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ラーニングアナリティクスに関するシンポジウム@京都大学に登壇しました

弊社はラーニング・アナリティクス(LA)の分析プラットフォームAnalytics+や学習履歴を蓄積するLRS=Mananda、各種分析業務など、ラーニング・アナリティクスに関する様々な取り組みを行っております。

そういうわけでラーニングアナリティクスを研究なさる先生方との交流も盛んで、多くの先生方に様々にご指導いただいたり最新の情報をご教示いただいたりしております。

そんな中、3月22日にラーニングアナリティクスに関するシンポジウムが京都大学で開催されるというので京都大学の緒方広明先生に招待いただき、シンポジウムに登壇させていただく機会を得ました。さらにその前日の3月21日に早稲田大学の松居辰則先生からも京都大学で開催される別の会の登壇の機会を頂戴しました。思いがけず、春の京都訪問になりました。

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HAS研登壇報告『教育×AIの可能性~英語4技能学習をいかに支えるか~』

桜が待ち遠しい時期になりましたね!

デジタル・ナレッジは上野公園にも近いので、寄り道が楽しくなりそうですね! 桜大好き、トレパ「室長」岡田です。

 

さて、3月8日。大手町にあるKDDI大手町ビルにて行われましたHAS研(http://www.has.or.jp/)にて登壇してきました。

いや~ 緊張しました!というのも、今回の登壇者は、

①乾健太郎 先生 (東北大学大学院 教授、理研AIPセンター・自然言語理解チームリーダー、高大接続改革会議・委員)

②神田直之 さん (日立製作所 メディア研究部 研究員)

という、お二方とも、AIのガチの専門家! そんな中に、私が並んでいいのかな…という「場違い感」は半端なかったですねw 教育からのアプローチなので、その点では寄与できたのかな、と思っています。

 

今までのセミナーなどでは話していないことも新たに発表してきましたので、今回は岡田の発表内容で新しい部分を中心に報告します。

今回の発表では、「溝」をテーマとしました。

人は、溝があると越えるかどうかを考えます。ジャンプするのか、回り道をするのか、途方に暮れるのか…

新しい技術が出現した時も、似たような対応をするでしょう。学び・乗り越え・使いこなすのか、回避・拒否するのか、思考停止に陥るのか…

 

それだけではなく、今回の発表のテーマが「コミュニケートするAI」だったからでもありますが、円滑なコミュニケーションの背後にはミスコミュニケーション(溝)が絶えず可能性として存在します。このようなスタンスから考えてみました。

 

(A)AIについて、研究者・技術者とサービス開発者・ユーザーに「溝」がある

社会的課題①

まあ、当たり前と言えば当たり前ですね。しかし、この溝がプラスにもマイナスにも働いています。

良いことで言うと、「AIとはどんなことができるのか、学ぼう!」としてAIについての教育のマーケットが広がってきています。また、雑誌や書籍など、AI関連の本や特集は日々増加しています。

コンサルティングやカスタマイズといった仕事もそれで増えており、経済効果はかなりのものです。

 

他方、何かAIについて「過剰な期待」や「拒絶」という現象も起こっています。すぐに「シンギュラリティ」の話題をしたがる方は…「AIを学ぶ」ということから離れて思考停止しており、それ自体が問題なのですが、そこに気付いていません。

AIの関係者が集まっているということもあり、この点を研究者・技術者側からどのように市場に降りていくかを提言しました。

ちなみに、デジタル・ナレッジとしては、この「溝」に対して「トレパ」を提案しています。

デジタルナレッジのミッション

誰にでも使いやすい、教材編集ツールとしての『トレパ』というコンセプトがそれです。

また、ワークショップなどを行うことで、ユーザー支援も行います。このように、溝があるからこそ活性化する市場をつくっていくことは、ビジネスとして重要な視点だと思っています。うまく「トレパ」を使って一緒にビジネスを創っていただける方がおられましたら、お気軽にお声がけください。

 

(B)「教育×AI」の独自性による課題

「サービス×AI」や「エンターテインメント×AI」と異なり、「教育×AI」はいくつかの外せないポイントがあります。その一つが「ハードル」です。

 

①学習者には、タスク・ハードルが必要

ユーザーと学習者の溝

一般的なサービスでは、AIによってユーザーの利用「ハードル」が下がっていくことが求められます。例えば「自動翻訳」。究極は英語を全く学習していなくても、「ほんやくこんにゃく」のように、自分は日本語を話しているつもりでも、先方には英語で伝わる状態を実現することです。そのためには、どんな発音でもAIが好意的に認識し、多少文法的に間違っていたり言葉足らずでも意図を受け取り、補完して翻訳する。それを目指したサービス設計や機能開発を行う。

ところが、語学学習者にとってはどうでしょうか?

