大学、大学院、専門スクールに加え、グラフィックデザインやWeb、CGを自宅に居ながら学べるオンラインスクールを経営されているデジタルハリウッド様。オンラインスクールの立ち上げのために導入されたeラーニングが、今や大学や専門スクールでも取り入れられ、“動画教材活用業”としてのビジネス展開も進んでいるといいます。クリエイティブ人材の育成に多角的に取り組まれている同社においてeラーニングはどのような役割を担っているのでしょうか?オンラインスクールの運営を担当されているまなびメディア事業部の事業部長 猪野氏にお話を伺いました。
- デジタルハリウッド株式会社
- まなびメディア事業部
- 事業部長 猪野 祥仁氏
お客様のニーズ
- グラフィックデザインやWebデザインの通学講座を展開しているが、通学が難しい受講希望者向けに、場所と時間にとらわれない高品質な教材と学習環境を提供したい。
導入後の成果
- クリエイティブ専門技術が自宅で学べるオンラインスクールを開設。
- 顧客ニーズにあった新しい市場開拓でこれまでに卒業生約2万人を輩出。
- ライブ授業やプレゼンエリア機能、高品質な動画教材により、通学講座と同じ教育効果を追求した質の高い教育サービスを実現。
- 大学や専門スクールでのeラーニング活用も進み『一人ひとりにあった授業』の提供を実現。
弊社のeラーニングシステムを導入されオンラインスクールを立ち上げられたのは2006年のことですね。eラーニングの導入に至るにはどのような背景があったのでしょうか。
デジタルハリウッドはクリエイターを育成する日本初の産学協同デジタル専門スクールとして1994年にスタートしました。その後、我々の得意とするデジタルコミュニケーション領域の教育を、より幅広い年齢層の方へいろいろな手段で届けたいという思いがあり、2004年に大学院を、2005年に大学を開設しました。その大きな流れの中で、遠方にお住まいの方やさまざまな事情で通学が難しい方のために開設したのがオンラインスクールです。そういった意味では昨今のeラーニングブームのようなものではなく、純粋に我々の持つ教育をより多くの方に届けるための手段としてeラーニングが必要でした。
WebデザインやCGを学べるオンラインのサービスはここ最近増えてきていますが、デジタルハリウッドのオンラインスクールにしかない特長とは何でしょうか。
実際にリアルの学校(大学・大学院・専門スクール)を運営しており、その通学制の学校と同じ教育効果を追求しているという点が大きな特長であり、他にはない強みだと思います。
例えば、ライブ授業。オンデマンド配信の動画授業でわからなかったことを講師に直接質問したり、講師側からは一人ひとりに合ったアドバイスや業界の最新動向などをお伝えできる場としてライブ授業も充実させています。「一人で学ぶのは不安」というような方にも、ペースメーカー的に使えて好評です。
また、受講生同士が作品や課題を見せ合えるプレゼンエリアという機能もあります。お互いの作品を見せ合い意見を交わすことで良い刺激になりますし、講師からのコメントやアドバイスももらえます。これも実際の教室で行っていることをそのままeラーニング化したものと言えるでしょう。
それから、何といっても動画教材には大変こだわっています。
動画教材へのこだわりとは?
動画教材は一度作れば終わりではなく、頻繁に見直しをかけ更新しています。カラー知識やタイポグラフィといった普遍的な内容は別として、作った動画教材をそのまま1年以上使うということはほぼありません。ソフトのバージョンが変われば作り直しますし、受講生目線で少しでもわかりにくいと思ったら作り直します。
我々は大学やスクールを運営していますが、その教員イコール現役のクリエイターでもあるというのが大きな特長です。ですから、彼らが「今はこういう作り方をしています」「現場ではこれがトレンドです」というのであればそれを反映させないことには商品価値がありません。そこに非常に力を入れています。
なるほど。そこも「通学制の学校と同じ教育効果を」という部分なんですね。
もちろん、そのためには使い勝手の良いシステムの存在が大前提。デジタル・ナレッジさんのeラーニングシステムは安定していて使いやすい点が良いですね。とくに管理機能は活用しています。学習継続率や動画視聴率といった学習履歴が取れますので、「○○さんが最近授業を見ていない」「このあたりでくじけやすい傾向がある」など、データに基づいた受講生へのフォローに役立てています。
オンラインスクールの受講生にはどんな方が多いですか?
