2020年1月23日、新年恒例の特別イベント『デジタル・ナレッジ カンファレンス2020新春』を秋葉原UDXシアターにて開催いたしました。ご来場いただきました皆様、誠にありがとうございました。
今回のカンファレンスでは「アダプティブラーニング」「オープンバッジ」「VR」を三大テーマに掲げ、デジタル・ナレッジが業務提携を通じ、今後取り組んでいくさまざまなソリューションについてもご紹介致しました。
■アダプティブラーニング
デジタル・ナレッジは2020年1月、アダプティブラーニングの先駆企業であり世界中でシェアを獲得している米国Knewton社と業務提携し、アダプティブラーニングソリューションを提供していくこととなりました。
~すべての学習者に最適な学びを。アダプティブラーニングソリューション提供開始~
詳細:https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/21186/
カンファレンスではKnewton社の日本担当ディレクターである本間様にご登壇いただき、Knewtonのアダプティブエンジンの仕組みを詳しく解説頂くとともに、実際の導入事例もご紹介しました。
Knewton社の日本担当ディレクター、本間様
●そもそも「アダプティブラーニング」とは?
学習者一人ひとりの学習進行度や理解度に応じて、学習内容や学習レベルを調整して提供する「アダプティブラーニング」。
アダプティブラーニングというと、「勝手に問題を出してくれるなら、将来的に先生の必要性はなくなっていくのでは」などと言われがちだが、決してそうではない。
・学習者が自律的に取り組めるようなコースを設計できているか
・現場の先生やほかの学習者とのやり取り(相互作用)の中で学べるか
・コンテンツ自体が楽しく学べるものになっているか
・テクノロジーを入れること自体が目的になっていないか
こうした視点が重要であり、世界的に求められるアダプティブラーニングの在り方だとKnewton社では位置付けている。
代表的なアダプティブ・モデルのうち、Knewton社が採用するのは「リアルタイム解析型」。
学習単元単位で関係性を設定できる。学習コンテンツの追加・改訂が容易というメリットも。
●日本の教育市場にフィットするKnewtonのアダプティブラーニング
Knewton社が提供するアダプティブエンジンの特徴とは?
1つめのポイントとしては、学習上の目的地点を設定できる点が挙げられる。
学習者(または指導者)が主体となってゴール(目標)を設定し、達成するまでアダプティブラーニングを行うことができる。目的に対する達成度合いはリアルタイムに判断され、達成するとゴール到達、未達成ならどんどんアダプティブが続く。ゴールをクリアしたら次の目的を学習者が選ぶこともできるし、指導者が何らかのアサインを行うことも可能だ。
すなわち、ただ言われるがまま問題を解くのではなく、それぞれの学習者(または指導者)の「今、これに取り組みたい」「学習計画上、これが必要」といった目的を、アダプティブラーニング上に反映して使っていくことが可能となる。主体的・自律的な学びを支える上で重要なポイントだ。
2つめのポイントは、採用するパートナー企業・学校毎にカスタマイズされたアダプティブラーニングを提供できる点だ。
アダプティブラーニングサービスを提供している会社はたくさんあるが、コンテンツとシステムの一体型が多く、コンテンツや中身を自由に設計できない。一方、Knewton社はプラットフォーム型のため、コンテンツの中身は問わない。内容を細かくカスタマイズして作ることが可能な上、学習データや教材に関する分析データなどもパートナー様が保有し、継続的に活用できる。
学習者向けの「レコメンデーション」、指導者向けの「ラーニング・アナリティクス」、
教材開発元向けの「コンテンツ・インサイト」から成るKnewtonのアダプティブラーニング。
それぞれ、最適な学習コンテンツの提示、学習進捗管理や習熟度分析、コンテンツ分析レポートなどを提供する。
たとえば、アナリティクスの仕組みとしては、パートナー様のプロダクトの実測データと、Knewtonエンジンの解析データを掛け合わせて様々な分析結果を提供できる。学習者一人ひとりの理解度だけでなく、個々のコンテンツがどのように学習目標の習熟に寄与したか、なども判別する。パートナー様と伴走し教材の見直し、運用の改善も実施可能だ。
これまでKnewton 社ではAPIでアダプティブラーニングを提供してきた。今回、デジタル・ナレッジのLMSと連携することで、さらに多様な学習体験に対応可能となる。とくに日本の教育市場は事業者、指導者によってその教育理念、カリキュラムは多種多様、独自のノウハウをお持ちのケースも多い。そういった部分を含めカスタム開発・提供可能なアダプティブラーニングサービスが、Knewtonとデジタル・ナレッジのタッグで提供可能となった。
●アダプティブラーニング導入事例 ~英会話イーオンの「AI Study Design Grammar」とは~