どんな発音してもOKであれば、相手に伝わる発音をする練習は不要です。

どんな間違った発言をしてもOKであれば、相手にわかりやすい表現を工夫する練習は不要です。

つまり、教育では学習者には適切な「タスク」と「ハードル」が必要です。それがないと、相手に伝わりやすい発音・発話をトレーニングする意味がありません。

野球の投球練習になぞらえると、トレーニングの「的」としてストライクゾーンが必要です。またそのストライクゾーンに入ったかどうかのジャッジがあるほうが良いです。

ストライクゾーンの提供

その点、語学学習でも同様のことが言えるでしょう。部屋で一人で教科書を朗読している時、ちょっと虚しさを感じるのは、このような「的」も「ジャッジ」もなかったからではないでしょうか。

その点で、AIの機能としても設計としても、「ハードルを下げるほどいい」というのは教育分野では言い切れません。(この点、意外と皆さん感銘を受けておられました。)

 

また、教育には教育特有のデザインが必要になります。人には人の良さがありますが、AIにはAIの良さがあるはずです。それを利用します。

②AIの特性を活かした教育デザインが必要

AIによる教育デザイン

私にも「思春期」というものがあり、今からは考えられないような内向的な学生生活でした。ですので、英語の授業中に「はい、ではこの箇所を読んでくれるかな?岡田君!」と言われると途端に緊張したものです。そこで、「こんな発音をした方がいいのだろうなあ」とは思いながらも、実際には照れ隠しの「カタカナ英語」を発音していました。それでも、先生は特に何も指導することなく、「はい。ありがとう。次は~~」とスルーしていくのでした。

オンライン英会話もありますが、クラスメイトの前ではないとは言え、相手が人間ですので、やはり抵抗感を感じる場合もあるでしょう。この抵抗感があるので、私もいまだにオンライン英会話を申し込めずにいます。

相手がAIだと完全に「見られていない感覚」になり、自分がまるでトム・〇ルーズにでもなったように英語発音を楽しむことだってできますw

 

それと、大抵の語学指導は「先生」とのやり取りとなります。交流分析などの心理学的な言い方をすると、自分(受講生)は子どもで、先生は大人のような関係性が無意識に成立します。「先生なのにしっかり教えてくれない!」「先生なんだから、こっちが下手でもちゃんと認識してよ」というのは受講者が持つ、子どもっぽい甘えである場合もあります。しかし、相手がAIであり、「子ども」という位置づけをすると(キャラクターづけをすると)、『自分がしっかりしなきゃ』と丁寧な発音を行う姿勢が養われる可能性があります。

余談ですが、大阪大学の入戸野先生の研究によれば、学生は「カワイイ」ものや写真を見ると、集中力が増し、精緻な判断ができるようになるとのこと。これは生理心理学の分野になります。教育である限り、このような心理学の知見も取り入れたデザインをしたいものですね。

また、AIが相手だと、良い意味で肩の力が抜けて「完璧な答えしか言いたくない!」という日本人特有とも言われる減点主義的な学習観から自由になれる可能性が出てきます。

この辺りは、今後の実証が必要でしょうが、メリットも考えていかなければなりません。

?(いきなり)⑤「評価」には根拠が求められる

③④はとばして…⑤です。

『トレパ』という名称は、「トレーニングパートナー」が由来です。ところが、「評価」もしてくれるのでは?と期待されることが多いです。

ここも、(A)に関連することなのですが、サービス開発側としては「そんなの、検証もしていないのにやって大丈夫なのですか?」と思います。

根拠がある評価

逆の言い方をすると、検証もしていないのに、ダメだとか胡散臭いと思われることも変な感じがします。

評価に関しては、教員の皆さんが本当に「使える!」と検証してから広めていければな、と思っています。ですので、どんどん実証してくださるパートナーの方々が増えていただければ助かります。

