9) 他社との優位点
(10) 今後の展望

2.調査結果

2.1 企業情報

今回、調査を実施したe ラーニング事業を運営する組織は次のとおりである。

名称
株式会社テイク・グッド・ケア
創立
1997年12月
住所
東京都渋谷区富ヶ谷1-41-7
事業概要
医療業界向けインターネットシステム開発・販売
医療業界向けインターネットシステムコンサルテーション

2.2 事業概要

インターネット薬剤師生涯教育講座「ファーマストリーム」は、財団法人日本薬剤師研修センタ
ーが実施している研修認定薬剤師制度のインターネット研修実施機関である。

2002 年6 月より同制度においてインターネット研修での単位取得が可能となったため、2002 年
10 月よりサービスが開始された。
ファーマストリームでは、毎月2~4 講義が開講されるなど、最新の講義を受講することが可能である。

1 講義は、45 分(0.5 単位)もしくは90 分(1単位)のオンデマンド授業を受講し、受講後に出題される確認テストを実施しすることで修了する。講義修了後は、システム上で受講単位を申請する。
また、受講者へは申請された単位数に応じて毎月1回、受講シールが郵送されるので、財団法
人日本薬剤師研修センターが発行する「薬剤師研修手帳」へ添付するものである。

認定薬剤師証と薬剤師研修手帳(出展:財団法人日本薬剤師研修センターHP)

認定薬剤師証と薬剤師研修手帳(出展:財団法人日本薬剤師研修センターHP)
認定薬剤師証と薬剤師研修手帳(出展:財団法人日本薬剤師研修センターHP)
サービス名
ファーマストリーム
サービス開始
2002年10月10日
講座数
134 講義(基礎編56 講義、実務編78 講義)
<基礎編>
薬物相互作用シリーズ、薬物動態学シリーズ、物質の化学と薬理作用、症候のメカニズムと疾患、薬剤師が必要とする免疫の知識、臨床統計学シリーズ、薬物代謝シリーズ、病態生理シリーズ、薬物治療の個別化
<実務編>
倫理、医薬品情報シリーズ、調剤シリーズ、輸液シリーズ、一般用医薬品(総論)、一般用医薬品(各論)、漢方薬シリーズ、トピックス、新薬シリーズ、ジェネリック医薬品、そこが知りたい新薬QA、医薬品添付文書シリーズ
受講対象者
財団法人日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師として新規認定を目指す薬剤師および更新認定を目指す研修認定薬剤師
認定の条件
新規認定は、4 年以内に40 単位以上を取得し、認定手続きを行う。
更新認定は、3 年毎に30 単位以上を取得し、更新手続きを行う。

ファーマストリームトップ画面と受講画面

ファーマストリームトップ画面と受講画面
ファーマストリームトップ画面と受講画面

2.3 講師陣

大学の薬学部および医学部の教授や医師・薬剤師等の専門家が講師を務めている。
サービスの企画・運営ならびに教育コンテンツの企画・開発を行う、「薬剤師教育研究企画委員
会(株式会社テイク・グッド・ケア内に設立された任意団体)」のメンバーは、次のとおりである。

委員長
粟津荘司(日本薬科大学教授 東京薬科大学名誉教授)
副委員長
福室憲治(東京薬学情報研究所所長)
委員(50 音順)
網岡克雄(金城学院大学助教授)
越前宏俊(明治薬科大学薬物治療学研究室教授)
武政文彦(東和薬局 北里大学薬学部非常勤講師)
林正弘(東京薬科大学薬学部薬物動態制御学教授)
原博(東京薬科大学客員教授)
柳川忠二(東邦大学薬学部臨床薬学研修センター教授)
村山 純一郎(昭和大学病院薬剤部長 昭和大学薬学部教授)
山田安彦(東京薬科大学薬学部臨床薬効解析学教授)

2.4 受講者規模

最新の統計では、毎年約10,000 名の受講者が入会している。受講者の所在は、トップの東京
都が17%、上位5 都道府県で48%を占めている。平均年齢は39.1 歳で、最高齢は85 歳である。

