補聴器の設計・製造・販売を手掛けるマキチエ株式会社では、拠点間における教育品質のばらつきや昔ながらの教育手法に課題をお持ちでした。そこで導入されたのが、eラーニングをベースにした社内研修システム『マキチエリスキリング』です。店舗の接客メソッドなど、これまで属人化していた知識を次々に教材化して全社展開、導入後わずか3ヶ月で、プログラムを修了した社員が全国1位の売り上げを達成するなど効果を上げています。こうした成果につながったシステム選定の裏話やコンテンツ内製の秘訣とは?インタビューでは今年で設立45年、創業77年を迎えられた同社の使命、人材育成に込められた思いについてもお聞きすることができました。
代表取締役社長 平松知義様(写真)
社長室 髙橋雅哉様/広報部 部長 新開千秋様
※一時的にマスクを外して撮影しております。
お客様のニーズ
- リスキリングの仕組みを構築したい。
- 社内のDXを進めたい。
- 店舗における営業力を強化したい。
導入前の課題
- 主な社員教育をOJTで実施しているが、標準化・見える化ができていない。
- コロナ禍で対面教育の機会が減少している。
- 属人化している社内知識・接客メソッドを教材化して全社員にシェアしたい。
導入後の成果
- Know-baton(ノバトン)をベースにした社内研修システム「マキチエリスキリング」をリリース。
- ノバトンの教材作成機能やオプションのVideo+を活用し、店舗の接客メソッドや属人化していた知識を次々に教材化。
- 動画視聴後に確認テストを行うなど、教育効果や受講率を高める受講の流れを定着化。
- すきま時間でも無理なく学べるシステム構築により、全国34店舗における教育の標準化、効率化を実現。
- 導入後わずか3ヶ月で、プログラムを修了した社員が全国1位の売り上げを達成するなど成果を上げている。
- レディメイドコンテンツを活用したハラスメント教育等も全社的に実施、包括的な社員教育を実現している。
10人中9人がノバトンに投票。操作性、テスト・教材作成機能が導入の決め手に
御社では現在、全国に何店舗のお店を展開されていますか。
平松様:北は北海道から南は宮崎県まで、全34店舗を展開させていただいております。製品のコンセプトをしっかりと営業スタッフに伝え、営業からのフィードバックをしっかり開発に戻したいという考えのもと、歩みは遅いかもしれませんが、直営店での販売に特化しております。
その直営店の販売スタッフの教育を主な目的として今回eラーニングを導入いただいたという事ですが、以前はどのように教育研修を実施されていましたか?
平松様:お恥ずかしい話ですが、実技も知識教育もすべてOJTでやっていました。現場の責任者や配属先のリーダーが手取り足取り教えるという昔ながらのやり方です。これは、たとえば「ありがとうございます」の言い方1つとっても、いろいろな言い方がありますし、やはり現場の社員が肌で感じたこと、身に付けたことを直接伝えるべきだという形での教育が一般的でした。また、これも昔の考え方にはなりますが、“勉強とは自ら進んでやるべきもの”という風潮があったのも事実です。そのため現場任せだったというのが正直なところでした。
以前の方法にどんな課題をお持ちでしたか?
平松様:やはりOJTですと地域差があり、標準化や見える化ができていませんでした。配属された拠点や営業所によって教育水準にばらつきがあり、進捗が目に見えないのが大きな課題でした。また、コロナ禍で3密を避けることが強いられ、今まで通りの対面式学習が許されないなか、OJTについてもかなり時間が制約されてしまっていました。
新開様:新入社員研修につきましても、以前は本社で配属前の集合研修をやっていましたが、コロナ以降は実施がむずかしくなっていました。
平松様:加えて、先程申し上げた“勉強は自分でするもの”という考え方も、近年採用される側の数が減ってきたなかで、社員に教育機会を提供し一人ひとりをしっかりと育てるという責任が会社の役割として求められるようになってきたという変化を感じておりました。
そこでeラーニングの導入を検討されたわけですね。システムの選定にあたり、とくに重視されたポイントは何でしたか?