同じ根っこに、『トレパを使うと、トレパに合わせた発音のクセがつくのでは?』と否定的なことを言われることがあります。

 

カラオケの自動採点に合わせるように歌うことができる人が、必ずしも歌が上手いわけではない、という論法です。

 

それを言い出すと・・・「おめさ、訛ってんな?」とあるおばあさんに言われたとして、関西人である私はどう答えたらよいでしょうか?

 

例えば、東北弁で育った方からすると、関西弁は訛っています。関西人からすると東北弁も訛っています。「自分にとって正しいと思う発音の規範」があれば、人間はそれに合わせて学習します。これって、規範がAIでも人間でも同じことですよね?

失礼な表現かもしれませんが、私の高校の英語の先生の発音は本当にひどかったです。私たちの学生時代にはテープ・CDがあって、それでネイティブの発音にふれる機会がありましたから、まだマシですが、そうでなければあの先生の発音が規範となっていたでしょう。

標準語というのも、社会の中で緩やかに構成されているだけで、絶対的な基準ではありません。英語ネイティブといっても、よく小説でも「南部訛りが…」という表現が出てきます。つまり、唯一絶対の規範というものはなく、ゆるやかに「この発音が聞きやすいよね」という暗黙の了解の上に成り立っていると思います。

AIに合わせる発音の是か非かを問うている間に、どんどんトレーニングをしていくことが大事で、トレーニングをしっかりこなしている方は、もし発音の微調整が必要であっても、それに対応することが容易であると思いますよ。

 

現段階で、スピーキングトレーニングの「機会」が安定的に教育現場で供給されていない状況では、トレーニングの「機会を創出すること」、それを絶え間なく教育提供者側・受講側が「検証・実証」していく社会。それが健全な形なのかと思っています。

 

 

【関連情報】

①トレパ公式サイト(トライアルも申込ができます。) https://torepa.jp/

②【3月28日】AIによる英語トレーニング教材制作ワークショップ~英語指導につかえるコンテンツを考え、つくる!~
③【3月23日】関西初実施!
 《先生向け》AIによる英語トレーニング教材制作ワークショップ@四天王寺高等学校・中学校
③AINOWへの岡田の寄稿文 http://ainow.ai/2017/12/15/129360/

 

「あなたのカタカナ英語を見逃しません!」ストライクゾーンに挑む開発者たちの日常

最近、電車の吊り広告を見るのが密かな楽しみのトレパ「室長」岡田です。

東京に来て、某塾の広告に驚きました。サンショウウオとかヤマトタケルノミコトに扮した方は、先生、なのでしょうか???

 

さて、最近気になっているものが「英会話教室」の広告。

春も近づき、新たな学びが開始される時期。塾もそうなのですが、英会話教室の広告が多くなってきます。

 

その中で、個人的に好みは「イーオン」さん!石原さとみさんを眺めるだけで癒されますね♪

キャッチフレーズで注目しているのは、「ベルリッツ」さん。

ブログの表題にあるように、「あなたのカタカナ英語を見逃しません!」というフレーズが気に入っています。

 

ある英語の先生から聞いたのですが、その先生がニューヨークに旅行した際、「ヤンキースタジアム」に行きたくて道を尋ねました。ところが、全然通じない。結局、地図を見せて、「ここに行きたい!」と言ったらしいです。

帰国して、不思議に思って同僚の先生に尋ねたら、

「それは、【steidi?m】という発音になっていないからだよ」

と指摘されたというのです。

英語の先生であっても、注意しないとカタカナ英語に近い発音になっていたのかもしれませんね。

 

日本では、ALT(AssistantLanguageTeacher)を多く雇用し、ネイティブスピーカーとの交流機会を増やして、「発音」「コミュニケーション能力」の育成を図ろうとしています。

このような取り組みは非常に大切ですし、有益だと思います。

今まで、どんなにひどい発音しても、周囲の人たち・先生たちがスルーしていたのが現状だと思います。(少なくとも、私は発音をそこまでしっかりと訂正された記憶はありません。)でも、実際にはそれじゃ通用しない。

