暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので、この永遠に続くと思われた暑さも9月下旬には一旦収まったようです。その後も暑さが盛り返すこともあったものの、今はもう秋の気配、10月に入ると朝晩は過ごしやすくなって来ました。それにしても今年は文字通りの記録的な暑さ、今年は本当に暑かったですね。
暑さといえば、弊社はこれまで9月の土日に社員合宿を行なっていたのですが、昨今のコロナ禍の影響で全員で泊まり込みは難しいので、ここしばらくは日帰りのイベントを開催しております。さらに近年は9月でも真夏のように暑く、合宿の野外イベントで体力を消耗し汗だくになるというので、10月開催に変更しました。今年も10月に日帰りで開催されますが、地球温暖化の影響がここまで来ているのかと思わされます。
さて、今回はKnowledgeDeliver 7.2から搭載されたオプション機能「スライドオーサリング音声合成機能」のご紹介です。
教材制作って、けっこう大変
このブログをご覧いただいている方の中にはeラーニングをご担当なさっていて、教材を企画されたり制作なさっている方もいらっしゃると思います。
どうやって教材を作るか・・・ 既に対面で教室講義を行なっているような学校さんや企業さんは、その講義を映像化して映像コンテンツにするのが手っ取り早いでしょう。カメラを据えて、ちゃんとしたマイクをセットして聞き取りやすく収録すると、対面と同じ内容の教材コンテンツを作ることができます。
一方、多くの企業さんは教育がメイン事業ではなく、企業内研修の多くは対面で教室講義を行なっておらず、そのまま教材コンテンツ化できるものが限られます。そこで多いのがPowerPointの資料を使って教材を作成する方法です。
教材原稿としてのPowerPointの活用
- 既に説明用などで利用されているPowerPointを教材化する。
- eラーニング導入に際して、業務ノウハウをお持ちの方に原稿を作成してもらう。この際にPowerPointで作成してもらう。
特に企業さんでeラーニングのコンテンツを準備するとなると、だいたい上記の2つの準備になります。PowerPointはデファクトスタンダードなツールで使いこなせる方は多く、教材制作の専門家でなくとも現場の方々に教材を作成していただけるので重宝されています。
こうして作られたPowerPointを、見た目を統一するためにテンプレート化したものに流し込んだり、読みやすいようにフォントサイズを調整したり、わかりにくい表現を調整したり、いわゆる「トンマナ」(Tone & Manner)を揃えて見やすく加工します。
さて、こうして完全なPowerPointが出来上がりました。これをそのままPDF化して配布したり、eラーニングシステムに登録しても・・・まあいいんでしょうけど、ちょっとeラーニングとしては物足りません。そう、音声によるナレーションの解説や説明が欲しいところです。
ナレーション・・・ これは制作者にとっては結構大変なことで、どのように用意するかというのが難しいのです。
元の原稿をお書きになった、いわば原作者の方は内容について熟知されているということもあり、原作者に読み上げてもらってそれを録音するという方法が最初に思いつく方法でしょう。その方が普段から講師をなさっているような方の場合、音声収録を引き受けていただける可能性は高いですし、出来上がったナレーション音声もクオリティが高いことでしょう。ただ、多くの場合、原作者は社内の担当者であることが多く、その方は「いやいやいや・・・私なんて、とてもとても・・・」と固辞されるケースが多いんじゃないでしょうか。今はスマホでも高品質な音声が録音できるとはいえ、喋る側のクセが如実に出ます。私もさまざまなコンテンツで自分の声で収録したことがありますが、結構緊張するし言い間違えやアクセント、イントネーションもあって難しいんですよね。そういうわけで人間味のあるコンテンツはできますが、それが学びやすいのかというと、ちょっと疑問は残ります。私はそういうコンテンツ好きですけどね。
そこで次に考えるのが、プロのナレーターさんにお願いしようという方法です。教育内容のイメージにあうナレーターさんをピックアップし、スタジオで原稿を読み上げてもらい録音します。私も何度も収録に立ち会ったことがありますが、さすがプロのナレーターさんと録音エンジニアの方の技量は素晴らしく、細部にわたってクオリティの高いナレーション音声ができあがります。これはさすがに聞き取りやすく、プロの仕事だなぁと思わされます。
一般的には上記の2つの方法、内部で原作者が収録するか、プロのナレーターさんが収録するか、どちらかのパターンになります。前者はコストはかからないけれど品質に疑問が残る、後者は品質は高いけれどコストがかかる・・・ それぞれのメリット/デメリットなどを勘案しどちらかを選択するのですが、今回この2つに追加してお勧めするのがAIの音声合成を活用した方法です。
スライドオーサリング音声合成機能
先月(2023年9月)にリリースした弊社のeラーニングプラットフォームKnowldedgeDeliver 7.2で搭載されたオプション機能に「スライドオーサリング音声合成機能」というのがあります。