主婦の方、フリーランスを目指される30代半ば以降の男性が多いですね。受講生は全国各地から集まっていて、卒業生は2万人を超えました。卒業後は主婦から起業される方、地方に住みながらフリーランスで活躍されている方も多数いらっしゃいます。地元で家族と暮らしながら月数十万も稼ぐというのはひとつの成功例ですよね。そういった新しい働き方につながるのがオンラインスクールの魅力だと思います。
10年以上eラーニングを実践してこられた間、なにか変化はありましたか?
もともとはオンラインスクールのために導入されたeラーニングの仕組みが、大学や専門スクールでも使われるようになってきました。大学では学生全員が一部の授業をeラーニングで受けていますし、専門スクールではクラス授業とオンライン授業を併用して学べるスタイルになっています。いわゆるハイブリッド学習、ブレンデッドラーニングです。
リアルな教室の授業でeラーニングを使うメリットは?
「一人ひとりにあった授業」を提供できる点です。学生にはいろいろなレベルの人がいますから、教室で先生が何十名をいっせいに教えるのは必ずしも効果的ではありません。eラーニングなら早く進める人はどんどん先へ、ゆっくりの人は何度でも繰り返し動画を見るなど、自分のペースで学ぶことができます。その間、教員は学生たちの間を歩き回り、つまずいている学生のサポートをしたり、逆に先に進んでいる学生には応用や個人個人の希望・進路に沿った学習内容を指導したりします。
教育において本当に重要なのはツールを使えるようになることではなく、そのツールで“なにを作るか”だと考えています。ですから、ツールの使い方は動画教材で個別に学び、その先の応用や実践的なスキルの習得に先生は注力する。そういった環境作りにもeラーニングは欠かせません。弊社が提供している対面型の学校・授業においてもeラーニングは大きな成果を上げています。
そういった使い方はeラーニング導入当初から想定されていましたか?
まったく考えていませんでした。使っていくうちにどんどん活用範囲が拡がってきた印象です。例えば専門スクールの全国展開を考えたとき、以前ならその土地その土地で先生を確保する必要がありましたが、地方の場合、一から十まで教えられる先生を探すのはなかなか大変でした。ところがそこにeラーニングを持ってくるとその課題がクリアになり、全国どこででもスクール運営が可能ということが分かってきました。実際にeラーニングを取り入れたことで専門スクールの全国展開が一気に進み、北は北海道から南は沖縄まで、全国約20校を展開しています。
今後の展望をお聞かせください。
まなびメディア事業部としては、オンラインスクールを主軸に“動画教材活用業”を進めていきたいと考えています。他の専門学校や大学に、我々がもつ豊富なクリエイティブ領域の動画コンテンツを提供したり、魅力的な授業や面白いコンテンツをお持ちの学校様のeラーニング化を推進したりといったようなことです。
ひと昔前は教育現場にeラーニングを導入する際は「eラーニングとはなにか?」という説明からしなければいけませんでした。今はもうそういうことはありません。むしろeラーニングに対する追い風は強まっているように感じます。eラーニングや動画教材をフックにしたビジネス展開には大きな可能性があると思います。
eラーニングの可能性はこれからも拡がっていきそうですね。
学校が抱える課題やニーズは様々です。授業についていけない学生が多いという学校もあれば、逆にうちでは教えられないくらい優秀な学生がいて彼らに適したeラーニングを提供したいという学校もあります。また、学校に来なくなってしまった子のドロップアウト率を下げる対策としてeラーニングを役立てたいというニーズもあります。共通しているのは「教育現場で困っていることにeラーニングを充てる」という視点です。完全個別学習という言葉がありますが、一人ひとりにあった最適な学習を提供するうえでeラーニングが果たす役割は大きいと考えています。
お客様のサイト
お客様情報
名称 | デジタルハリウッド株式会社 |
---|---|
設立 | 1994年10月 |
所在地 | 東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ アカデミア 4F |