そのことに「悩む」という過程が従来の英語教育の中でどれほどあったのでしょうか。

 

持論としては、ミスコミュニケーションがあるからこそ、人はより良いコミュニケーションを実現するための工夫をします。自分の発音の良し悪しを客観視するプロセスは語学教育の中に組み込む必要があると思っています。

 

しかしながら、ALTの皆さんが「好意的に」日本人のカタカナ英語を「理解しよう」とした場合、どうでしょうか?その発音のフィルタリング機能が発揮されないことになります。

そこで登場!AIトレーニングツール「トレパ」!!!w

 

実際、トレパはネイティブに近いストライクゾーン(あるいはフィルタ)になります。

それを、トレパサービス推進室内でやってみた動画があるので、紹介しますね!

https://youtu.be/SG02BuwSU28

やってみたのは、「Birthday」の発音。rやthという、日本語にはない発音が入っているので、意外と難しいです。

Last day.と認識されることが多いんですよね~

カタカナ英語にすると、「バースデイ」と「ラストデイ」だと全然違いますよね?

日本人はどうしてもカタカナ英語に一旦変換する習慣があるようで、カタカナだと全然違う単語に思えるのですが、英語ネイティブスピーカーからすると、それが似て聞こえるのでしょうね。

 

余談ですが、私は「岡田」です。中学時代、同じクラスに「深澤」という女子生徒がいたのですが、社会の先生が私たちの名前を呼ぶときに、「岡田~」「深澤~」が同じように聞こえていたんです!!

いつも、先生がどちらを呼んでいるのか分からないので困っていました。ある時、深澤さんに尋ねると、全く同じように思っていたとのことです。文字にすると違うものが、何かの「拍子」が似ているってことがあるのだと思います。

 

さてさて、今日は「スタジアム」と「バースデイ」を取り上げましたが、トレパの公開コンテンツに今日のネタを用意しましたので、皆さんもチャレンジしてみてください!発音の「信頼度」が出てきますよ♪

https://dk-ai.mybluemix.net/contents/view?id=c7cd15e729bec610905e67a1b2fcebc5&rev=3-aa9b686303ed2d1ce107fa2bd48c70a8

 

【関連情報】

 

①トレパ公式サイト(トライアルも申込ができます。) https://torepa.jp/

②【3月10日】AIによる英語トレーニング教材制作ワークショップ~英語指導につかえるコンテンツを考え、つくる!~
③【3月23日】関西初実施!
 《先生向け》AIによる英語トレーニング教材制作ワークショップ@四天王寺高等学校・中学校
③AINOWへの岡田の寄稿文 http://ainow.ai/2017/12/15/129360/

 

漫画・アニメから最新技術と教育の在り方を考える~その①?~

先週末、引越をして筋肉痛が続いているトレパ「室長」・岡田です。

筋肉痛が翌日に出てくれて、密かに喜んでいますw

 

さて、引越となると、本棚にある本を段ボールに入れる際に、ついつい懐かしい本などを読んでしまいますね。作業時間の何割を割かれたのだろう…と考えると精神的にダメージが大きいので考えないことにしますが、改めて考えさせられたのは、「漫画やアニメって侮れない!」ということです。

ブームの後かもしれませんが、『ソードアート・オンライン』をアニメで見た時も、『アクセル・ワールド』を見た時も、VR(バーチャル・リアリティ)の可能性について考えさせられました。

没入どころか、脳内に直接的に信号を送ることでバーチャル空間でゲームを行うという発想ですが、そのリアリティだけではなく、オンラインで複数の人たちがつながってコミュニケーションを行うことが可能というところがポイントです。

これは、元ネタとしては、ハーバード大学の教授だった哲学者ヒラリー・パトナムの「水槽の中の脳」の議論であり、映画『マトリックス』にも転用されている思考実験です。私たちは日々さまざまな体験をしていが、実はマッドサイエンティストによって水槽の中に入れられた脳だけの存在で、脳に電極を埋め込まれ、機械的に送り込まれる電気信号によって「感覚を与えられている」存在だとしたら、どうする? という議論です。※興味がある方は、翻訳がありますので、ご一読ください。

