デジタルバッジの面白い活用事例:ブランディングに活用(ウールマークさんの取り組み)

By | 2024年11月13日

先週はeラーニングアワードフォーラムが開催されました。先日のブログで紹介したように、弊社や弊社関連のセミナーも各種開催し、多くの方にご参加いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

今回のeラーニングアワードフォーラムでは、弊社は大きく、「デジタルバッジSkill+」、「生成AIによるTeacher’s Copilot」、そして「海外展開を含めた教育流通」という3つをご案内しました。いずれもご関心を示していただき、いくつか具体的な話に繋がりつつあります。

今回はその中でもデジタルバッジについての話をしようと思うのですが、弊社の取り組みの紹介ではなく、世の中のデジタルバッジを見ると、なかなか興味深い取り組みをなさっている事例があり、紹介いたします。皆様のデジタルバッジ活用のヒントになればと思います。また個人としても無料で取得できますのでこの機会にコレクションに加えられてもよろしいかなと思います。

デジタルバッジとは

本題に入る前にちょっと事前の整理を。

(改めてになりますが)まずそもそもデジタルバッジとは何かを紹介します。

これまで、資格や学習歴、スキルや存在証明などを行うのに、紙やカードなどを使っていました。多くの方がお持ちの免許証は運転する際に携行しなければなりませんよね。また大学卒業の学位記は手軽に持ち運べるものでもなく、その大学を卒業したことを証明するには卒業証明書を大学から取り寄せて、その現物を持参して示すしか方法はありませんでした。

このコロナ禍で脱ハンコに代表されるようなDX化が一気に進みましたが、こういう証明書の世界でもDX化が進んおり、それがデジタルバッジです。紙などの物理的な媒体を使うことなく、パソコンやスマホ、その裏にあるクラウドやブロックチェーンを使ってデジタルで学習歴などを証明しようというものです。

デジタルバッジの仕様:Open Badge

このデジタルバッジは仕様的にはオープンバッジ(Open Badge)という規格が広く普及しています。そのOpen Badgeにも現在は主に2つの規格、Open Badge 2.0とOpen Badge 3.0が存在します。この2つの規格を整理してみます。

現在広く普及しているのはOpen Badge 2.0です。ただ偽造・改ざんリスクが完全にクリアしているというわけではなく、次の規格として、よりセキュアなOpen Badge 3.0が制定されております。

弊社のデジタルバッジソリューション”Skill+”はOpen Badge 2.0と3.0双方に対応しているので、これまでのバッジも、これからもバッジも安心して管理・発行することができます。

ちなみにOpen Badge 3.0は2024年5月27日に一般公開されましたが、この際に弊社は日本から唯一、Open Badge 3.0の賛同表明メンバーとして名を連ねております。詳しくはこちらの1Edtechのサイトをご覧ください。

デジタルバッジの活用

さて、このようなデジタルバッジ(Open Badge)ですが、どのように活用されている、もしくは活用が期待されているかというと、下記のようなことがしばしば挙げられます。

  • 大学間連携、単位互換:単一の大学でのみ履修し卒業するというだけでなく、国内外の他大学で受講して卒業する新たなスタイルが生まれつつあります。各大学での単位を管理するのにデジタルバッジは適しています。
  • 高大接続、単位認定:高校生が大学の科目等履修生として大学の授業科目を受講する取組が広がっており、その成果として取得した大学の単位は大学入学後に既修得単位として認定を受けることも可能です。この単位の認定手段としてデジタルバッジを活用いただけます。
  • スキルの棚卸し・可視化:企業などの組織内において各スタッフの公的資格やスキル、経験などをデジタルバッジ発行することで可視化、誰がどのようなスキルを有しているか整理することができます。さらに組織内での独自資格や褒賞、経験もデジタルバッジ化することで、より幅広くスキルを捉えることもできるでしょう。
  • 資格証のデジタル化:紙やカードなどの資格証は持ち運ぶのが大変です。一方、デジタルバッジはスマホに入り持ち運びやすく、他のサービスでの利用も行えます。
  • 他システム・サービスで学習歴やスキルを証明:デジタルバッジは改ざんの恐れがなくデジタルでその人の学習歴やスキルを証明し、やり取りすることができます。SNSでのスキルの公開、タレントマネジメントやHRのシステムでのスキルの証明、資格の証明などを物理的なものを介さず、シームレスに行うことができます。人材サービスやマッチングサービスとの相性もいいでしょう。

ざっとこのような活用が期待されています。

ただ、デジタルバッジそのものはスキルを証明するという基礎的なものであり、その活用は上記の例によらず色々あるだろうなとは思ってます。今回は、その色々あるだろうな、という中から、一つ事例を紹介します。

これは弊社の事例ではなく、他でおやりになっているものですが、その活用や狙いが面白いなと思ったので共有させていただきます。

ザ・ウールマーク・ラーニングセンター

話はデジタルバッジから大きく変わりますが、ウールマークってご存知でしょうか? 羊毛から作られたウール製品が一定の品質をクリアしているかを示す品質保証のマークです。ウール製品の裏のタグにこのマークがついてますね。

