アルバイトの採用難や人件費の高騰、外国人スタッフの教育といった課題が山積する外食産業。店舗スタッフの教育をいかに行うかは、各社共通の悩みといえるでしょう。
そんななか、牛めしの「松屋」などを展開する松屋フーズでは今、新たなシステムを導入されようとしています。キーワードは「店舗教育の見える化」と「教育の徹底を仕組み化」。一体どのような内容なのか、早速お話を伺いました。
- 株式会社松屋フーズ
- 採用教育部 採用教育グループ
- チーフマネジャー 冨澤秀樹様
お客様のニーズ
- 店舗のアルバイト教育の進捗管理を可視化したい。
- 教育の徹底力を上げたい。
導入前の課題
- 紙のテキスト(手順書)で店舗のアルバイト教育を実施・管理していたが、その使用が徹底されていなかった。
- 紙のテキストは更新性が悪く、全国配送の手間もあり、コストが高くついていた。
- 全店舗の教育進捗をデータで記録・可視化し、徹底を促す仕組みをeラーニングシステムで実現したい。
導入後の成果
- 本部にいながら全店舗の教育進捗をチェックし、指導できる仕組みをeラーニングシステムで構築。
- 一人ひとりの教育進捗をデータで細かく記録すると共に、全店舗の教育進捗がひと目でわかる「店舗別集計機能」を開発、導入。〝教育の徹底“の仕組み化を実現。
- 今後、優良店舗の教育ノウハウを他店舗に展開することで、運営力の向上と均一化を目指す。
- 紙テキストをデータ化することで頻繁にあるマニュアルやルールの改定にも素早く対応でき、コストカットにもつながっている。
そもそも以前の教育にどのような問題があったのでしょうか。
アルバイト教育の進捗管理や徹底が思うようにできていませんでした。紙のテキスト(手順書)を使って教育を実施していたのですが、十分にテキストが活用されておらず、OJTの見極めが不徹底でありました。
テキストはどんな内容でしたか?
項目別に「自分でできる」「空いている時間帯/ピークの時間帯にできる」「確認」などのチェック欄があり、段階的にレベルアップしていける内容になっていました。入社初期は使用していますが、店舗責任者が兼任している場合もありチェックが不十分となっておりました。
一つひとつの教育ツールとしては完成されたものがあったが、それをいかに現場でやり切ってもらうか、徹底してもらうかが課題だったわけですね。どのように解決の糸口をみつけられたのでしょうか?
最初はeラーニングを使うという発想はまったくありませんでした。Excelをクラウド上に置いて教育進捗を一元管理するという案も出ましたが、全員の教育進捗を手入力するのは不可能です。ではこれをなにかシステム化できないか?という話になったとき、eラーニングシステムが使えるのではと意見が出て、当時からお付き合いのあったデジタル・ナレッジ社の営業担当の方に相談したのが最初です。以来、9ヶ月かけてデジタル・ナレッジ社と我々とで一緒に作り上げてきました。
もっとも注力された点は?
なんといっても「店舗別集計機能」です。
全国の店舗でどのくらい教育が進んでいるかを、我々管理者がオンラインでチェックできる仕組みです。一人ひとりの教育進捗はもちろん、店舗やエリアごとの集計値もすべて“見える化”しました。
店舗別集計機能。店舗やエリア毎の集計値もすべて可視化。
この機能でどんなことが可能になりますか?
東京の本部にいながら各店の教育進捗を確認し、「Aさんはこの職位なのに△△ができていない」「△△の項目をちゃんと教育してください」といった具合に指導ができます。すべての項目を完了済みでも店長が教育に一度も関わっていなかったり、見極めをしないまま確認印を押してしまったりという場合も、本部でチェックし現場指導することができます。この流れを実現できたのは、大きかったです。
教育の徹底を、システムを使って仕組み化されたわけですね。教育の徹底という意味では、同様の悩みを抱えている組織も多いかと思いますが?
外部研修で他社さんの話を聞く機会がありますが、やはり皆さん悩まれていました。外食や小売の教育マニュアルって各社各様にあります。しかしどこか”徹底出来ていない面”があるのではないでしょうか。多店舗経営になれば尚更です。どんな素晴らしいアイデアも、どんなにすぐれた教育マニュアルも、徹底させなければ意味がありません。
eラーニングシステムを活用されたのも新しいケースだと思います。
何万人といる従業員に徹底するとなるとマンパワーでは難しく、ある種システマチックなものが必要でした。弊社でもここを何とか解決したいと試行錯誤し、やっと「eラーニングを活用した店舗別集計機能」に行き着くことができました。これこそが外食や小売が抱える教育の課題に一石投じることができる仕組みではないかと期待しています。
店舗側、アルバイト側にはどのようなメリットがありますか?
