EdTechとはEdTechとは、教育(Education)× テクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、教育領域にイノベーションを起こすビジネス、サービス、スタートアップ企業などの総称です。 |
デジタルやICT(情報通信技術)を既存産業に掛け合わせることで新しい価値を生み出す「X-Tech」。 FinTech(金融×テクノロジー)やMedTech(医療×テクノロジー)、AgriTech(農業×テクノロジー)など多数ありますが、その中のひとつ『EdTech(エドテック)』が近年大きな盛り上がりをみせています。
EdTechとは、教育(Education)× テクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、教育領域にイノベーションを起こすビジネス、サービス、スタートアップ企業などの総称です。
「100年前の教師が現代にやってきたとしても何ら問題なく授業を行えるだろう」と揶揄されるように、教育現場は良くも悪くも変化のないいわば“聖域”としてしばしば取り上げられてきました。しかしながら、あらゆる分野でテクノロジーが活用されることで私たちの生活が変わり、その恩恵を享受するようになった今、教育分野もまたテクノロジーを取り入れようとしています。
ここで指すテクノロジーとは、AIやVRなどの先端技術はもちろんですが、すでに一般的となっている汎用技術(アプリやソフト、デバイス)も含みます。こうした技術を活用し、これまで当たり前と思っていた仕組みや制度、考え方までも含め、根底からひっくり返してしまうようなイノベーションの可能性が期待されています。
世界的に注目されているEdTech。発祥の地アメリカはもちろんですが、それ以上にEdTechに力を入れているのが中国です。中国のEdTechスタートアップ投資額は今やアメリカを抜き、20.3億ドル(約2,030億円)に達するといわれています。
日本においても、EdTechはまだまだ黎明期の域を出ませんが、市場規模は確実に拡大しています。野村総合研究所(NRI)は、2016年度におけるEdTech市場規模を約1,700億円と推計しており、2023年には約3,000億円に達すると予測しています。
日本でEdTechが注目されるきっかけとなったのは、文部科学省が2020年までにすべての小・中学校で一人一台のタブレット端末の導入を目指すという指針を発表したことにあります。さらに、2018年1月には経済産業省が「『未来の教室』とEdTech研究会」を立ち上げるなど、国を挙げてEdTechが推進されています。こうした動きは公教育の現場に留まらず、企業研修、リカレント教育、個人の学びも含めたムーブメントになりつつあります。
新しい価値を提供するEdTechの領域について、具体的に見ていきましょう。
2012年にアメリカから始まった「MOOC(ムーク)」はEdTechの代表的なサービスです。
インターネット上で一流大学の講義を無料で受講できること、一定の水準に達すれば修了証をもらえることから一気にブームとなりました。MOOCにはスタンフォード大学設立のCourseraやハーバード・MITが設立したedXなどがあり、世界中で受講者を獲得しています。edXで優秀な成績を収めたモンゴルの15歳の少年が、学費免除で米マサチューセッツ工科大(通称・MIT)に進学したエピソードはあまりにも有名です。インターネット環境さえあれば場所や時間を問わないオンライン学習は、教育格差の是正や生涯学習の推進など、学びの可能性を大きく広げています。
2014年には日本でもJMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)が設立され、「gacco」をはじめとするサービスで国内の主要大学から講義配信が行われています。 また、MOOC以外にもオンラインで学べる英会話やプログラミングなどのサービスも増えており、子供から社会人まで多くの需要が生まれています。
学習者一人ひとりに最適化されたレベル・内容・進度での学習を実現するのが「アダプティブラーニング」です。 個々の過去の回答や学習履歴を蓄積・分析することで、思考パターンや弱点を見抜き、一人ひとりに合ったオーダーメイドの学習内容を提示してくれます。
個々に合わせた教育という考え方自体は従来の教育現場にもありましたが、成績別にクラス分けをするなど限定的な取り組みに留まっていました。現代のアダプティブラーニングは、ICT技術やソーシャルメディアなどを活用することで、学習内容・レベルの最適化を行えるのが特徴で、これまで理想とされてきた教育の姿として注目されています。
