これからのメインターゲット層、Z世代とα世代を紐解いてみる

By | 2025年3月7日

気づけば2025年に入ってこのブログの更新をしておりませんでした。

今日は教育やテクノロジーからは少し離れて、Z世代やα世代という比較的若い世代の方々を紐解いてみます。

先日、お取引先の出版社様よりお声がけいただき、専門学校の先生方に今の学生さんたちの学びの環境についてご紹介する機会があり、そのときにお話しさせていただいた内容を紹介します。親や先生として普段からこの世代の方と接していらっしゃる方には自明なことが多いと思いますが、改めて整理してみようと思います。

デジタルネイティブ世代とは

まず、この話に入る前にそれぞれの世代について、その年代にコンピュータやIT系で起きたことと合わせてまとめてみました。

私の方で整理した表なので、若干個人的な好みも加わってますが、ハードウェアとしてのコンピュータとしては1946年の世界初のコンピュータであるENIACから始まり、1980年代のコンピューターブームがありました。直接現在にリンクするところで言うと、1992年のIIJによる日本における商用インターネット開始、1995年のWindows95の発売と、現在のインターネットやコンピュータの流れが20世紀末に形作られました。そして2007年にはiPhoneがリリースされ、その後、様々なものを吸収し世の中を席巻し現在では個人ユースのデバイスとしてスマートフォンが主流になっています。

それぞれの年代には世代と呼ばれる括りがあり、その世代もざっと対応表としてまとめてみました。

そして、ここからが本題ですが、デジタルネイティブという生まれながらにデジタルデバイスが存在し、まるで息をするようにインターネットやデジタルデバイスを利用する世代がいます。これはZ世代とα(アルファ)世代が中心の世代です。Z世代は1995年から2010年ごろ生まれた世代です。α世代は2010年から現在の世代です。物心ついた頃にはすでにiPhoneなどのスマホがあり、Twitter(現在のX)やLINEなどがすでに使われている世代です。年齢で言うと0歳〜30歳にあたり、現在の小中高大学生、そして若手の社会人もこの世代に属します。

Z世代とα世代、この2つの世代はこれから消費の中心となり、また学びを提供する際のメインターゲットにもなる世代です。そう言う観点でこの世代について整理してみようと言うのが今回の趣旨になります。

Z世代、α世代の特徴と言われているのが下記のような点です。二つの世代は共通点も多いのですが、α世代になってさらに強まった傾向についてもまとめてみました。

日頃からスマホを手放さず、従来のWebツールとはちょっと違うツールである特定のSNSやコミュニケーションツールで情報を入手する傾向があります。さらに情報の発信側と受け手側の境界線が曖昧で、ユーザが情報発信を積極的に行う傾向があります。

 また、これは教材制作において注意すべき点ですが、タイパ(タイムパフォーマンス)をとても重視しています。無駄な情報は忌避し自分に役立つ情報をのみ厳選して視聴したがります。そのために「まとめ」や「口コミ」を重宝する傾向があります。レコメンドによって提示された自分好みのコンテンツにアクセスしがちで、いわゆるフィルターバブルによる自身の意見が増幅されるエコーチェンバー効果も起こりがちです。実際にコンテンツを視聴する際も、無駄なイントロダクションを省いて本題のみにアクセスしたがり、さらに倍速再生で短時間でポイントを掴むような視聴行動を取る傾向が有ります。

さらにα世代は学校生活の中でも小さい頃から情報端末に触れる機会があり、さらにZ世代よりデジタルとの親和性が高まっています。

ちなみに私の子供はZ世代、α世代にかかってますが、子供が保育園に通っていた頃、同じ組の親御さんに聞いた話で印象的だった話があります。赤ちゃんにいつもタブレットで本を見せていたが、紙の絵本を渡すと次のページにめくるのに絵本のページを指でスワイプしていたそうです。デジタルネイティブだなぁ!と思ったのを覚えています。

学校でのデジタル体験

Z世代やα世代が公教育でどのようなデジタル体験をしているのかをまとめてみました。

2019年から始まったGIGAスクール、これにより日本全国の公立の小中学校に情報端末とインターネット接続環境が提供されました。情報端末としてはAppleのiPadやマッキントッシュ、GoogleのChromebook、MicrosoftのWindowsベースの端末などが配布されています。今の所のグラフを見ると、Googleさんがちょっと多いと言う感じでしょうか。

