AI/生成AIにより多彩な教材・副教材を生成、Teacher’s Copilot(その1:マルチ教材)

By | 2024年1月30日

昨年末に当ブログでも紹介させていただいたように、1月23日に新春カンファレンスを開催しました。当日は会場とオンラインでのハイフレックスでの開催となり、多くの方にご参加いただきました。長時間に渡り多くの方にご参加いただき誠にありがとうございました。

当日は「生成AI・スキルマネジメント活用事例と新時代の教育・研修」というテーマで様々なセッションを行いましたが、今回のブログでは、中でも多くの方にご関心を示していただいたAI/生成AIによる教材作成支援環境、”Teacher’s Copilot”について紹介いたします。

なお、Teacher’s Copilotは多岐にわたり、全てを紹介するのは大変なので、今回はTeacher’s Copilotの全容と、【マルチ教材(Multi-Contents)】のコンポーネントに絞って紹介いたします。

生成AI/ChatGPTの破壊力

もう私があえて言うまでもなく、2022年11月末に彗星の如く現れたChatGPTは、瞬く間に世界を席巻しました。

近年はAIの発展が著しく、ここ15年ぐらいはニューラルネットワークを使ったディープラーニングによるAIが一世を風靡し、文字・画像認識のクオリティが飛躍的に向上しました。例えば写真で外国語の文章を撮影すると、文字を認識して、日本語などの他の言語に翻訳するといったことが可能になりました。以前から囁かれていたシンギュラリティ、AIが人間の知能を超える時が来るのでは?と議論されました。人の仕事はAIに取って代わられる。今の人間の仕事は大幅に変わる。そういうことが囁かれました。

この流れを決定づけたのが2022年の11月末に登場したChatGPTです。生成AIに区分されるChatGPTは、Web上の多くの情報を学び、その結果、さまざまなタイプのコンテンツを生成することができるようになりました。質問をすると、あたかも人が回答するような返答をしてくれます。返答はテキストメッセージだけではなくプログラムソースや絵など、さまざまなタイプの出力が可能で、高度な専門知識やスキルを有した人と伍する働きぶりです。これまで人力ではできなかったことが生成AIで自動でやってのけることができることはたくさんあることでしょう。シンギュラリティーが、もうそこまできているのを感じます。

この生成AIは、その持つ力ゆえに、あらゆる領域の業務やあり方を変えるようにも思えます。これは教育においても例外ではありません。ChatGPT時代に人はどうやって、何を学ぶべきか? という学びや教育への根源的な問いかけや、もし学生がChatGPTを使ってレポートを作成したらそれをどう評価する(あるいは見破る)のか?というような教育現場での問いかけは今後も継続的に向き合う問題になることでしょう。

一方、我々eラーニングベンダーとしても、この生成AIを取り込んでおきたいという思いがあります。弊社ではChatGPTがリリースされた頃からその動向に着目し、生成AIで実現できることを試していました。

AI/生成AIを教育にどのように取り込むか?

このAIや生成AIをどのように教育に取り込んでいくか? 

取り組み方には2通りのアプローチの方向性があるように思います。

【方向性1】あたかも生身の先生が個別に対応するような高度でインテリジェントな受講者の学習環境を整備/提供する。

【方向性2】多忙な先生や教材制作者に代わり、ノウハウを生かした教材作りを自動で行うことで人間の労力を極限まで減らし、教材のバリエーション、ラインナップを揃える。

〜 生成AIの教育への活用の方向性について 〜

この中で特に注目したのは方向性2、先生や教材制作者をアシストし、さまざまな教材や副教材を生成すると言う点に着目して考えたのがTeacher’s Copilotです。

メインのパイロットである先生・教材制作者に寄り添い、教材制作や指導・サポートにおいてさまざまな支援を行うことを主眼においた構想です。

Teacher’s Copilotには3つのコンポーネントから形成されております。1つの教材をもとにさまざまなバリエーションの教材を生成する【マルチ教材】、学習者一人ひとりに適切なサポート・指導を行う【サポート】、そして先生になりかわって学習者にトレーニングを実施する【トレーニング】です。