学校教育や教育サービスだけでなく、「社員の意欲を高めたい」「仕事が忙しくなかなか教育の時間が取れない」「効率よく教育研修ができる環境を作りたい」といった課題を抱える企業の人材育成領域での活用も期待されています。
VRとはVirtual Reality(バーチャルリアリティ)の略で、日本では仮想現実、人工現実感とも呼ばれます。
VRの最大の特長は「仮想空間の中でまるで現実のような疑似体験ができる」点です。専用機器を装着することで、臨場感のある体験、現実世界では再現しづらい体験を現実と錯覚するような没入感の中でいつでも、どこでも、繰り返し体験することが可能です。
このVR技術を人材育成や学校教育に活用する動きが注目されています。
一部の大手建築会社ではすでにVRを使った最新の研修が導入されています。 また、クレーム対応時に頭が真っ白になってしまった、というような事態もVRで事前体験することで回避することが期待されます。
「100人の聴衆の前でプレゼンをする」といったシチュエーションは、日常生活で繰り返し行うことはなかなか難しいですが、VRを使えば何度でも練習が可能です。
教育の効果を最大化させるためには、従来の教育プログラムを単にデジタル化しただけでは不十分。学習状況を把握し、効率よく管理、運営するための仕組みやシステムが必要となります。ここもEdTechで注目されている分野です。
教員専用の学習管理ツールや教員・生徒・保護者がつながるSNS型ツールなどさまざまなものがありますが、この分野で先行しているのがLMS(Learning Management System)と呼ばれる学習管理システムです。
LMSとはeラーニングを実施する際のベースとなるシステムで、インターネット上で教材を配信・回収したり、学習者が学習した履歴を管理したりするためのプラットフォームとなります。 多くのLMSは受講者がログインして学習する受講機能と、教員や管理者が管理・運営を行う管理機能から成ります。生徒一人ひとりの進捗状況を一元管理する概念は、EdTechでも重要な役割を果たすと考えられます。
詳しくは次項「EdTechとeラーニング」でも解説します。
EdTechが注目されるよりずっと前に、教育領域でICT活用がスタートしていた分野があります。それが前項でも触れた「eラーニング」です。
学校や塾、企業研修等において、特定の場所に集合し教育者が直接講義をおこなう〝リアルな教育〝に対し、パソコンやタブレット、スマートフォン等を活用しインターネットを介して学習する「eラーニング」。時間や場所にとらわれずに、いつでも・どこでも・何度でも教育を受けることを実現した学習スタイルです。
国内における普及は、今から約20年前、eラーニング元年といわれた2000年前後に遡ります。
大企業や一部の先進的な企業が社内研修への導入を始めました。
最初は就業規則や業務マニュアルなどを文字で伝達することから始まりましたが、技術の発展とともに映像や音声を使ったより効果的な教材が充実していきます。
集合研修との組み合わせ(ブレンデッドラーニング)も一般的となり、人材育成の領域でeラーニングは高いコスト削減と研修効果の向上を実現しました。
さらに、大学をはじめとする教育機関、塾や資格取得スクールといったさまざまな教育サービスでも幅広く活用されていきます。
そんななか、大きな変化が訪れます。スマートフォンやタブレットの爆発的な普及です。
この変化は企業内研修にも大きな影響をもたらしました。
これまでは机の上に置かれたパソコンで学習する必要がありましたが、スマートフォンやタブレットは手元で学習が可能なため、従来不可能だった店舗教育や現場教育――主には接遇マナー教育、業務マニュアルのリアルタイム共有、新人スタッフ教育など――がパソコンの置かれた研修ルームではなく「働く現場」で実現可能となりました。
こうした変化を経て、eラーニングは、従来の“知識学習”の域から、現場での経験を通してより印象的かつ効率的に学習を進め、業務成果に直結した学びの環境を提供する“経験学習”の領域にも広がりつつあります。そして今、EdTechが注目されるようになったことで、同じ教育×テクノロジーの領域で経験のあるeラーニングが新たなステージを迎えようとしています。
これまでeラーニング業界が長年にわたって培ってきた、学習管理の考え方やシステム(LMS)、コンテンツ(オンデマンド、ライブ配信)に関するノウハウ、教育効果を高め学びを継続させるための知見などを生かし、eラーニングから進化したEdTechを実現していくことが期待されています。
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