カンファレンスでは、Knewton×デジタル・ナレッジが提供するアダプティブラーニングの実際の導入事例もお披露目された。英会話教室を運営されている株式会社イーオンの新サービス「AI Study Design Grammar」がそれだ。詳細を同社の箱田様に解説頂いた。
株式会社イーオン 箱田様
「AI Study Design Grammar」は、課題のある文法項目を重点的に提示してくれる英文法のアダプティブ自学教材。
学習者がつまずいた文法項目を AI がアルゴリズムにしたがって繰り返し出題することで、学習者ごとの苦手項目を集中学習できる。問題を解けば解くほどデータが蓄積され、自分に合ったものが出題されるようになるため、学習者にとっては、学習分野が多岐にわたる英文法の学習を無駄なく、効率よく学ぶことが可能となる。
英文法のアダプティブ自学教材「AI Study Design Grammar」
一方、教師側もこの「AI Study Design Grammar」のデータから受講者の苦手分野を瞬時に把握できるようになり、適切な声かけやつまずいた箇所の学習フォローなどが行えるようになったという。リアルな教室でのレッスンと、オンラインでの自学学習のハイブリッド化を効果的に推進できる点も大きなメリットだ。
●なぜアダプティブラーニングを導入したか?開発裏話と今後の展望
「AI Study Design Grammar」の開発にあたっては、まずすべての文法項目を180に分類し、合計6,000題を作問。生徒が問題を解くと、AIが180分類の中から不得意項目を判断し、学習者に自動で結果を提供する仕組みだ。効果的な学習を促すため、アダプティブラーニングエンジンにはイーオン独自の学習指導ノウハウが組み込まれている。
今回開発された「AI Study Design Grammar」は、イーオンが進めるEdTechを推進するプロジェクト「イーオン デジタルトランスフォーメーションAEON DX」の一環である。
そもそも、アダプティブラーニングを導入した背景には、教室のレッスンは会話練習がメインであり、文法などの知識学習は自学に頼っているという現状がある。ところが、知識レベルや苦手分野は学習者によって異なり、かつ社会人の生徒さんが多いため、自学時間の確保が難しい学習者が多いという課題があった。そこで、イーオンが目指す英会話力向上の土台ともいうべき「文法知識」を効率的に伸ばす仕組みとして、「AI Study Design Grammar」が開発された。
とはいえ、生徒の基礎学習をAIに丸投げしているわけではない。
ITが学習者一人ひとりへの課題単元の自動アサイン、学習時間・学習履歴管理などを行う一方で、教師側は「AI Study Design Grammar」の学習データを逐一モニターし、教室レッスン時の声かけやつまずいた単元の学習サポート、リアルな教室レッスンとの融合、さらには学習比重のこまかい調整なども行っている。
すべてをデジタル化するのではなく、人とITが分業し、それぞれが得意なことを高い品質でていねいに実施する。これがイーオンの考えるデジタルトランスフォーメーションの在り方である。
「AI Study Design Grammar」におけるデジタルトランスフォーメーション
本サービスは試験運用を経て2020年4月1日より提供開始となる。今後は、学習データや成果等が蓄積されることで、学習効率の最大化やコンテンツ追加、データに基づく新コースやカリキュラム作成などへの活用が期待されている。
デジタル・ナレッジでは、お客様の目的や課題に合わせてお選びいただけるよう、「ナレッジグラフ評価型(大規模向け)」と「系統トレース型(小規模向け)」の2つのアダプティブラーニングソリューションをご用意しました。
カンファレンスでご紹介したイーオン様の事例は「ナレッジグラフ評価型」に該当します。Knewton社のアダプティブエンジンとデジタル・ナレッジのLMS「KnowledgeDeliver」との連携により、パートナー企業様・学校様のアダプティブラーニングのカスタム開発・提供を強力に支援してまいります。
≫詳細はこちら :https://www.digital-knowledge.co.jp/product/edu-ai/adaptive/
■オープンバッジ
2020年1月、デジタル・ナレッジは、米国のブロックチェーンテクノロジ企業Learning Machine(ラーニングマシーン)社とソリューションパートナー契約を締結致しました。今後はブロックチェーンを活用した、よりセキュアなオープンバッジの提供が可能となります。
詳細:https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/21165/
カンファレンスでは、オープンバッジ界の第一人者、LearningMachine社のビジネス開発担当上級副社長 Natalie Smolenski(ナタリー・スモレンスキー)氏にも緊急登壇いただき、オープンバッジの最前線と今後の動向について解説いただきました。
ナタリー・スモレンスキー氏(ラーニングマシーン社 ビジネス開発担当上級副社長)
●オープンバッジとは?