このウールマークを管理・発行しているのがザ・ウールマーク・カンパニーという組織です。オーストラリア産メリノウールの啓蒙活動やマーケティング、研究開発を行っているそうです。

それで、その啓蒙活動の一環として、ザ・ウールマーク・ラーニングセンターというのを立ち上げておられます。余談ですが、英語ではThe Woolmark Learning Centreとなっており、さすがオーストラリア(イギリス)の英語だな!と思ったりしました。

(弊社の仕事ではなく、弊社は全く関与しておりません。ただ事例として秀逸だなと思ったので取り上げさせていただいております)

このザ・ウールマーク・ラーニングセンターでは、ウールやウールマーク、デザインなどについてさまざまなコースを各国語で準備しており、受講者は無料で学ぶことができます。

私も試しに1つコースを受けてみました。お昼休みにお昼ご飯を食べながら羊から羊毛になるまでのプロセスや羊毛の特徴について、動画や説明を見て理解し、テストを細かく受けたりと、結構みっちりと詳しく学ぶことができました。

ぜひご興味ある方、サイトで登録をして学習してみてください。

そして学んだ結果、オープンバッジが発行されるのです。世界中で広く使われているオープンバッジのプラットフォームであるCredlyにて発行されます。

ちなみに私の取得したウールマークのオープンバッチはこちらです。

なお、このウールマークのオープンバッジは何せ標準規格で作られて流通できますので、弊社のオープンバッジサービスであるSkill+のウォレットに取り込むこともできます。

参考までに私のSkill+のウォレットをお見せしますね。

オープンバッジは標準規格なので、弊社が発行したバッジだけでなくCredlyやBadgrやLecoSなどの他のバッジ発行プラットフォームで発行したバッジも等しく扱うことができます。

なお、このSkill+は無料でお使いいただけますので、ぜひこの機会に1つアカウントを作成してみてください。色々なバッジを集約するのにご活用ください。

プロモーション・啓蒙活動としてのデジタルバッジ

さて、このザ・ウールマーク・ラーニングセンターの何に私が感銘を受けて面白いと思ったのかというと、その狙いと活用にあります。

このブログの前段で、現在よく言われているデジタルバッジの活用について触れました。主には学習歴やスキルの証明や、そのデジタルゆえの運用性を使って活用やマッチングなどに役立てるというものです。

このウールマークのデジタルバッジは、もちろんそういう側面もあると思うのですが、狙いとして「啓蒙」というのが念頭におありになったんじゃないかなと思うのです。

羊から毛糸そして最終形としての服やテキスタイルの製品になるまでのプロセスを知ったり、高い品質を維持するためにどのような品質管理を行なっているのかを仔細に渡り理解することで、学習者のウールマークへの信頼度が高まり、ウールマークのことをもっと好きになると思うのです。

私は受講してませんが、より踏み込んだ専門的な講座もあり、服のデザイナーや加工業者にとってはさまざまな知見を得て、実際の仕事にフィードバックできることもあるのでしょう。その知識をもとに、ウールを使った素晴らしい製品を生み出すことができるようになるかもしれません。

こうして消費者や生産者にウールマークのことを理解してもらい、ファンになってもらい、手に取ってもらったり、選ぶときの選定基準になる。そういう意識のようなものを醸成する・・・そういう啓蒙活動、ブランディングとして、このザ・ウールマーク・ラーニングセンターが役割を担っているように感じました。

企業・団体の活動として、啓蒙、ブランディングのための活動は重要です。現在も広告や様々なメディアを通じて活動をなさっていることでしょう。昨今はInstagramやX、Youtube、Facebook、TikTokなどのSNSでプロモーション活動を行うケースも増えていると思います。

この、ザ・ウールマーク・ラーニングセンターでの学習コンテンツとデジタルバッジの提供は、そういった啓蒙活動、ブランディングのための新たな手段としての可能性があると思います。

ぜひそういう効果を狙って活用されることもご検討いだければと思います。

おまけ

私の手元には第一世界大戦前後に、ロンドンで作られた110年ほど前のコルネットがあります。以前入手した際はちゃんと吹けたのですが、だんだん音が掠れてきて使い物にならなくなってリビングに飾ってました。

先日、ふと思い立ち、修理してもらおうと楽器店に持ち込んで見ていただき、原因がピストンの表面が削れてケースとの間に隙間が過度に開いてしまって息が漏れているからだと判明しました。その修理のためにピストン表面にメッキをかけて分厚くするのですが、この見積もりが、最低22万円から・・・ 状況によってはもっと値上がりするかも、とのことでした。いやいや、ちょっとこれはさすがに無理だなぁと発想を変えてピストンに注油するバルブオイルを粘性の高いものにしようと思い世の中に存在するバルブオイルで最も粘性の高いオイルを千円足らずで入手しました。これを点してみるとビンゴ! これまで音にならなかったのが嘘のようにちゃんと音を出せるようになりました。やや癖はあってコントロールが難しいところもあるのですが、実用域です。

それで最近はこの古いコルネットをしばしば吹いています。今日の一曲は”Smile”です。チャップリンの映画『モダン・タイムズ』で使われているチャップリンが作曲した曲です。この曲が作られた頃にはすでにこの楽器は世の中に存在したというのを思えば、ちょっと遠い目になります。

参考