入会数
約10,000 名/年
平均年齢
39.1 歳
男女比
男性35% : 女性65%
都道府県別受講者の比率
東京都 17%
埼玉県 9%
大阪府 8%
神奈川県7%
兵庫県 7%
千葉県 5%
北海道 5%
新潟県 5%
福岡県 3%
岐阜県 3%
その他 32%

2.5 受講者の利用状況

システムの利用状況を分析すると、時間帯別には、22 時台から23 時台が受講のピークであり、
曜日別には日曜日の利用が多く、月曜日から土曜日の利用状況は同程度であることが分かる。
特に、日曜日の利用が多い理由として、受講者の多くは薬局等に勤務する薬剤師であるため、休
日に受講していると考えられる。

また、日別のアクセス数を分析すると、月末の利用が多いことが分かる。これは、受講した講義
の単位は当月に申請しなければならないため、講義の受講と単位申請が集中するためである。

利用時間帯利用時間帯
日別アクセス数日別アクセス数

2.6 受講料

料金プランは、スタンダードプランとスポットプランの2 つがある。

スタンダードプランは、全ての講義をいつでも受講できるプランである。年間受講料のみで全て
の講義を受講できるため様々な分野を学習できるメリットがある。
スポットプランは、講義ごとに受講料を支払いながら受講するプランである。1 単位あたりの受
講料も購入しやすい金額設定のため、興味のある講義だけを受講したい場合にメリットがある。
各プランでの受講料は次のとおりである。

料金プラン
スタンダードプラン スポットプラン
入会費 5,250
受講料金 1 単位受講料金 630
0.5 単位受講料金 630
受講・単位申請期限 ID 有効期限中 30 日間

2.7 コンテンツ制作と著作権

講義コンテンツは動画+スライド形式、テスト問題は択一形式である。パワーポイントスライドの
制作、講義映像収録、オーサリングを経て毎月2~4 講義が新規に追加配信されている。制作期
間は1 講義あたり1 ヶ月程度である。

また、コンテンツの著作権は全て、運営事業者であるテイク・グッド・ケアが保有している。

講義コンテンツ形式
動画+スライド
テスト問題形式
択一形式
オーサリング方式
動画、スライドのデスクトップ同期オーサリング
著作権保有者
全てテイク・グッド・ケアが保有

受講画面とテスト問題画面

受講画面とテスト問題画面
フ受講画面とテスト問題画面

2.8 システム

システムの開発、保守、運営はすべて協力会社へ外部委託している。導入実績が豊富な市販
のeラーニングパッケージシステムを本サービス専用に画面、機能等をカスタマイズしている

機能面の特長は、受講料の決済に電子マネー「Edy」を利用している点である。スポットプランの
場合、0.5単位の受講料は630円と小額のため、請求・振込み等の決済方式に比べ利便性が高く
また、受講者の振り込み手数料なども不要である点が評価されている。

システム開発
市販のe ラーニングパッケージシステムをカスタマイズ
開発要員
協力会社へ外部委託
保守・運営
協力会社へ外部委託
システムの特長
電子マネー「Edy」による受講料決済機能
ファーマストリームカード(非接触IC カード)とリーダー/ライターファーマストリームカード(非接触IC カード)とリーダー/ライター

2.9 他社との優位点

財団法人日本薬剤師研修センターが実施している研修認定薬剤師制度のインターネット研修
実施機関として、長期の実績があり、講義数や受講者数ともに最大規模の実績を有している。特
に、2002 年10 月のサービス開始以来、既に5 年以上の運営実績があるため、安定したサービス
を提供している点は同業他社に対して優位な点である。
また、電子マネー「Edy」の導入により、1 講義630 円という小額料金体系を実現している点も、
受講者の利便性の上で優位である。


2.10 今後の展望

今後は、薬局チェーンや医薬品卸会社等へサービスのOEM 提供を検討している。
OEM 提供先の企業では、これまでの講義受講に加え、企業独自の研修コンテンツを配信することができるため、社員研修用のe ラーニングインフラとしても活用することができる利点がある。

また、現在認定されている「研修認定薬剤師」は、薬剤師総数の約8%程度に留まることから、今
後、受講者数は急速に拡大するものと思われる。

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