 

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私が、これらの漫画・アニメ・映画から考えさせられるのは、このような環境が人間に与える影響です。

例えば『アクセル・ワールド』。

主人公たちは、常人では考えられない反射速度の世界を体験することができます。※詳しくは原作を見ていただきたい。

「ブレイン・バースト」というバーチャルな世界では、通常の1000倍の思考速度になります。簡単に言うと、通常の世界では1分の時間しか流れていないのに、「ブレイン・バースト」のプレイヤー達は約1000分の時間を体感します。

1000倍かどうかは知りませんが、私自身、以前車に轢かれそうになった時、周囲がスローモーションのように感じた(=自分の脳内の反射速度が一時的に向上した)体験をしたことがあります。つまり、思考が何らかのきっかけで加速化することは「ある」と思うんです。

 

しかし、一般的にはなかなかそうはいかない。それは、人間に「身体」があり、身体的な敏捷性はいくら鍛えても常人の数十倍にはならないという理由ではないかな、と思っています。歩く速さは、個人差はあっても想定内ですし、その速度で歩く限り、常人の数十倍の反射速度を必要とすることがありません。

逆に言うと、本当に神経そのものや脳と信号のやり取りができる技術が生まれたら(そのような実験は既にありますが)、本当に「思った通りのコミュニケーション」が実現するのかもしれません。そうなれば、今までのアウトプット、つまり「発声」や「文字入力」などの煩わしさからすべて解放!みんな、Happy!になれますよね!

 

今までは、唇や舌を数十倍の速さで動かすことができなかったので諦めていた「超高速発話」が、脳内直結コミュニケーションで実現する未来!あなたも今日からコンピューター並みの処理速度を!

 

…って、本当にそうなのでしょうか?

 

ちょっと回り道に思われるかもしれませんが、ここで改めて、受信デバイスとしてのVRゴーグル、入力デバイスとしてのAIスピーカーを取り上げて考えてみたいと思います。

このブログを読まれている方は、VRをどの程度体験されたことがありますか?

私は、VR体験が大好きで、テーマパークにも行きます。そこでバンジージャンプのVR体験をしたことがあります。あれ、かなり怖いですよw まず、体験する前に「何があっても、関知しないですよ~」という誓約書にサインさせられます。本当に落ちる気持ちを味わいます。夢ですっごく深い穴に落ちる夢を私はよく見ていたのですが、あの落ちる感覚!それをそのまま感じることができます。悪夢から覚めた時のあの動悸と冷や汗。

そんな体験をしていたので、デジタル・ナレッジの研修合宿の一コマで、本物のバンジージャンプをする機会があった時も自ら志願してやってみました!(そういうことが何故か社内行事としてある楽しい会社なのです。。)

bungee_jump

イラストの表情、とても楽しそうですよね♪

そうなんです。バンジージャンプ…

 

VRと全然違うやん???(T-T)

 

「バーチャル」と「リアル」の間には、やはり大きな「溝」がありました。

確かに、VR体験でも足は震えますし、冷や汗もかくし、バーチャルな(実質的な)「体験」と言ってもいいでしょう。しかし、受信デバイスはあくまでもデバイスであり、VRゴーグルという「デバイス」を通じて表示された情報を「目」という受信機で受け取るという複層的なプロセスが介在します。まず、物理的デバイスの「再現性」の限界があります。

また、VRには様々なデバイスを使って複数の感覚器に刺激を与えることで(例えば視覚と聴覚と触覚)、脳をだますというコンセプトですが、そこにはその人がプレイヤーとしてそのVR体験に「自ら没頭する」という何らかの心理的なコミットが少なからず存在します。(VR体験に没入できない人も多くいらっしゃいます。個人差が当然あります。)

これらの「溝」は、現段階では人間の想像力・集中力(言い換えると余計なリアルな情報を捨てる力)によって埋められている、ということだと思います。

 

最近、気になっているのは、この「溝」の存在。神経接続という発想は、この溝を埋めるための技術だと思います。一方で、この「溝」が無くなるようなコミュニケーションが出現した場合、人間や社会への影響というのは本当にないのでしょうか?