これらの端末を学校の授業で使うだけでなく、自宅に持ち帰って家庭学習や宿題でも利用されています。

この端末の利用用途の一つがデジタル教科書です。2019年より、単に紙をデジタルに置き換えただけでないデジタルならではのメリットも埋め込んで提供されており、2024年からは全ての小5〜中3に英語のデジタル教科書が、紙と併用する形態で提供されています。

 デジタル教科書の流れはさらに進み、今年2月、中教審の作業部会がデジタル教科書を紙の教科書と同じように「正式な教科書」に位置づけることが適当だとする中間案をまとめました。これから先さらに活用が見込まれますし、将来、紙の教科書にとってかわる可能性もあるのではと思っています。

また、情報端末とインターネットを活用して、子供たちは様々なツールを学校で活用しています。

上記はGoogle for Educationの例ですが、GmailやGoogleスライド、ドキュメント、スプレッドシートなど、我々大人が使うようなツールを子供の頃から使っています。また、MeetやZoomなどのリモート会議システムもコロナ禍で活用が広がり、これらリモート会議システムを違和感なく使いこなせる状況にある子供たちも数多く存在します。

これらツールを使って発表資料を作ってプレゼンをしたり、表計算ソフトでグラフを描画したりと、大人顔負けの活用をしています。団塊ジュニア世代の私が子供の頃はこんな環境はなく、小中学校の頃を思い出すと、大きな模造紙にマジックペンで書いたものを黒板に貼り出して発表したり、大学でも透明なOHPシートに印刷し、それをプロジェクター(今のプロジェクターじゃなくてオーバヘッドプロジェクター)で部屋の明かりを落とした真っ暗な状態で投影して発表したものです。技術的な差異というだけでなく、プレゼンテーションの経験の差は歴然だと思います。現在の学校では学校のレポートもデジタルで書いたものを提出する機会が増えています。大人の我々が普段業務で使っているのと遜色のないデジタル体験をしているのです。

(上記イメージ写真で暁星国際中学校様のサイトより写真をお借りしました)

情報・プログラミング教育

 近年の学校現場の変化はデジタルデバイスの導入と活用だけにあるのではなく、その教育内容にも変化がもたらされています。

高校では「情報I」が2022年度から必修化されており、今は大学入学共通テストの科目としても組み込まれ、東京大学をはじめとする殆どの国立大学で必須科目となっています。

上記に「情報I」で学ぶカリキュラムの概要を掲載しましたが、文部科学省がサンプルとして示した問題もリンク貼っておきます。どうでしょう? 結構本格的な「情報」ですよね。私は大学で情報学科を卒業してIT系の仕事をしている手前、この問題が発表されたときに試しに取り組んでみたら全て解けましたが、多くの大人にとっても知識や経験がないと解けない問題が多いんじゃないでしょうか。基本情報技術者試験にも似ていて、ITエンジニア初級レベルの学びを、全ての高校生が行うと言うのはなかなかすごいことだと思います。

さらにプログラミング教育に関しても、団塊ジュニア世代の私が学校で学んだこととはまるで違います。と言うより私の時代は学校でプログラミングを学んだことはありませんでした。

2020年度から小学生でのプログラミングが開始されました。優秀なプログラマーを育成すると言うより、思考し判断し、それを表現するといった、さまざまな課題解決につながる「プログラミング的思考」を養うことに主眼が置かれているように思います。

小学校ではScratchなどのビジュアルプログラミング言語で実際のプログラミングを行なっています。上の左側に正三角形を描画するプログラムが書いてますが、左側はペンを下ろしてそのペンがどう動くかを手順を追って表現してプログラミングしています。一方、その右の例では、線を書いて120度曲がることを3回繰り返すと正三角形が描画できるという規則を発見し、その規則で無駄なくプログラミングを表現しています。この規則性がわかれば、正四角形はどのように書けばいいのか、一般化して正n角形だとどう表現すればいいのか? さらには物事には規則性があり、その規則性をみつけて表現できればロジカルに表現できるという一般化もできるかもしれません。こう言う学びを小学生の頃からやっているわけです。