もう少し詳細に表現すると下記のようになります。

先生が作成したテキストや映像などの元情報をもとに、さまざまな教材・副教材を生成したり、サポートやトレーニングを自動で行うことができる、Teacher’s Copilotはこのような構成になっています。

それでは具体的な例をいくつかピックアップして紹介しましょう。今回はMulti-Contents、教材や副教材の生成について紹介致します。

【Multi-Contents】穴埋め問題自動作成システム

特に企業研修で顕著だと思いますが、社内で教材を作る際に、PowerPointをベースにした学習素材を作ったり、そのPowerPointに合わせて講義をすることは、一般的なプレゼンリテラシに近いために教材制作はそれほど苦労せずにできると思います。一方、教える内容を学習者が理解したかを把握するための教材、テスト問題や演習問題などを準備することには苦労されるのではないでしょうか。

どうやって問題を作ればいいのか? 内容を網羅的に盛り込むにはどうすればいいか? 簡単すぎたり難しすぎたりしないか? 単に語句を問う問題など単調になりがちじゃないか? そういったさまざまな課題を抱えながら作問されているのではないでしょうか。少なくとも私はそうです。社内説明資料を作ったり、資料をもとに映像コンテンツ化はできるものの、これを問うテスト問題を作るのは結構大変だと痛感しています。

そこで生成AIを活用して問題を自動作成するモジュールを搭載しました。

(下記はモジュールのベースで、LMSに組み込む前の汎用的なモジュールです。実際にLMSに搭載されるUIではありません)

上記のように元の文章を貼り付け、対象学年を選ぶと、その学年にあった要約文を生成します。その文章の解析を行い、右側の穴埋め問題を自動生成するのです。

この例では穴埋め問題を生成しておりますが、択一問題、◯×問題などのオーソドックスな形式のテストも生成することができます。

教える内容の教材さえ作れば、それを確認するテスト問題を自動で生成することができるようになります。

【Multi-Contents】問題文・類題生成

上記の例に近い例ですが、問題文や類題を生成するモジュールです。

上記の例では中学校の数学と英語の問題ですが、これらの教材は内容やレベルごとに多くの種類の問題が必要です。それを全て人手で作問するのは大変なので、元の情報をもとに作問したり類題を生成します。

なお、この仕組みはすでに弊社の教材作りで活用されています。

【Multi-Contents】音声合成によるスライド自動生成

すでに以前のblogでも紹介している機能ですが、PowerPointスライドで教材を作成し、PowerPointのノート機能に入力したナレーション原稿を、AI音声が読み上げ、スライド切り替え式の教材を自動生成するという機能です。

この新規コンテンツの制作画面のオーディオ選択で「合成音声を利用する」と言うメニューがあり、こちらから作成いただけます。こうやって作成された例を下記に載せておきますので再生してみてください。

PowerPointスライドとメモに記載したナレーションテキストだけで、自動的にこのような教材を生成することができます。こちらは女性ナレーションの声ですが、男性の声を選択することもできます。

ナレーション撮りって結構大変なんですよね。担当者や先生がナレーターを務めるか、プロのナレーターに依頼する方法がありますが、自分で吹き込もうとするとかなり神経を使うし、プロのナレーターはさすがに作業はスムーズですが結構コストがかかります。

さらに教材にミスが発生したり内容をアップデートするために改訂した際にはナレーションを撮り直す必要があり、前回ナレーションを吹き込んだ人と同じ人をアサインしたり日数がかかったりと改訂はなかなか困難です。

この音声合成によるスライド自動作成をご活用いただけると、初回の制作だけでなく改訂も楽に行うことができます。立ち上げのことだけでなく運用のことも考えると有効だと思います。