 

そこで流行りのAIスピーカーについて視点を転じてみましょう。

AIspeaker※最近、自作してみたAIスピーカーキット。

AIスピーカーについては、「使いやすい!」という声も多い中、「ちゃんと認識してくれない」という意見もあります。

ロボット・スタート社の北構さんが面白い記事を書いていたことがありました。(https://robotstart.co.jp/

 

「スマートスピーカーにhogeと話しかけたら違う単語と音声認識したから、まだ実用的ではない」的なのってちょいちょい目にするけど、その人の発話がそもそもいまいちって可能性があるかもよ。滑舌の悪さだったりモゴモゴ喋ったりとか。
パソコンのキーボードだって初めて使うときにトレーニングしたのと一緒で、どんな道具も使いこなすためには人間側がある程度のトレーニングが必要かと。スピーカー側に聞き取りやすい音声を人間側がある程度意識的に発話する必要はあると思うんです。
もしかしてコミュニケーションロボットやスマートスピーカーに対し、道具じゃない未来感を感じる理由の一つは「人間側がトレーニングしなくても使いこなせそう」という期待をするからなのかな。
そして人間側のこの期待を裏切ると「この道具は使えない」という評価をしてしまうのかも。原因のいくつかは人間側や利用環境にあったとしても。

 

唇・舌といった人間の発声器官の精度(個人差あり)の問題と、入力デバイスとしての「マイク」という複層的なプロセスが入力の「溝」を作っています。

この「溝」が「煩わしい」という発想があり、その溝を埋める努力を研究者なり企業なりがしており、そのために技術革新を起こそうとしています。

体が不自由な人を支援したい!とか、業務効率を上げたい!というレベルでの技術革新は大いに結構ですが、この「溝」が無くなってしまう時、「コミュニケーションを行おう!」という「意志」までもが無くなってしまう可能性を、個人的には懸念しています。

例えば、北構さんが指摘している滑舌の問題。「溝」がない、神経接続によるコミュニケーションによって世の中から「滑舌が悪い」という概念自体が無くなる可能性があります。この場合、おそらくは「ボイストレーナー」や「アナウンサー養成」という職業がなくなるかもしれません。教育や子育ての中から、発声というものはなくなってしまうのでしょうか。。…こうなると「歌」はどうなるのでしょうね。「この人の声が好き!」などの個性が薄れていくかもしれません。

 

個人的には、このような世界は好みではありません。

発声器官をコントロールするように、伝達デバイスのコントロールという新しい意志の働かせ方がもしかしたら生まれるのかもしれませんが、人間が人間である限り、やはり身体というものがカギになるような気がしています。

身体とデバイスというものの間に「溝」があることが、トレーニング機会を生み、人間らしい「意志力」を鍛えることになるのではないかと思います。

 

私たちは、AIトレーニングツール「トレパ」というサービスを展開していますが、自動翻訳機能と異なり、トレーニングツールとしては何でもかんでも自動化してストレスのない状態にすることは本道ではない、と思っています。よく、自動翻訳機能が発達すれば英語学習も不要になる!などを言う人もいますが、英語を話すということの中に「伝える意志力を鍛える」「相手の背景知識・文化を重んじる」など明確に箇条書きにできないような能力・資質が必要だという視点が欠落しているように思います。スーパーで買い物するレベルの英会話をしたいのか、恋人に本心を伝えるために英会話をしたいのか、政治的駆け引きのための英会話をしたいのか…同じレベルで語られるものではありません。また、英語を使えればいいという「ユーザー」目線と、英語の「学習者」目線の混同がされている可能性があります。学習者にとってはハードルがなければ学習する意味がなくなるのです。

 

いつの時代もそうですが、新しい技術が普及した時、それを「使いこなす」ための「意志力」は持ち続けないといけないのかもしれませんね。シンギュラリティの議論も、人間の能力をAIが超える、というよりは、人間がAI技術の前で「意志力を発揮しなくなる」ことへの警告も考えていかないといけないのかもしれません。

このテーマは深いものだと思いますので、継続して考えていければ。

 

■関連情報

①トレパ公式サイト(トライアルも申込ができます。) https://torepa.jp/

②【3月10日】AIによる英語トレーニング教材制作ワークショップ~英語指導につかえるコンテンツを考え、つくる!~
③AINOWへの岡田の寄稿文 http://ainow.ai/2017/12/15/129360/

④トレパFacebookページ https://www.facebook.com/torepa.jp/

 

 

【2月21日実施】AIトレーニングツール『トレパ』教材作成ワークショップ報告

「月末までにやろう!」と仕事の期限を決めるクセって、ありませんか?

