インタビューではハイブリッドラーニング導入から現在までを振り返りながら、今後の大学教育のあり方についてもお聞きすることができました。
教学部 授業運営課長(通信教育課程担当) 豊田修様 (左)
教育学部教育学科 通信教育課程主任 湯藤定宗教授 (右)
※一時的にマスクを外して撮影しております。
お客様のニーズ
- 「オンデマンド+対面」のブレンディッド授業を実施したい。
- オンデマンドで使う講義動画の制作支援をお願いしたい。
導入サービス
ハイブリッドラーニングのメリットと効果
- 前半は学生個々のペースでオンデマンド動画を繰り返し視聴して学ぶことができ、後半には身に付けた知識をグループワークやディスカッションでアウトプットし深めることができる。
- 前半は自宅学習、後半は対面で学生同士が関わり合うというコントラストが学生のモチベーションアップにつながっている。
- 対面スクーリングと比較して学生の宿泊費・交通費や時間的な負担を大きく軽減。
- ハイブリッド型の授業構成が高く評価され学生満足度は92.2%。
- 学生の多様なニーズに対応した学び方の1つとして定着。
なぜハイブリッドラーニングを導入したのか
最初に、玉川大学のハイブリッド型授業についてお聞かせいただけますか?
豊田様:全15コマの授業のうち、前半の7回をオンデマンド動画で自宅学習、後半の8回は実際に大学に来てもらって対面授業という流れです。私たちはこれをブレンディッド授業(ブレンディッドスクーリング)と名付け、教育学部教育学科の通信教育課程で提供しております。このオンデマンド動画の撮影・編集を含めた制作支援をデジタル・ナレッジさんにお願いしました。
ブレンディッドスクーリングを始めたのはいつ頃ですか?
豊田様:2016年からです。玉川学園では初めてのオンライン授業であり、ブレンディッド授業になります。それ以前は対面スクーリングのみでした。当時、他大学さんでは全てオンデマンドというところも多かったようですが、私たちはいろいろ研究をしてブレンディッドという形を選択させていただきました。
なぜ「オンデマンドのみ」ではなく「ブレンディッド」を選ばれたのでしょうか?
湯藤様:学びとはアウトプットしてはじめて深まるという部分があると思います。オンデマンドは一方通行、つまりインプットになりますから、もっとアウトプット型にしていきたいという思いがありました。ブレンディッドなら、こちらが準備さえしておけば後半の対面部分で学生たちはたくさんアウトプットができます。
豊田様:事務局としては全部オンデマンドの方がやりやすい部分も正直あると思うんですよ。先生方にコンテンツを作ってもらってLMSで配信すれば、ほぼノータッチで済みますから。ですが、玉川大学の場合は最初に先生方と話し合い、質を保証した授業を行うためにはオンデマンドだけでは足りないという結論になりました。
湯藤様:もちろんそれぞれメリットがありますから、全部オンデマンドの方が介護や子育てで手が離せないという方などには向いていると思います。玉川大学ではオンデマンドの良さ、対面の良さの両方を生かしてしっかり取り組もうということになりました。
学生満足度92.2%!高評価の理由
実際にブレンディッド授業を実施してみた手応えは?
豊田様:前半(オンデマンド)は自分のペースで繰り返し学べるというメリットがありますし、後半(対面)は身に付けた知識をグループワークやディスカッションで活発に活用できる場になっています。
湯藤様:象徴的だった出来事があるんですよ。ブレンディッドで前半を自宅学習され、いざ対面授業というときにコロナで結局後半もオンラインになってしまったことがありました。その学生さんと別の対面スクーリングでお会いしたときに、「今日はお会いできて良かったです!前の授業で、後半の対面を楽しみにしていたのに急遽オンラインになってしまって、ちょっとモチベーションが続かないかもしれないと思ったので…」と言われたんです。やはり前半は自宅学習、後半は対面で学生同士が関わり合うというそのコントラストが学生のモチベーションアップにつながっているのかなと、それがブレンディッドの良さだと実感しました。
以前は対面スクーリングのみだったそうですが、当時と比べて何がどのように変わりましたか?
