心理学を専門的に学べる通信教育課程として、京都橘大学が2012年に開設された「たちばなエクール」。国家資格である公認心理師の資格取得を目指せる、全国でも数少ない通信制の大学です。開設以来、学生数が伸び続け、大学卒業を目指す正科生の割合も増えるなど、学びがますます深化しているその背景とは?この10年の取り組みと、今後の展望についてもお聞きすることができました。
企画部 生涯教育
通信教育課長 鈴木 慎吾様(左)
通信教育課長補佐 岡本 俊様(右)
お客様のニーズ
- 通信教育課程の開設に際し、オンライン学習環境を整備したい。
導入サービス
導入後の成果
- 授業からスクーリングまで、全てオンラインで完結する学習環境を整備した「たちばなエクール」を開設。
- 2012年の開設以来、学生数が10年で10倍増。
- 大学卒業を目指す正科生の割合も60%→87%に増えるなど、学びの質も深化している。
- システムだけでなく教材開発、授業運用も含めたトータルサポートで安定的運用を実現。
【目次】
公認心理師を目指せる西日本唯一の通信制大学
最初にたちばなエクールの特徴をご紹介いただけますか。
鈴木様:たちばなエクールは心理学を専門とした通信教育課程です。公認心理師という数年前にできた国家資格があり、働きながら公認心理師の資格取得を目指せる通信制大学としては本学を入れて全国に4大学のみ、西日本では本学だけとなっています。
どんな方々が学ばれていますか?
鈴木様:30~50代の働いている方が多いですが、10代の方、お仕事をリタイアされた60~70代の方まで幅広い年齢層の方が学ばれています。お仕事をされている方は、学校の先生や保育士さん、福祉関係、医療職の方など、日々人と接する中で心理学というものをしっかり学んで活かしてみたいという思いで学ばれている方が多い印象です。
学生数が10倍に。正科生の割合も増加した背景とは
2012年の開設から10年経ちましたが、学生数はどのように推移していますか?
鈴木様:開設当時は150名程度(正科生:約60%、科目等履修生:約40%)からスタートしましたが、その後、学生数が増え続け、2022年度現在の在籍者数は約1,500名(正科生:約87%、科目等履修生:約13%)と規模が拡大している状況です。卒業生も約1,100名になりました。
正科生と科目等履修生の違いは何ですか?
鈴木様:正科生はおもに大学卒業を目指す方、科目等履修生は興味のある分野の科目を選んで学びたいという方です。当初は科目等履修生の割合も多かったのですが、たちばなエクールでしっかりと学びたいという正科生が徐々に増え、今では正科生がメインとなっております。
10年で学生数が10倍、さらに正科生の割合が増えている背景や要因としては何が挙げられますか。
鈴木様:さまざまな生活パターンの学生さんがいらっしゃいますので、24時間いつでも何度でも学習できる環境に対するニーズ、すきま時間に自分のペースで学習できる環境への要望は強くあると認識しております。そのため、たちばなエクールでは、eラーニングを中心に学習できる仕組みを導入しています。授業はもちろん、レポート提出から試験まで、基本的なところは全てオンラインで完結できます。
スクーリングもオンライン上で可能なんですね。通学0日で卒業可というのがやはり関係していますか?
鈴木様:関係していると思いますね。北海道から沖縄まで全国に学生さんがいらっしゃいますし、遠方の方も増えてきていますので、やはりそういった要因が強いのかなと思います。
学生さんは日々どのように勉強されていますか?
鈴木様:学習のスタイルは学生さんによってさまざまですが、日常のちょっとした時間を活用して学習を進めている方が多いです。まとまって1時間取るというのはなかなか難しいですが、15~20分というすきま時間でメディア授業を受けられています。
学生さんはおもにパソコンで受講されていますか?
鈴木様:パソコン以外にもタブレットやスマートフォンでも見られますので、通勤途中に復習がてらスマホで見るとか職場でのお昼休みに視聴するとか、そういう時間を積み重ねて学ばれています。
通信教育課程開設にオンライン環境は必要不可欠だった
こういったオンライン環境の整備は通信教育課程の開設前からお考えになっていましたか?
鈴木様:そうですね。やはりそれぞれの置かれた環境の中でしっかり学んでいただける仕組みは何だろうと考えた結果、オンラインを活用していこうということでスタートしました。
そのための基幹システムにKnowledgeDeliverを採用された決め手は何でしたか。
鈴木様:単に授業をオンライン配信できるだけではなく、運用も含めて安定的にいい仕組みかどうかという視点でいくつかのシステムを検討したと聞いています。
岡本様:大学として学位を授与していくうえでは、本人による受講を担保する「本人確認」が非常に重要になってくると思います。当該学生本人がしっかり授業を受け、修得された単位の積み重ねによって最終学位が授与されます。そういった意味ではKnowledgeDeliverに本人確認ができる機能があった部分も大きかったのではないかと思います。
本人確認は現在どのように運用されていますか?