バッジの見た目だけデジタル化したのがいわゆるデジタルバッジ。一方で、オープンバッジとは「規格」である。
個人が取得した資格やスキル、学習や研修の修了証明をオンライン上で表示可能な「標準化されたデータ」が埋め込まれている。バッジというと、どうしても見た目に目が行きがちだが、実際に米国で約5000万ものオープンバッジが発行(2019年実績)されているのは、そこに標準化されたデータが埋め込まれているからこそである。
では、標準化されたデータを使うということはどういうことなのか?
ここで挙げられたのはe-mailの例だ。e-mailの普及は、仕事のやり方や私たちの日常生活を大きく変えた。誰とでもやり取りができるe-mailは、もはや無くてはならないもの。誰とでもやり取りができるのは、“データが標準化されているから”。e-mailは標準化されたデータによる、ひとつのデジタル革命といえる。
全く同じことがオープンバッジで起こりつつある。重要なのは、世界中で同じ標準化されたデータが使われているという点。データを標準化するということは非常に大きなメリットがある。「研修のコースを受けました」「この資格を取りました」「このコースを修了しました」――こうしたデータは標準化されて、自由に送ったり受け取ったりできる。
e-mailはAさんからBさんに送ったとき、他の人に見られることはない。非常にセキュアに送信可能だ。
オープンバッジも同様で、そこに埋め込まれているリンクによってその修了証、資格、成績が本物かどうか検証できる。
●海外での活用状況からみるオープンバッジの最新動向
オープンバッジよりさらにセキュアでデータの信頼性の高いのが、ラーニングマシーン社とMITが共同開発した「ブロックサーツ」というオープンバッジだ。ブロックサーツとは、ブロックチェーン技術に基づいて作られた、オープンでフリーな規格。
ラーニングマシーン社はデジタルクレデンシャル分野の世界的リーダーであり、商用で唯一、ブロックチェーン技術を取り入れたオープンバッジ「ブロックサーツ」の発行サービスを行っている米国のブロックチェーンテクノロジ企業。「ブロックサーツ」は、強固で信頼できるデジタル証明証としてMITなどの大学で活用が始まっているほか、最近ではアメリカの国家安全保障省が採用に踏み切ったという。用途は、公的文書の偽証を防ぐため。もともと教育目的で開発されたブロックサーツだが、教育に限らず非常に広く活用されており、ますます需要が高まっている。
こうした先進の技術を使ったクレデンシャルを、いよいよ日本国内でも提供可能となった。本サービスは2020年3月ごろにリリースを予定している。
デジタル・ナレッジではラーニングマシーン社との業務締結により、ブロックチェーンを活用したよりセキュアなオープンバッジの提供が可能となります。
具体的には、セキュリティ要件やお客様のニーズに合わせて3段階のバッジ種別を選択できるオープンバッジソリューションをご用意しました。
従来の紙(PDF)による資格証明書に加え、SNSやホームページで資格やスキルを一般公開するのに適した「オープンバッジ」、よりセキュアな証明書として利用可能な、最先端技術を活用した「ブロックサーツ」のラインナップで、これからデジタルバッジの活用をお考えの皆様に最適なソリューションをご提供致します。
≫詳細はこちら:https://www.digital-knowledge.co.jp/product/openbadge/
■VR
カンファレンスではVRの教育活用事例として、株式会社松屋フーズホールディングス様に採用いただいた、接客トレーニングVRの体験デモも紹介した。
動作、目線、発声まで、実際の接客に必要なスキルをヘッドセットマイクを装着したVR空間の中で体験学習できる。店舗間のOJTの質の均一化など様々なメリットがある。接客トレーニングにVRを取り入れるのは飲食店としては国内初の事例。
松屋の接客トレーニングVR体験コーナー
eラーニング専業企業として長年培ってきた実績をもとに、教育価値向上・コンテンツ価値向上を踏まえた教育用VRコンテンツ制作を行っております。
≫詳細はこちら:https://www.digital-knowledge.co.jp/product/vr-contents/
デジタル・ナレッジでは、今後も教育・eラーニングに関する最新動向や事例をご紹介するイベントを行ってまいります。ぜひご期待ください。
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会社概要
名 称:株式会社デジタル・ナレッジ
所在地:〒110-0005 東京都台東区上野5丁目3番4号 eラーニング・ラボ 秋葉原
代表者:代表取締役社長 はが 弘明/代表取締役COO 吉田 自由児
URL: http://www.digital-knowledge.co.jp/