社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院【インタビュー】
ランキング1位の病院が研修管理システムを一新、すべての受講履歴を“見える化”へ

際的な医療機能評価『JCI』の認証を西日本で最初に取得し、厚生労働省より公表される『機能評価係数Ⅱ(DPC病院Ⅱ群)』(*1)で4年連続1位に輝くなど、医療機関として高い評価を受けている済生会熊本病院様。患者の命を預かる急性期病院として高い技術や迅速な対応が求められるなか、その期待に応え続ける秘訣はどこにあるのでしょうか。
インタビューでは、同院が力を入れている「医療人の育成」への取り組みと、eラーニングシステムを活用した“研修管理の一元化”について詳しくお聞きしました。

【画像】:内田 泰右様

社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院

薬剤・診療機材購買室長 兼 調達管理室長(前:教育・研究部人材開発室長)

内田 泰右様

済生会熊本病院はどのような病院ですか?

「医療を通じて地域社会に貢献すること」を理念に掲げ、地域における急性期病院としての役割を担っています。基本方針は「救急医療」「高度医療」「地域医療と予防医学」、そして「医療人の育成」です。

「医療人の育成」についてはどのようなことに取り組まれていますか?

ひとつは、当院で勤務されている職員約1500名(委託職員を含めると約1800名)の育成です。
「医療人の育成」と言ってもいろいろありますが、例えばいくら高い医療技術を持っていても心が伴っていなかったらその病院には行きたいと思わないでしょう。
“高い医療技術”と“優れた人間性”の両方を兼ね備えた医療人を育成すること、これが我々の目指す教育理念です。

もうひとつは、これから医療人を目指す方や学生さんに対する実習や体験授業の提供です。当院は臨床実習の指定病院に認定されており、看護学生さんの実習を積極的に受け入れています。また、地域の中・高校生を招いて医療技術の体験授業を行っています。
これからの医療者を確保していくという意味で、こうした取り組みにも力を入れています。

職員の方への教育体制について教えてください。どのような研修を実施されていますか?

当院の教育システムは、OJT(On the Job Training)、Off-JT(Off the Job Training)、SD(Self Development)の3つに分かれており、
業務を通じた指導や勉強会、階層別研修、医療技術のトレーニング、シミュレーション教育など幅広く行っています。

とりわけ当院では、全職種に対して横断的に教育する仕組みを取っています。医療はチーム一丸となって行うものであり、
ひとつの職種だけでは完結しません。質の高い医療を提供するために職種混合で学ぶ機会をしっかり作っています。

また、医療分野以外の学習に対しても積極的に支援をしています。例えば、ネイティブ講師による英会話講座を院内で開いており、その修了者に受講料の一部を助成しています。
その他、ビジネスマナーやコミュニケーションスキルといった70講座にも及ぶ通信講座も用意されており、技術力と人間力の両方を磨ける体制を整えています。

今回、弊社のeラーニングシステムを研修管理システムとして導入されました。そのきっかけについてお聞かせください。

今お話しましたように日々多くの研修を行っていますが、こうした教育活動全般を全病院的にしっかり把握し財産にしていかなければならない、という考え方が出てきました。そのきっかけとなったのが、国際的な医療機能評価『JCI(Joint Commission International)』の認証取得です。JCIでは、患者さんが安全で質の高い医療を受けるために医療機関はどうあるべきかを様々な観点から評価されていますが、その中に「医療を提供する人の資格をしっかり確認する」「教育した記録を残す」という項目があります。すなわち、研修やトレーニングを受けた記録をきちんと明確にすることが、ひいては患者さんの安全につながるというわけです。

これまで研修の受講記録はどのように管理されていたのでしょうか?

Excelによる受講記録をベースに管理していましたが、病院として統一されたものではありませんでした。
研修ごとにバラバラに管理されており、中身についても職員情報との関連付けが不完全な状態でした。
こうした問題を解決するため、全職員の教育全般の受講履歴、すなわちすべての研修、トレーニング、講座、eラーニング、さらには出張や出席した学会情報まで取り込み、職員情報ともしっかりと紐付けられた、一元管理システムの導入を目指すことになりました。

これまでeラーニング研修は実施されていたのでしょうか。

情報共有ソフトを使って“eラーニング的なこと”を行ってはいましたが、極めて限定的でした。しかしながら、医療の進化スピードはとても速く、次から次へと新しい治療法や医療機器が登場するなか、今の研修のやり方に限界を感じていました。例えば、当院では毎日夕方に研修会を開いていますが、全員出席は難しいのが現状です。そこで、スキマ時間に効率よく勉強できる方法としてeラーニングに行き着きました。
こうした背景からeラーニングシステムの導入を検討するに至りました。

弊社のeラーニングシステムを導入された理由をお聞かせください。決め手は何だったのでしょうか?