新開様:操作性、それからテスト機能があるかどうかの2点を重視しました。選定においてはデジタル・ナレッジ社のノバトンを含めた3つのシステムをトライアル操作し、社員投票を行いました。各システムの強みやメリット・デメリットを明らかにしたうえで10名の社員に実際に使ってもらい、一番良かったシステムを理由付きで投票してもらったんです。その結果、御社を選んだ社員が圧倒的に多かったということで平松とも協議の上、ノバトンの導入に至りました。
▼社員投票の結果をまとめた社内資料
売り上げが全国1位に!新入社員も受講・実践で「あなたに頼んで良かった」とお客様から喜びの声
現在ノバトンをどのように活用されていますか。
新開様:営業や店舗の販売従事者を対象に、接客マニュアルや先輩社員が“仕事の極意”を語るインタビュー動画などを提供しています。ノバトン研修システムの社内名称は『マキチエリスキリング』といいまして、勤怠システムですとか社内のさまざまなシステムのマニュアルも掲載しています。
3月の正式リリースからまだ日は浅いですが、現時点での成果はいかがでしょうか。
髙橋様:店舗の接客マニュアルをまとめた「マキチエ接客メソッド」というプログラムに一番乗りで合格した店舗営業スタッフがいましたが、この方の6月の売り上げが全店舗中1位でした。もともと能力の高い人ではありましたが、今回御社のシステム・メソッドを使って自らの接客を補正強化したことによって全社でナンバーワンになれるほど大きく伸びた1つの例だと思います。
社内研修システム『マキチエリスキリング』
マキチエ接客メソッドの動画コンテンツ
“属人化した知識をチームの力に” 高い教育効果を生み出すコンテンツ作りの秘訣とは
短期間でこうした成果につながった要因の1つとして、御社で開発されたコンテンツの力があったのではないかと思います。成功につながるコンテンツ作りのヒントをぜひお聞きしたいのですが、たとえば社員の方にはどのようなコンテンツが人気でしょうか?
新開様:先輩社員によるインタビュー動画でしょうか。北海道から宮崎まで店舗展開があるなか、普段は会えないような人からも仕事への取り組み方や経験談を学べるということで非常に受講率が高く、有益なコンテンツになっていると感じます。
髙橋様:それぞれの分野で第一人者みたいな社員がいるんです。たとえば、医療機関のドクターとのコミュニケーションに非常に長けていて開拓力もあるような方ですと、その人が普段どういうところに気をつけて営業活動をしているか、皆知りたいですよね?従来こうした知識はその人にしかわからない“属人化された知識”に留まっていましたが、このマキチエリスキリングを使って全社員にシェアしたいという思いがありました。ですから、インタビューの際には「ぜひ秘訣を話してください」とお願いをしてざっくばらんに話してもらってコンテンツ化しています。
1番の人気コンテンツである先輩社員が仕事の極意を語るインタビュー動画。
これまで属人化されていた知識を全社員にシェアできる優良コンテンツとなっている。
ノバトンのコンセプトが「ひとりに偏った知識をチームの力に」ということで、まさに属人化された知識を全社共有するという目的で開発をしたものなんです。そのコンセプト通りに活用していただき大変光栄ですし、冒頭に平松社長がおっしゃった「現場の社員が肌で感じたことを直接伝えるべき」という教育への思いにも沿ったシステムになっているように感じました。
新開様:そうですね。動画というのも効果を高めているポイントだと思います。文字ベースのコンテンツより、映像と音声で入ってくる情報というものが見ている人の興味関心を惹き、理解度を深めるのに役立っています。
動画は何で撮影されていますか?
新開様:高画質で撮影できるデジタルカメラで撮影したものもありますが、社員の極意(インタビュー動画)などは各店舗で社用スマホを使ってセルフ撮影してもらったものを編集しています。
ちなみに本社でのコンテンツ作成担当者は何名体制でしょうか。
新開様:2~3名です。
動画の一部は各拠点で撮影してもらうなど工夫をされていますが、それでもかなり少人数で高品質なコンテンツを多数作成されている印象です。それができる秘訣は何でしょうか。
髙橋様:やはりノバトンの教材作成機能によるところが大きいと思います。我々がWordやPDFで作ったものをすぐeラーニング教材に転換できますから。
新開様:パソコンの中にデータさえ入っていればすぐにコンテンツ化ができるということで、非常に便利に使わせてもらっています。最近はテストやアンケートも多数取り入れていますが、CSVで一気に入れることができるので工数も少なく済んでいます。
動画編集については『Video+』というオプションを利用いただいていますが、使い勝手はいかがでしょうか?
新開様:Video+、もう頻繁に利用させてもらっています。ワンクリックでチャプターやクイズを入れられますし、細かい時間調整もできるので非常に編集がしやすいです。受講者目線でいいますと、動画に中断機能がありますので途中でやめても続きから再生ができます。移動中や接客の合間に受講するケースが多い弊社にとって、とても使い勝手がいいですね。
Video+なら教育効果の高い動画コンテンツを簡単に作成・配信できる
「本当に作ってよかったと思えるコンテンツができました」
反対にコンテンツ作りの中で「これは大変だった」というようなことはありましたか?
髙橋様:大変だったというより不慣れだったという話なんですけれども、社員が役者となって受け答えをする接客動画を作りましたが、想像以上に撮影に時間がかかってしまいました。
こちらは良い例だけでなく悪い例も紹介されていてわかりやすいですよね。その分、撮影は大変だったと思います。
髙橋様:そうなんです!店舗が休みの日にお店で撮影したんですけど、お客様をお見送りする最後のシーンで外が真っ暗になっちゃったんですよ。本来なら明るいうちに撮り終わる予定が2月だったので日が短くて、お客さんの帰る姿が映らないという事態になってしまいました。
ただ、事前に御社の担当Nさんから「こういう手順で撮るといいですよ」「良い例と悪い例を撮ってこういうポイントを入れるとわかりやすいですよ」などなど的確なアドバイスを頂いていたんです。そのおかげで、我々経験がない素人でも何とか1日で撮影ができましたし、本当に作ってよかったと思えるコンテンツができました。
接客動画の悪い例。社員が演じることで“受講する側にも親近感をもってもらえれば”という思いが込められている。
受講促進のためになにか工夫されていることはありますか?