アルバイトスタッフは、自分が次に何を覚えなければならないのか、何をすれば時給が上がるのかがわかりますし、教える側のスタッフも何を教えなければならないのかが明確になります。店長は自分のお店と他のお店との比較もできるようになります。
すでに先行仕様にて運用がスタートしていますが、何か変化はありましたか?
紙のテキストはすべて撤廃し電子テキストに切り替えました。実は、弊社のもうひとつの課題として、マニュアルやルールの改定が頻繁でテキストのアップデートが追い付かないという問題がありました。それから、紙のコストも相当高いですよね? 電子テキスト化によりPCひとつで改定が素早くでき、コストカットにもつながっています。
テキストはすべてデータ化。コストカットにもつながっている。
まもなく本格的な運用スタートとなりますが、どのような効果を見込まれていますか?
地域ごとに教育の傾向が似通ってくるのではと考えています。たとえば、接客が弱いとか衛生面について不安があるとかです。傾向が見えてきたら、次はその分野に強い店の教育をそっくりそのまま持ってくることが可能ではないかと。
お客様はある店舗で良いサービスを受ければそれがスタンダードになります。そのご期待に応えるためにも、データに基づき、優良店舗の教育ノウハウを他店舗展開することで、全店の運営力を高いレベルで均一化できればと期待しています。
松屋フーズ様が考えるeラーニングのメリットとは何でしょうか。
教育の記録が取れるところです。
それを活用すれば、ひとつは先ほどお話しした教育の徹底化ができます。
もうひとつは、今、外食や小売でも人件費が非常に上がっていて、かつ離職率の高さが問題になっています。離職されるとそれまで教育した時間が無駄になってしまいます。重要なのは、できる部分とまだできていない部分を振り分け、後者をきちんと教育すること。アルバイトを放置しないで適切な知識を付けてあげることで教育の生産性を上げると共に、彼らのモチベーションも高まり、離職率を下げることにもつながるのではないでしょうか。
eラーニングはアルバイトスタッフのみが対象ですか?
全従業員が対象です。トラブル対応など、社員向けの特殊事例教育にも使用しています。店舗としては牛めしの「松屋」、とんかつの「松のや」、中華食堂の「松軒」で導入済みで他業態にも展開予定です。
いま、弊社では外国人のアルバイトスタッフが急増しています。一番多いのはベトナム人、次いで中国人です。それにあわせてeラーニングも日本語、英語、中国語、ベトナム語と多言語化しています。
外国人アルバイトの急増でなにか変化はありましたか?
よく言われることですが、外国人と日本人では価値観がまったく違います。日本は「察する文化」ですが、外国では「伝える文化」、つまりはっきり言わないと伝わりません。その為、今まで日本人同士があうんの呼吸でやってこれたことも、これからは明文化していかなければなりません。この観点からも、新しいeラーニングで実現できた教育の明確化、明文化、それをチェックできる仕組みが非常に有効だと考えています。
現在ご興味をお持ちの教育に関するテーマなどがあれば、ぜひお聞かせください。
ここまでお話ししたことと相反するような内容ですが……、“教育不要なもの”ができたらという思いがあります。
といいますのも、いま、日本語をある程度話せる外国人留学生は非常に少なく、日本人を採用するよりも大変な状況です。一方で、あまり日本語を話せない留学生は働き口を見つけられず困っています。そういった人達に対し、「松屋に入れば言葉の心配なくアルバイトができる」といった仕組みを作れないかと。具体的には、自動翻訳機や何らかの形でコミュニケーションを取れるものでしょうか。言葉の壁をなくすことができれば教育の幅も広がりますし、外食産業で問題となっている人件費の高騰などの問題も解決の糸口が見えてくるかもしれません。
「松屋eラーニングシステム」はこれからどのように発展していきそうですか? 改めて今後の展望をお聞かせください。
現時点では教育項目とチェック欄のみ紐づいている形ですが、そこから関連マニュアルや映像教材などに直接ジャンプできるよう、すべての教育ツールを連動させていきたいと思っています。すでにマニュアルも電子化していますから、あとは組み込むだけ。完成すれば結構いいものになると思いますよ。
今回の新しい仕組みは、「松屋eラーニングシステム」のスタート地点になったといってもいいくらい。ここからが本当のスタートだと思っています。使っていく上で、さらにやりたいことが広がってくると思いますが、そのときはまた、営業担当の方にに相談させていただきますね。
ご利用いただいた製品・サービス
お客様のサイト
お客様情報
会社名 | 株式会社 松屋フーズ |
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創業 | 1966年(昭和41年)6月 |
設立 | 1980年(昭和55年)1月16日 |
本社 | 東京都武蔵野市中町1-14-5 |