鈴木様:入学時に学生証にも使う写真を登録していただき、その登録写真と試験時にPCカメラで撮影した本人写真とをシステム上で自動認証し、一致をすれば試験が受けられるという仕組み(*)です。
(*)KnowledgeDeliverのカスタマイズにより実装
システムだけでなく教材開発・授業運用までトータルサポート
日々の運用業務のなかで活用されているKnowledgeDeliverの便利機能などはありますか?
鈴木様:学生さんに対して日々いろいろなアプローチを取りますが、そのときに受講履歴を確認しそれぞれの学習進捗率を1つの指標としてご案内をしている部分はありますね。学習進捗率は定期的にチェックしています。
岡本様:別の通信制大学から本学に編入された学生さんにお聞きした話では、「勉強中にわからないところがあったらその場でシステムから質問できるので便利」という声が多いですね。授業が終わってから再度メールを立ち上げたり電話したりする必要がなく、すぐにシステムからある程度単元が限定された形で質問ができるので、重宝されているようです。事務局としても、頂いた質問になるべく早く回答するということを徹底していますので、そうした質問のしやすさ、レスポンスの早さが学生さんの満足度につながっているのかなというふうに見ています。
導入から現在までで、KnowledgeDeliverのもっとも評価されている部分はどんなところでしょうか。
鈴木様:安定的に動いているということが、地味でありますが、非常に大事な点だと思います。この10年間、大きなトラブルなく稼働しているというのはすごく安心感がありますし、いろいろな改善を行うベースにもなっています。
岡本様:学生数が順調に増え、また安定的な運用ができているのは、システムだけでなく、日々の授業運用支援、教材開発支援、その他細々とした部分をしっかりとサポートしていただいているからだと思います。
教材開発支援とは、具体的にどのようなサポートをさせて頂いていますか?
鈴木様:授業の撮影収録、編集などのコンテンツ作りをお任せしております。数でいうと、カリキュラムの変更や時期にもよりますが、例年2~3月は収録が入りやすい時期で、この間に100コマを超える教材開発をデジタル・ナレッジさんの支援のもと進めています。
この春、「総合心理学部」として新たなステージへ
この春、たちばなエクールは新たに総合心理学部としてリニューアルスタートされるということですね。
鈴木様:はい、今までは健康科学部の中に1学科として心理学科があるという学部構成でしたが、やはり心理学というものが社会的にも非常に認知度が上がり注目されてきているなか、「総合心理学部」として独立させることになりました。領域も少し整理をして、より心理学を幅広く学んでいただけるようになっております。
動画でみる「たちばなエクール」8つの特徴とは
5領域もの心理系科目を通学0日で学べる点、通信教育で懸念される「孤独な学習」にならない配慮も魅力です。
鈴木様:そうですね。通信教育課程ではありますが、“みんなで一緒に学ぼう”という雰囲気作りを意識しています。たとえば、学生同士がオンラインでつながるバーチャル空間やチャットを提供し、勉強に関する情報交換やコミュニケーションの場として活用してもらっています。コロナ禍にはオンラインイベントを開催し、本当にたくさんの方に参加していただきました。
これまで積み重ねてこられた充実のコンテンツやオンライン学習環境を、今後どのように活用していかれますか?
鈴木様:このコロナ禍における対応として、通学の学生さんにも通信教育課程のシステムを使って、一部ですがメディア授業を見てもらえるような対応をしてきました。来年度以降の計画についてはまだ決まっておりませんが、せっかくこのメディア授業がありますし、いいシステムもありますので、通学でも活用できるよう検討をしていきたいと思っています。
最後になりましたが、たちばなエクールの今後の展望をお聞かせください。
鈴木様:いろいろな立場の方が多様な環境でいつでも学べるようにするためには、やはりオンライン学習環境の整備が非常に有効な手段です。いろいろなオンラインツールが出てきていますので、今まで教室の中でやってきたことをどこまでオンラインでできるか、さまざまな側面で追求していきたいと考えております。
岡本様:あらゆるものがボーダーレス化している時代ですが、それがコロナ禍にさらに加速しました。通信教育においても、さまざまな地域から学生が集まることが可能となるなど、学び方がより自由になっています。
こういったことがもっと発展すれば、今ある大学の通学・通信というすみ分け自体もなくなっていくかもしれませんし、国や言語の壁も、もっともっとボーダーレスになっていくかもしれません。日本の学びを世界で配信するといったことも含め、より自由な発想で学びを提供できる世界観が進んでいくのではないかと思ったときに、我々がたちばなエクールで培ってきたノウハウをどのように、社会に、日本に、あるいは世界へと提供していけるのか、個人的には非常に関心を持っております。
鈴木様:デジタル・ナレッジさんも日本の教育を海外に輸出する教育事業の海外展開支援をされていて、非常に面白いなと拝見しています。海外の方にもたちばなエクールで学んでいただける未来がもうすぐそこまで来ているんだろうと思いますし、大きな可能性を感じています。そういったことにもアンテナを張りつつ、今後も取り組みを進めてまいりたいと思います。
ご利用いただいた製品・サービス
お客様情報
名称 | 学校法人 京都橘学園 |
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設立 | 1902年(明治35年) |
大学設置 | 1967年(昭和42年) |
所在地 | 京都府京都市山科区大宅山田町34 |