KnowledgeDeliverにはPowerPointを登録してコンテンツとして活用する、スライドオーサリング教材コンテンツの作成機能が搭載されてますが、KnowledgeDeliver7.2より、音声合成エンジンにより PowerPoint スライドのノート領域に入力されているテキストを音声に読み上げ、ナレーションとしてオーディオ素材を作成する新機能をオプションで追加しました。音声合成には株式会社エーアイ様のAI Talk®️を利用させていただいております。
作成イメージを実際のKnowledgeDeliverの教材作成画面で説明します。
教材を作成する際にオーディオを使う場合、従来からある機能では
- 手元にある音声ファイルをアップロードする場合は「メディアファイルを選ぶ」
- ストリーミングサーバなどにある音声を使う場合には「URLを指定する」
- その場でマイクで録音する場合には「収録する」
この3つの方法があります。
ここに新たに「合成音声を利用する」という機能がオプションで追加されました。
この「合成音声を利用する」が今回リリースしたスライドオーサリング音声合成機能です。
音声は2種類用意されており「女性ナレーション」または「男性ナレーション」から選択いただけます。登録されているPowerPointのノート領域に記載されたテキストをもとにナレーション音声が作られ、スライドオーサリングのオーディオ素材として使用できるようになります。なお、PowerPointファイルのスライド自体は、そのまま背景となります。
どのようなコンテンツができるのか、下記にサンプルを載せておきます。ちなみに、これらの映像はiPadにてKnowledgeDeliverで学習している様子をレコーディングしています。
まずは男性版のナレーションです。再生ボタンを押してご確認ください。※音声が流れます。
次に、同じ教材を女性のナレーションで収録した物です。再生ボタンを押してご確認ください。※音声が流れます。
どうでしょう? 人間のナレーターが吹き込む音声と比べると、ややスムーズさに欠けますが、それほど違和感なくちゃんと聞き取ってご覧いただけたのではないでしょうか? 学習に利用するには十分なクオリティだと感じます。
ナレーション音声コンテンツの整理
このスライドオーサリング音声合成機能を活用することで、原作者読み上げ、プロのナレーターに加えて第3の方式が活用いただけます。下記にそれぞれの特長をまとめてみます。
収録方法 | 工数 (手間) | 改定のしやすさ | 価格 | 品質 |
---|---|---|---|---|
原作者/担当者の吹き込み | 高 | 低 担当者不在の際、 対応が不可能。 | 低 ほぼかからない | 中-低 担当者による |
プロのナレーター吹き込み | 中 | 中 ナレーターに再委託。 ただしコストがかかる。 | 高 1度の収録で数十万円 | 高 |
音声合成 | 低 | 低 PowerPointのノートを更新して再変換するのみ。 | 中 月額30,000円 | 中-高 AI固有の読み上げ |
例えば、商用のeラーニングで多くの方が学習する教材でクオリティを高めたい場合にはプロのナレーターの吹き込みが好ましいでしょうが、多くの種類・量の教材があり、1つの教材の学習者数がそれほど多くないような教材にはコストも工数もかけられないので、音声合成を利用するのが合理的だと思います。
さらに考慮したいのは改定についてです。教材に瑕疵があった場合はそれを訂正しなければならないですし、法令改定や業務変更があった際に教材を改定することもあるでしょう。このような教材改定の際に、画面は修正できても人によるナレーションですと音声の修正は人の手配やコスト、さらに改定に要する時間などから、なかなか難しいと言わざるを得ません。音声合成を利用すると、元のテキストを修正して更新するだけで簡単かつ迅速に教材改定を行うことができます。このように運用保守のことを考えると音声合成は使い勝手がとても良好です。
なお、このスライドオーサリング音声合成機能は、KnowledgeDeliver 7.2から利用できるオプションサービスです。初期費用0円、月額30,000円(税別)でご利用いただけます。ぜひこの機会にご検討ください。
おまけ
僕はジャズトランペットが趣味ですが、僕のアイドルはジャズの帝王ことマイルス・デイビスで、彼が使っていたMartin社のCommitteeというトランペットを長年探していました。昔は時々見かけたものの近年は日本ではほとんど流通していません。
Martin社は現存しない楽器メーカーなのですが、30年ほど前に継承した会社が作った復刻版のようなCommitteeはあり、これは持っているのですが、70年近く前のオリジナルには出会えていませんでした。長年探したオリジナル・・・先日見つけ、ようやく入手できました。1958年製、まさにいい時期の楽器です。
この演奏はAutumn Leaves、日本語タイトルは「枯葉」で、元はシャンソンですが、とてもよく知られたジャズの曲です。1958年に録音されたSomethin’ Elseというアルバムに収められた演奏が有名で、マイルス・デイビスがトランペットを吹いています。この僕の演奏は後半のアドリブは適当ですが前半のテーマ部分はこのアルバムの通りに吹いています。彼が使った楽器と同じもの、トランペットの先につける銀のミュート(ハーマンミュート)も同じものです。使う楽器はこのオリジナルの演奏の年に生まれた同じ楽器なれど、やっぱりマイルスの足元にも及ばないのですが。。。 (これはAIではありません 笑)
素敵な秋をお過ごしください。