新開様:動画視聴後に確認テストを行うという流れを多く取り入れています。動画を視聴しないとテストを受けられない設定にすることで、動画視聴→テスト→受講完了という流れができ、受講率向上にもつながっています。
空き時間に勉強することが多い販売スタッフのため、受講前に「何を学べるコンテンツなのか」「学習時間の目安は何分くらいか」をひと目でわかるようにしているとか。こうした工夫も受講促進につながっている。
ほかにはどのようなコンテンツをお使いですか。
新開様:あとはデジタル・ナレッジ社から提供いただいたビジネスマナー関連のコンテンツも利用させてもらっていますね。
髙橋様:レディメイドコンテンツですね。新入社員に限らず、ベテラン社員であっても誤解した知識のまま仕事をしていることもありますし、あるいは以前は問われなかったようなハラスメント系の教育も最近は非常に重要となってきています。そういった観点から、御社の豊富なコンテンツの中からとくに重要なものを選び、所属部署や勤続年数を問わず、多くの社員に受講してもらっています。
導入前から現在に至るまで、弊社担当者の対応はいかがでしたか。
髙橋様:契約前の検討の段階から、私達が成し遂げたいことを的確にご理解いただき、要所要所でアドバイスをいただきました。それがなければ今のマキチエリスキリングはなかったと思います。
新開様:今回コンテンツを作成する側の立場になったときは正直不安でしたが、困ったときはすぐにアドバイスや改善点、代替案をご提案いただき、もう本当に不安を取り除いてくださったこと、感謝しております。
「補聴器をもっと普及させたい」その使命を果たすために
御社が補聴器の製造販売に携わられるようになったのはいつ頃からでしょうか。
平松様:弊社の前身は電気屋さんだったんです。ある日、ろう学校から壊れた補聴器の修理依頼をいただきましてね。修理した補聴器をお子さんに渡した瞬間、もう笑顔があふれ出てそこら中を走り回って喜ばれたという体験を先代社長の朝山が経験し、直感的に「補聴器をもっと普及させなければならない」という思いに至ったそうです。1945年創業、補聴器の部門を設立したのは1977年で以来、補聴器のメーカー機能と補聴器の販売機能、この2つを大きな柱として補聴器の普及に取り組んでおります。
補聴器の普及はまだまだ進んでいないのでしょうか。
平松様:日本では難聴だと気付いている方の14.4%しか補聴器の普及がなされてないというデータもあります。これは母数が難聴に気付いている方ですから、隠れ難聴の方も含めると実際の普及率はもっと少ないはずです。じつは世の中には難聴に気付いていない方が多く、まだまだ自分には補聴器は早いと思われている方がほとんどなんですね。
最近では我々の店舗におきましても、まるで病院で相談を受けているかのような安心と信頼をお客様に実感していただけるよう、病院のドクターと連携しながら補聴器販売をさせていただいているという状況です。
直接お客様に向き合うお店の販売員の方、お医者様と専門的なやり取りをする営業の方に対する人材育成がとても重要だということがわかりました。そのなかで、このノバトン研修システムはどのような役割を果たしていけそうですか。
平松様:やはり最終的な会社の強み、差というのは人材です。最低限の標準化は大事ですが、+αの差別化、個別化、弊社の求める強みに社員が育ってくれることを望みますし、さらにはうちの会社だけではなく、世の中で役に立つような人材を育成しなければという思いで今回ノバトンを導入させていただきました。同時に評価システムを導入し、学習進捗やテスト結果などを評価制度に反映させるという取り組みを進めております。
改めまして、今後の取り組み予定をお聞かせください。
髙橋様:平松が申し上げた通り、このマキチエリスキリングをどれだけ受講したか、どんなスキルを身につけたか、それを実際の現場でどう発揮できたか、業績にどう貢献したかを人事評価制度とも紐づけながら、会社に欠かすことのできないツールへとさらに大きく成長させていきたいと思っています。
新開様:接客に限らず、補聴器の調整ですとかそういった技術的な部分についても、先輩社員から具体的なメソッドを学べる専門的・実践的な教材・コンテンツをさらに充実させていきたいですね。
ご利用いただいた製品・サービス
- Know-baton(ノバトン)
- Video+
- レディメイドコンテンツ
お客様のサイト
お客様情報
名称 | マキチエ株式会社 |
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創立 | 1945年 |
設立 | 1977年9月 |
本社所在地 | 東京都中央区日本橋3-2-3 |