湯藤様:対面スクーリングは土日・土日の4日間実施しますので、遠方の方だと宿泊費や交通費が2週間分必要です。主婦の方や家で介護されている方にとっては時間的にも大きな負担でした。
豊田様:本当に遠くから、北海道からもわざわざ2週に渡って2往復してもらっていましたが、ブレンディッドなら1往復で済むということで非常に満足度も高いですね。
学生さんからも好評ですか?
豊田様:アンケートの結果、実際に受講した学生の92.2%が「大いに満足できる」「満足できる」と回答されています。やはりブレンディッドの授業構成が高い満足度につながっているのではないかと思います。
YouTuberの凄さを実感?!映像制作を振り返って
デジタル・ナレッジを知ったきっかけは何でしたか?
豊田様:通信教育について勉強している外部のグループがありまして、そこで知り合った方がたまたま御社の方だったんです。あるとき、メディア授業をやりたいというお話をしたら既に豊富な実績をお持ちだということでそこからWebサイトを見たりして、というのが始まりです。
弊社に映像制作のご依頼をいただいた決め手をお聞かせください。
豊田様:多くの企業や教育関係のオンデマンドコンテンツを作成されてきた実績は聞いていましたし、その中でも大学・通信教育って特殊だと思うんですね。当時は今ほど事例も多くなかったと思いますが、そういった部分についても多数携わっていらっしゃったことが決め手でした。
実際の制作ではどの部分をお任せいただきましたか。
豊田様:予算が限られていたので自分たちでできる部分は自分たちで進め、こちらでできない部分、撮影とか編集、全体的な進行についてはすべてデジタル・ナレッジさんにお任せしました。あとは、先生方への説明ですね。最初のキックオフミーティングに同席していただいて、パワーポイント資料の作り方や撮影時のポイントなどを伝えていただきました。
映像制作で重視されたポイントなどはありましたか?
豊田様:学生から見たときに単調にならないように、ということでしょうか。そういった点についても撮影時にいろいろアドバイスいただきました。
一番大変だったことは何でしたか?
湯藤様:私も含めて動画撮影は初めてという教員が全員だったので、1回目の撮影のときは皆さん棒読みになっていましたね。学生に感想を聞いたら「前半の動画つまらなかったです」とか「そのまま読んでただけですね」と手厳しい意見も(笑)。なので、YouTuberってすごいねとかそんな話にもなりましたが、とにかく最初はちょっと難しかったですね。
豊田様:そんななか、デジタル・ナレッジの担当の方はこちらの要望を本当によく聞いていただいて調整していただき助かっています。
湯藤様:私が撮影したときにはレジュメを一語一句丁寧に読み込んでいただき、私が気付いていない言い間違いを指摘いただいたこともありました。ただ立ち会うだけでなく「一緒に作ろう」という気持ちが感じられましたし、非常に気持ちよく撮影に臨めた記憶が残っています。
映像コンテンツ全体としてはどのような成果があったとお考えですか。
湯藤様:普段の学習は自宅で動画を見て学べますから「タイムマネジメントがしやすい」ということを学生が言っていました。
それから対面のいいところはライブ感ですが、同時に1回で流れるように終わってしまうというデメリットがあります。自分では分かったつもりでもいざテストで問われると答えられなかったという経験は誰しもありますよね?その点、オンデマンド動画なら「何度でも見返すことができ時間をかければかけただけの学習効果を実感」できます。これも実際に学生の方が言っていたことですが、この2つがいわゆる映像コンテンツを使った学習の最大のメリットではないでしょうか。
コロナ禍における大学教育の変化
コロナ以降、大学の授業運営にどのような変化がありましたか?