…私だけでしょうか。トレパサービス推進室「室長」岡田です。

 

…毎年、2月になると、このクセを直そうと誓いながら、なかなか学習できずにいます。

 

さて、そんな皆さんお忙しい中ですが、先日、2月21日に弊社のAIトレーニングツール『トレパ』のワークショップを学校・塾の教員向けに実施しましたので、その時の報告を簡単に行いたいと思います。

 

2月21日(水)秋葉原にある弊社デジタル・ナレッジのセミナールーム。

各回15名定員のワークショップでは、ほとんどの席が埋まりました。

 

内容としては、

トレパサービスの概要説明、デモ、問題作成画面(エディット画面)説明の後、実際に問題を作ってもらうハンズオン形式のワークショップ

でした。

 

今回のワークショップでは、「トレパ」を使うことが『意外とカンタン!』と言っていただけることが目的でした。

「AIの技術は〈使う〉」ことが求められています。AIを〈つくる〉ことは一部の企業が行えばよく、教育実践をされている教員の方々には、「AIの技術を〈使って〉、どのような教育ができるのか」に注力していただければと考えています。

そのために、AIエンジンと教材づくりの「橋渡し」をするのがデジタル・ナレッジの使命だと考えています。

橋渡し

 

実際に興味を持っていただいた方には、トレパのフル機能を2か月間フリートライアルをしていただくことができますので、公式サイトをご覧ください。

■トレパ公式サイト https://torepa.jp/

 

今回のワークショップで印象的だったのは、日本語のAIトレーニングに対するニーズの多さでした。

以前から展示会などで「トレパ」を紹介すると、「日本語はできないの?」と尋ねられていました。その時は、「英語ができるんだから、日本語も…」くらいの『ついでの質問』くらいかと思っていましたが、今回は日本語教育に関わる方々が実際にワークショップに足を運んでいただきました。このニーズはホンモノのようです。

確かに、2020に向けて日本語教育のニーズはますます増えていくでしょう。この機会に、Cool Japanの重要な柱として日本語教育が浸透すればいいな、と個人的には思っています。(ちなみに、母国語としての日本語教育と、外国人向けの日本語教育を私は区別するべきだと思っていますが、この点は割愛します。)

 

また、別の観点ですが、日本語版トレパがあれば、専門分野の口頭試問に使えないか、というアイデアをお持ちの方もおられました。

 

本来の英語トレーニングについては、人事研修で使えないか、というご意見も。

やっぱり、私もそうですが、仕事帰りに英語教室に通うのもしんどいですよね。急に仕事が入ったりする場合もあるし。それであれば、社員教育の一環として、その業界に特化した英語トレーニングを展開するというのもアリだと思います。

 

このように、初等中等教育でも、社会人教育でも、コンテンツを載せる「エディター」という点がトレパについては評価されています。アプリだったら、コンテンツを編集したりすることがほとんどできませんからね。

英語アプリについて、ある高校の先生がおっしゃっていたのは、「アプリだと、採用するかしないかの二択にしかならない」。融通無碍なところが「トレパ」のポイントだと思います。

 

しかし、一方で、いくらカンタンとはいえ、自分たちでコンテンツをつくる作業が入ってくることになります。その負担を軽減するために、私たちは、チュートリアル動画の公開やワークショップの継続実施を考えています。

もし、「こんな使い方できるぞ!」とか、「こんなコンテンツをみんなで使ってみない?」ということを一緒に考えていただける方がおられたら、どんどんトレパの『公開コンテンツ』に教材を載せていってくれませんか?

また、ワークショップにご参加いただき、実際に私たちとお話しながら、新しい英語教育のカタチを考えていきませんか?

 

■次回のワークショップは、3月10日(土)です。■

https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/15178/