関東では台風の影響が心配される中、2018年8月9日(木)に代々木オリンピック記念青少年総合センターで『ICTと日本語教育』展が行われました。
台風が直撃だろうと高をくくり、朝ゆっくり起きたら雨すら降っていなくて慌てて出社した研究員・岡田です。
さて出社後、午後は展示会に行ってきました。
表題の『ICTと日本語教育』展です。コンテンツパートナー様である「インターカルト日本語学校」(https://www.jlpt.jp/index.html)のブースで、トレパの日本語版『トレパJ』のデモをされるということで、取材です!
また、日本語教育の中でどれくらいICTが取り入れられているのかも興味がありました。
まず、インターカルト日本語学校様のブースへ。
※真ん中に『トレパJ』が!
さて、『トレパJ』って何さ?という方もおられると思うので、説明します。
まず、トレパというサービスが英語版として既にデジタル・ナレッジより提供をしております。
どんなものかと言うと、
- AI教材作成のためのエディター
- AIが学習者のためのトレーニングパートナーとなる
英語の先生がWordでプリントを作るように、トレパはエディターですので、トレパに英文を入力していただければリスニング教材・スピーキング教材・ライティング教材が作成できます。そして作成したものを学習者に提示することで、学習者は自分の発音や発話の診断を行えたりします。https://torepa.jp/
今回紹介するのは開発中の『トレパJ』(トレパの日本語版)です。
デモがありますので、是非試してみてください。日本語のアウトプット型トレーニングって、日本人でも滑舌を良くするのに役立ちます。
https://goo.gl/i5Z7Hi
このコンテンツは「早口言葉」です。日本人にとっても結構難しいですよね。滑舌を良くするためのトレーニングに持ってこいですよ!
さて、「日本語能力試験」(https://www.jlpt.jp/index.html)というものがあります。日本に留学したり、日本で働くときに基準となる語学試験です。日本語教育の際に一つの到達度の尺度として利用されていますし、この試験対策の参考書やeラーニングもあります。
ところが、試験内容は「読む」「聞く」となっており、いわゆるアウトプット型である「話す」「書く」にはなっていません。ですので、この試験内容では十分に到達している人でも「話す」が上手ではなかったりすることがあります。
そ、こ、で、『トレパJ』!!!
単純に言うと、音声認識の技術を使い、自分の発音を日本語テキスト化することで「聞き取りやすい発音」になっているかどうかを診断します。日本語能力試験を受けたりするくらいの学習者であれば、日本文の意味の理解などがある程度はできているという前提で考えています。後は「伝わる」「聞き取りやすい」発音ができるかどうかが重要になってきます。特に、日本での生活・学習・就業という場面では。
このようなWeb上で行うトレーニングツールを、デジタル・ナレッジとインターカルト日本語学校様の共同でサービス化するために開発を進めています。
この告知を、セミナーでインターカルト日本語学校の矢口様がされました。自然に拍手が起こる、明確なメッセージ性がある内容だったと思います。
セミナーの後のブースでも、来場者だけではなく、同じ出展社の方々も『トレパJ』には関心を持っていただけました。
実際、他社の方々もSiriを使ってアウトプット型トレーニングをしよう!などの提案もあったくらい、発音から始まるアウトプット型トレーニングをどのようにICTの力を借りて実現するかは業界の大きな目標だということが分かりました。
敢えて辛口なことを書かせていただければ、やはり日本語教育の中で、「紙」の教材が圧倒的に多く、アウトプット型トレーニングが十分に学習者に提供されていないのではないか、と思いました。もちろん、これは他の語学教育も同様です。
適宜、復習を促す、などのトレーニングを紙の教材で行うことは受講者にとって忍耐力を強いることになります。なるべく学習者の支援となりつつ、内容面では深い学び(適度な負荷による「覚える」「考える」など)に集中するように、ICTの技術を使うことで実現はしやすくなります。その意味で、このような展示会がますます発展することを願っています。
さて、展示会で質問されたことに答えたいと思います。
『トレパJ』って、Siriとは技術が違うんですか?
Siriやスマートスピーカーが「音声認識」という技術を使っているという意味で、トレパが同じジャンルの技術であると皆さん思われます。まあ、普通は「同じ」と答えていいのでしょうが・・・
ただ、「語学教育」ということであれば、「違う」と答えたいところです。
スマートスピーカーの目的は何でしょうか? 例えば、「電気消して」という命令を出した時に、実際に電気が消えること。このように「指示通りに動く」ということであり、動作ができない事柄については「わかりません」と答えれば済みます。
つまり、「指示→動作」という構図の中で、動作を行うためのキーワードを指示から読みとる機能が必要となります。
上記の「電気消して」は「電気を消していただけますか」でも、「電気オフ」でも動きます。キーワード「電気」「消す」があれば指示ができます。もっと簡略化して、電気の「ON/OFF」の二値の切り替えだけが欲しい場合には「電気!」だけで対応させることも可能です。そこには、AIスピーカー側と管理者であるユーザー側で求めるものが同じであれば「指示→動作」は行われるのです。
※と書いていて、ちょっとウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」に似ているなと思った。cf.『哲学探究』の第2節
Siriの場合は、Google先生やAIスピーカーを組合わせたような立場にあります。要はiPhoneでできることの一つに「検索」があり、またアプリ(スキル)を立ち上げて何らかの「動作」を行う。検索も「動作」の一種だとするならば、やはり「指示→動作」であり、Siriとのおしゃべりは付随的な働きだと思います。
ここでポイントになるのは、どちらにせよ「指示」をする際のキーワードは予め設定されていて、それ以外には反応しなくてよい、という線引きがあるということです。ですので、音声認識の際には予めキーワードが有限に措定されているので、そのどれかに対応した指示が来たら反応するようになっています。
それに対して、トレパやトレパJでの音声認識については、基本的に、発音した音をトレパが『こんな風に聞こえたよ』と表示してくれるというところが微妙に異なります。だから、トレパに認識されるように、丁寧に発音しなければならないんですね。これは「認識の精度が悪い」ということではなくて、トレパがトレーニングツールだからです。
矢口さんのプレゼンでも、『トレパJが”日本人の耳”になります!』という文言があります。そうです、何を発音しても反応してくれるとか、何を言うかを予め決められていてそれ以外であれは反応しないというのでは、トレーニングになりません。
この辺りの感覚が普及するにもまだ時間が掛かりそうです。
また、今月もセミナーで「教育×AI」について話をしますので、ご都合がつけば秋葉原のデジタル・ナレッジまでお越しください。
◇8月22日◇
《初等中等教育》事例から学ぶ「教育×AI」導入セミナー
https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/16514/