豊田様:大学や通信教育におけるメディア授業といえば、今までの常識ならオンデマンド一択だったと思います。それがコロナになって、同時双方向授業をやらざるを得ない状況に一気に変わりました。ZoomやMicrosoft Teams を使ってできることがわかったのは1つの収穫だったと思います。玉川大学でもコロナ禍で同時双方向型のオンラインスクーリングが増えました。これは全15コマの授業を登校せず自宅でリアルタイムに受けることができるというものです。現在は対面スクーリング、同時双方向型のオンラインスクーリング、そしてブレンディッドスクーリングの3つを行っています。大学としてはなるべく学生さんの多様なニーズに応えられるよう、さまざまな学習方法をご提供していくということにシフトしてきた数年間だったように思います。
いろいろ選択できるというのがポイントなんですね。
豊田様:その通りです。大学としてはできるだけ気持ちよく、という言い方が適切かどうかわかりませんが、学生にとって身が入り集中できる勉強のスタイルというものを提供していければと思っています。その中でやはりブレンディッドならではの良さがありますので、今後もなくてはならない1つの学び方かなというふうに捉えております。
ブレンディッド授業の可能性についてはどのようにお考えですか?
湯藤様:オンデマンド部分に関して言うと「動画だけで学生の学びを深めるにはどうすればいいか?」というのは私たちにとって初めての挑戦でした。YouTuberがすごいなと思ったのはそこなんですよね。すべて計算してうまく作っている。動画コンテンツを作るときには今まで考えていなかったような領域のことまで考えて作らないと、いいものはできないということが分かりました。そういう意味では、ブレンディッド授業の可能性というよりは、我々教員に対して教えるということを見直す機会であり余地を広げてくれる可能性がブレンディッド授業にはあるんじゃないか、ということに今話していて気付きました。
「オンラインと対面のベストミックス」にチャレンジしたい
次にチャレンジしてみたいことはありますか?
豊田様:理想でもいいですか?ブレンディッドスクーリングを実現し、コロナ禍には同時双方型スクーリングもできるようになりました。そこで次は、ブレンディッドの前半のオンデマンドのところに何か同時双方向的な要素を少し入れることができないか?と考えています。
湯藤様:いや、もうその通りで、オンデマンドと対面のベストミックスについてはもっと可能性があると思っています。私が考えていたのは、オンデマンドでただ解説するだけでなく問いをいくつか設定する。たとえば、日本の教育制度について説明した後、「皆さんが考える教育課題は何だと認識しますか?」「いじめ、不登校、教師の質、学歴社会の中であなたが解決したいのは何ですか?」といった問いを、教科書や他の文献を参考に解決案を設計してくださいねと投げるんです。そういう仕掛けを至るところに散りばめることができたら、ブレンディッド授業からさらに発展した新しい形を作ることができるのではと模索しています。
豊田様:対面、ブレンディッド、同時双方向に続く第4の手法ですね。今後またデジタル・ナレッジさんに相談させてもらうかもしれません。
ありがとうございます。最後に教育に対する今後の抱負をお聞かせください。
湯藤様:これは玉川大学だけの問題ではありませんが、今教育そのものが非常にですね、「単位取得したらいいんだろう」とか「卒業して教員免許が取れればいいんでしょ」など、どこか薄っぺらい学習観があるように感じています。だけどそれだと、たとえ卒業して教員になれたとしても結局魅力的な授業はできないと思うんです。
教育の最終ゴールは採用試験に受かることではなく、子供たちに自ら「学びたい」「勉強することにこんなに意味があるんだ」と気付いてもらえるようにすること。そのための授業展開ができるよう我々自身も取り組んでいかなくてはなりませんし、そういったマインドを共有できる学習環境をオンデマンドや対面やブレンディッドを駆使して作っていかなければなりません。偏差値や最終学歴じゃない、「最新学習歴はいつでも変えられる」と我々はよく言うんですけれど、そういう心持ちで常に自分自身をリニューアルしながら、教育というものに真摯に関わっていきたいと思います。
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お客様情報
名称 | 学校法人玉川学園 玉川大学 |
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設立 | 1929年(昭和4年) |
本社所在地 | 東京都町田市玉川学園6-1-1 |