高校になると、さらに深掘りしてコードによるプログラミングを学ぶことも多いようです。この右の例は放物線のpythonによるシミュレーションです。

(ちなみに、これは私の個人的な経験ですが、私も高校の頃、物理の問題を一度コンピュータでプログラミングしてシミュレーションしてみると言うのをやってました。法則も手に取るようにわかるし、何より楽しいんですよね)

Z世代・α世代が普段使っているサービス

ではそんなZ世代・α世代が普段どう言うサービスを使っているか、その一例を紹介しましょう。スマホネイティブなこの世代はこれらサービスをパソコンで使うことはあまりなく、殆どスマホで利用しています。

(うちのZ世代の子供に「無人島に何か一つ持って行けるとしたら何持っていく?」と質問すると「アイフォン」と即答するぐらい、スマホを手放しませんね・・・)

上記ロゴマークを見ると大体お分かりになると思います。XやInstagramなどのSNSで最新情報を入手したり情報発信したり、NetflixやSpotifyなどのサブスクリプションサービスで映像や音楽に触れ、空き時間にTiktokのショート映像を見て過ごすというようなスタイルが見えます。また課題を解くのにWikipediaで調べたりググるのはもちろん、最近は生成AIも賢く使いこなしたり、SNSで他の人に解いてもらうこと(それが事件になることもありますが)もあります。

中でも上の世代の方に馴染みがないのが「BeReal.」じゃないでしょうか。BeRealは2020年にフランスで誕生したSNSサービスで、一般的なSNSは現実よりよく見せようと「盛る」投稿をしがちですよね。これに逆行してありのままを共有しようというものです。1日に一度、ランダムな時間に通知が届きます。これは人それぞれではなく全員一斉に同じタイミングで届きます。通知が届いて2分以内に撮影をして投稿しなければならないのですが(実際には遅れても投稿できはしますが、それだとクールじゃないので殆どのユーザが2分以内の投稿を守ってます)、この撮影スタイルも他のSNSとは大きく異なり、その瞬間のスマホの内側のカメラと外側のカメラ、両方の写真が撮影されて投稿されます。いつ通知が来るかは分からず、通知から2分以内の内外のカメラでリアルな生活を共有するというサービスなのです。なお、投稿は24時間で消える仕組みです。

上の世代からすると、そこに何の面白さがあるのか分かりづらいと思いますが、これがZ世代を中心に広がっていて、例えば若者が集まるディズニーランドなどで、BeRealの通知が来ると、皆一斉に立ち止まってスマホをかざすという光景を目撃することができます。授業中に一斉にスマホが鳴るとして学校の問題になることも結構あるようです。ちなみにBeRealの日本での月間アクセスユーザ数は2024年10月現在で450万人に達したそうです。Xが6,700万人、Instagramが6,600万人、TikTokが2,700万人、Facebookが2,600万人なので、これらのサービスに比べると一桁少ないのですが、若者でのシェアを考えるとおそらく結構高いと思います。

Z世代・α世代への対応、その上の世代の対応としても

以上、Z世代・α世代のデジタルツールの環境、公教育での学びなどについて説明してきました。今後のサービスを考える上でこの世代の思考や意思決定の傾向や嗜好性を踏まえて考えることは重要だと思います。ただそれはこの世代だけに限った話ではなく、その上の世代も大きく影響を受けた共通する傾向にも思います。

2007年のiPhoneの発表に端を発し、一人一台の情報端末を持つ環境が当たり前になった時代、生まれながらにしてそのような環境下で育ったZ世代やα世代、上の世代としてもこの世代から学ぶことはとても多く、次の時代のヒントも多く示唆されているように思います。

おまけ

今回はBlame It On My Youthを吹いてみました。直訳すると「若さゆえ」とか「若気の至り」とでも訳すのでしょうか。α世代、Z世代、若い世代がデジタルを活用して、オールドスクールな我々の世代ではなしえなかった素晴らしい世界を実現していただくことを期待しています。

参考

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About 吉田 自由児

ヒゲこと、株式会社デジタル・ナレッジ 代表取締役COOの吉田がお届けします。 弊社関連の情報だけでなく、eラーニング周辺の話題についても触れます。