私たちが求めていたのは、受講履歴の一元管理、eラーニング、分かりやすく直感的に操作できるシステムであること、オリジナルの教材を簡単に作成できること、この4点です。これらをすべて叶えられるシステムだったことが決め手でした。

分かりやすさと教材作成の簡単さに注目されたのはなぜですか?

せっかく導入したシステムが使われず廃れていくという状況だけは絶対に避けたかったからです。使われなくなる理由として、システムを使える人がいない、教材を更新できない、教材作成が面倒などが挙げられると思います。
管理者である我々もITスキルがずば抜けて高いわけではありませんから、普通の人がちょっとしたレクチャーで操作できる分かりやすさや簡便さを重視しました。

研修の一元管理システムとして、とくにこだわったのはどんな点ですか?

第1に、職員が自らの受講履歴をシステム上で閲覧できるようにしました。入職以降受けたあらゆる研修やセミナー、自ら受講した英会話や通信講座の受講履歴、出張の記録までもがワンクリックで一覧表示できます。
これで、どんな学会に出席し、どんな研修を受けて、どんなスキルを持っているかが一目瞭然となりました。

第2に、システムからeラーニングの復習ができるようにしました。eラーニングは、1回受けて終わりではなく、時間や場所を問わず繰り返し学習できるのが強みです。とくに医療分野の研修は1度の受講ではなかなか理解できないことも多く、繰り返し学習で知識の定着を図ることが大切です。そこで、何度でも気軽にeラーニングを受けられる仕組みを作り、かつ修了証まで発行できるようシステムを改良して頂きました。

来月からの運用スタートを前に、どのような効果を見込まれていますか?

研修管理の問題点が格段に改善されると思います。これまでは、職員が自らの受講記録を手軽に見ることはできませんでしたし、管理者は職員の依頼に応じて都度受講履歴を抽出したり修了証を発行したりしていました。こうした手間が減ることで、その分患者さんに向き合える時間が増えるのではないかと期待しています。

システムへのアクセスはパソコンからがほとんどでしょうか?タブレットやスマートフォンも使われていますか?

院内のパソコンからアクセスしています。タブレットやスマートフォンによる利用は今のところありませんが、それができる機能は盛り込んで頂いていますので、今後、産休や育休でお休みの方の復職トレーニングなどへの活用も視野に入れています。
ご自宅にいながらタブレットやスマホで復職トレーニングを受けられたら便利ですね。

今後はeラーニング講座も充実させていかれる予定ですか?

そうですね、現在行っている集合研修やOff-JTにおける勉強会のeラーニング化を想定しています。
研修のスタイルとしては、まず座学があり、その上で医療技術のトレーニングを行うのが基本ですが、座学の部分をあらかじめeラーニングで学習することで、実技や技術トレーニングにかける時間をもっと増やせる可能性があります。
研修時間も限られるなか、eラーニングを使えば効果的に実技トレーニングが行えますよということをアピールしていきたいですね。

「学習履歴」は今教育業界でも注目され始めているテーマでもありますが、病院における学習履歴の一元管理や活用というのは一般的なのでしょうか?

専用のシステムを使って学習履歴を一元管理するという例は珍しいと思います。
ただ、学習履歴はどの病院においても重要なものであり必須であることは間違いありません。過去にどんな医療技術を学んだのか、どんなトレーニングを受けてきたのか、我々も新しいスタッフを受け入れるときに必ず確認します。なぜならそれが人の命に関わるからです。そういった意味では、少なくとも病院において学習履歴をしっかり保持していくという考え方は、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。


ご利用いただいた製品・サービス


研修管理画面

【画像】:トップ画面

トップ画面。分かりやすく直観的な操作が可能。

【画像】

あらゆる受講履歴が一覧で表示される。どのような研修を受講しどのようなスキルを持っているかが一目瞭然。

お客様情報

名称 社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院
開設 昭和10年(1935年)9月16日
所在地 熊本県南区近見5丁目3番1号
許可病床数 400床(うち162床個室)

(*1)機能評価係数Ⅱ(DPC病院Ⅱ群)……「機能評価係数Ⅱ」は、「保険診療係数」「効率性指数」「複雑性指数」

「カバー率指数」「救急医療指数」「地域医療指数」「後発医薬品係数」の7項目から算出、係数が大きい病院ほど高度な医療機能を有するとみなされる。
DPC病院Ⅱ群とは、大学病院本院に準じた診療機能を有する病院(99病院)。

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