【Multi-Contents】スタディノート

教材そのものというわけではないものの、学習を円滑に進めるために必要な各種情報(スタディノート)を生成する機能です。

学習で利用した教材の文章を対象学年に合わせて【要約】テキストを生成します。さらにその学習内容に含まれる【キーワード】を生成し、【学習のポイント】の文章も生成します。これらは教材そのものではない副教材のようなものですが、学習を円滑に進める上で必要な情報です。

例えば、学習を始める前に学習のポイントを明示しておくと、どのように学習に取り組み、どの点に注意すればいいかがわかり、学習が円滑に進むことでしょう。

学習終了時に要約を見ることで、短時間で素早く内容を再確認でき、理解が深まることでしょう。

例えば試験直前の際に、キーワードや要約のコンテンツを見ることで短時間に復習できることでしょう。

このように、先生がお作りになった教材をより円滑に、より効果的に活用するのに、このような学習周辺の情報、スタディノートは重要です。

【Multi-Contents】教材ローカライズ

昨今は教材を日本語だけでなく他言語でリリースする機会も増えてきました。従来であれば翻訳者が翻訳をして、それを教材に組み込んでいましたが、ここにもAIが活躍しています。

上記のようにeラーニングのHTML教材だけでなく紙教材の編集でお使いのAdobeのInDesignのデータやPDFデータの教材にも対応しており、日本語教材をもとに他言語へローカライズをしております。

弊社ではウズベキスタンで展開する教育に当システムを利用しております。実績として、ウズベキスタンで弊社が展開する私立大学JDUでの導入例をご紹介しておきます。

JDUでは日本の大学の教材を現地ウズベク語にローカライズするのに、これまでは30名の翻訳者に依頼して翻訳業務を行なっておりましたが、この教材ローカライズの仕組みを導入することで翻訳者が不要になり、本部でのチェック者のみで翻訳業務を行うことができるようになりました。また、日本語教材が届いてウズベク語版をリリースするまでの期間を大幅に短縮できたことも大いにプラスに働いています。

Teacher’s Copilotがもたらすこと

ここまでTeacher’s CopilotのMulti-Contents、教材・副教材の生成について紹介しました。まだLMSに組み込み前の状態のものもありますが、様々な検証を行った上で、より多くの方にスムーズにご活用いただけるよう、順次KnowledgeDeliverに組み込んで提供を進めてまいります。

Teacher’s Copilotによって教材制作がより簡単になり、これまで人力ではなかな行えなかったような多品種の教材を用意し、学習者がさらに学習しやすく、成果が出る環境を整備できるようになることを目指しております。

教育企業さんや学校さんでは受講者の認知特性や学習スタイルに合った多品種の教材を展開することもより容易になるでしょう。

企業さんの研修では、担当者に作問技術をはじめとする教育ノウハウがなくとも、元素材からさまざまなタイプの教材が展開できるようになることでしょう。

これらTeacher’s Copilotをお試しいただくことも可能ですので、ご興味ある方はお問い合わせください。

今回はTeacher’s Copilotの教材制作にあたる【マルチ教材】について紹介しました。

次回以降、今回紹介しなかった残り2つのコンポーネント、学習者一人ひとりに適切なサポート・指導を行う【サポート】、そして先生になりかわって学習者にトレーニングを実施する【トレーニング】を紹介する予定です。

おまけ

コンピュータが人格を持って高度なことを行う・・・ 40年ほど前、1985年にNECのPC-6601SRというパーソナルコンピュータが発売された時に武田鉄矢さんが出演されたTVコマーシャルで「Mr. PC」と謳われていたのをふと思い出しました。

ジャズに”Mr. P.C.”という曲があります。ジャズのテナーサックスのジョン・コルトレーンの曲です。もしやAIの曲では? とお思いかもしれませんが、時は1959年、まだパーソナルなコンピュータがなかった時代の曲で、P.C.とはジャズのベーシスト、Paul Chambers(ポール・チェンバース)を指して作った曲です。

というわけで今日のおまけは”Mr. P.C.”です。いささかこじつけですけど。

参考